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アウトソーシングと依存

あんたは、最近何を見ている?

俺は最近、あるコミュニティでおすすめしてもらったこの作品を見てみた。

今回は、このPSYCHO-PASSという作品について、例によってあらすじにふれることなく、俺の中に残った何かを拾い集めてみる話だ。

気になったら見てみてくれよな。

PSYCHO-PASSという作品に引っかかった要素

見たことのないあんたのために、このPSYCHO-PASSという作品の概略を一言で言ってみることから始めてみるとするかね。

人の心が数値化できて、犯罪を起こす確率が高まった奴はそれだけで逮捕隔離されちまう世界で、どうやったら人を信じられるかを描く話

……うん、ちょっとゆがんでる気もするが、大体あっているだろう。

俺がこの作品で惹かれたのはこの「人の心の数値化」って部分だったように思う。

これがどれだけ怖いことか、あんたは想像できるかい?

今の日本は法治国家とされている。

例えば、裁判官は被告が悪いやつだから罰を与えているわけじゃない。

裁判官は検察と弁護人の双方の事実関係の確認を経て、その事実が「法律」に照らしてどういうことかを過去の事例を踏まえて結論を出す仕事をしている。

決して「悪人」を定めているんじゃない。「罪人」を定めているだけだ。

つまり、今の俺たちには「悪人」を正確に定義出来ないってのが本当のところってわけだ。

実際、このことは俺たちの生活にある意味での「あそび」を提供してくれている。

あの政治家は裏で何やっているかわからない。きっと悪人だ。なんて思うやつがいても、実際になにかの法律を破っていることを証明できなければ、「罪人」にはならない。

法律は「悪人」をさばくようには出来ていない。「罪人」をさばくことが出来るだけだ。

ところが、PSYCHO-PASSではこの「悪人」を数字で定義してしまっている。

これは個人の感覚に委ねられていた「悪」というものをシステムで定義することを意味する
感じたことそのものが「罪」にされてしまう世界ってわけだ。

「鉄腕アトム」の7つの力の最も恐ろしい力

突然話は変わるが、鉄腕アトムの7つの力って知っているかい?

・善悪を見極める電子頭脳

・あらゆる言語を話す人工声帯

・人間の1000倍の聴力

・サーチライトの目

・10万馬力

・ジェットの足

・おしりのマシンガン

おしりのマシンガンがなぜ実装されているのか、なかなかに謎だが、今はそこじゃない。

アトムの最も恐ろしい力は10万馬力でもおしりのマシンガンでもない。

善悪を見極める電子頭脳だ。

アトムはスタンドアローンな人工知能を搭載している。つまり、アトムは単独で「悪人」を定義出来るってわけだ。

子供の頃、このことを知ったときに「自分は悪人とされない保証がどこにあるのか?」と空恐ろしくなったことを思い出す。

これと同じ恐ろしさがPSYCHO-PASSという物語の入り口に用意されている。しかも鉄腕アトムよりもより切実に

さらにはその「悪人」を定義出来てしまうシステムに人が完全に依存しているのがとても「自然」なことであるように描かれている。

この「依存」。

この要素こそが俺がPSYCHO-PASSという作品に感じた「なにか」だったと思う。

俺たちが「依存」するもの

今の世の中でも、俺たちは数多くのものに依存している。その中でも最も影響力が大きいもの。それがネットだ。

インターネットが一般の世界に登場してから、ほんの30年くらいしか経っていないが、今はインターネットがない状態は全く想像ができない。

ネットがなければ、駅で待ち合わせすることだって、ものすごくハードルが高くなっちまう。

ネットがなかったら、どうやって人とやり取りするのか、わからないって若い奴らもいるだろう。

人が人であるためには人とのコミュニケーションが必要不可欠だが、インターネットが出来る前の世界と後の世界では、流通する情報量の桁が違う。多分3桁くらい情報量が違うんじゃないか?

その圧倒的な情報量で、人々はつながっていることが前提になっている世界。

それが今の俺たちの世界だ。

PSYCHO-PASSの「善悪判断をアウトソーシングした世界」と今の俺たちの「コミュニケーション方法をアウトソーシングした世界」。

なにか通じるものがある気がしないか?

あんたはどう思う?

あんたは、この網の目のように絡みついたコミュニケーションに依存した世界でどう生きる?

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