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麦日和 / 麦雨の日 '24

土曜日のはなし 麦日和 

久しぶりのお天気で、お日様のご機嫌がよく、むしろ良すぎるぐらいに暑かった。
土曜日は園芸センターで買い物をした。投げ売りされている野菜の苗からナス,きゅうり,ゴーヤの苗を買った。ナスは元々植えていたけれど、植え付けの際に根を痛めたらしく、みるみる元気がなくなったので、諦めて新しい苗を買うことにしたのだ。

家庭菜園3年目、まだまだ初心者なのだから、スタンダードなものを植えればいいものを、好奇心に負けてついつい変わり種を買ってしまう。スタンダード茄子、マー坊(麻婆…)長茄子、スタンダードきゅうり、そして、ザウルスゴーヤ。
ザウルスゴーヤ、強そうだ。フフフ…

園芸センターの中ですれ違った爺さんが、私のカゴと私の顔を交互に見て、フッ…と笑った。
こいつ、食い物の苗しか買ってないな…という顔である。そうだ。私は食い物の苗しか買わない女である。おい、何が悪い。でもちょっと恥ずかしい。
日用品コーナーのレジでオットと娘と合流し、じいさん、絶対私のこと食い意地張ってる、って思ったよな、絶対視覚より胃袋の女だと思ったよな、と話したらその場にいたレジ打ちのおばちゃんにも笑われてしまった。

寝る前に母に家庭菜園について電話したら、どうやら彼女も同じく野菜の苗を買いに行ったらしかった。
『売れ残りの小さな茄子の苗がね、それでも頑張って、頑張って、種を残そうと、小さな実をつけていてね、お母さん、なんだか悲しくなっちゃった…』
などと涙声で話すものだから、ザウルスゴーヤへの期待に胸を膨らませている心境など、なんだか語るに忍びなくなってしまった。しかし、茄子の苗ですら悲劇に変え、目を潤ませることができるのも、それはそれで才能である。


日曜日のはなし 麦雨の日 微妙に雨

お茶のお稽古の日。
六月なので夏の帯デビュー。お太鼓の桔梗が涼しげで気に入っている。
風炉になりお茶をたてさせてもらえるようになり1ヶ月、なかなか要領を得ない。お軸も『素直な気持ちで頑張りましょう』的な事が書いてあることはなんとなくわかるが、何と読むかは忘れてしまった。読む順番もわからない。お軸、レ点をいれてほしい。

帰り、いつもの和菓子屋さんへ寄って帰った。
なんと通って4年の美容院が最近この和菓子屋さんの隣に移転となったのだ。ここの美容院ではいつも変な服を着て変な話をしているので着物を着て和菓子を買いに行く姿なんてどうしても店長には見られたくない。

変な服を着て変な話をする私も、和文化が好きでこういう趣味がある私も、間違いなくどちらも嘘偽りない私という人間だけれども、両方認知されるのはどうしても嫌だ。ラーメン屋で常連として『認知される』ことが嫌なのにも通じるものがある。
美容院の前を通る時、傘の持ち手で顔を隠しながらそっぽをむいて全力小走りした。意味のわからない努力。


『徳島文學 七月号2024』が届いた。Amazon氏はしばらく待たれよみたいな事を言っていたが、注文してから即発送されたぐらいのスピーディーすぎる到着に驚いた。ありがたや。

巻頭詩 鍋島大輝『ステイ・ゴールド』を読む。

美しい言葉で綴られた彼女の命の循環を
枝葉の先までしか知るところのない世界を
彼女はそれをどう思うだろう、赤い花びらを見て何を思うだろうと思う、素敵な詩


先程までトランポリンでパウパトロールを見ていた娘は、私が赤い本を広げた瞬間、さっとこちらにやってきた。子供は、来てほくないときほどやってきて、こっちに来て欲しい時ほどやってこない。なんて奴だろう。娘は活字を小さい指でなぞりながら『むすめちゃんは、かわいいです!』と読み上げた。違う。そんな事は一文字たりとも書いていない。

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