あの名著が非物質化! 『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!: 雑音だらけのディスクガイド 511選』電子書籍化記念。「あとがき」立ち読み公開。
2013年10月に刊行されるやいなや、超マニアックな内容ながら、著者である持田保氏の面白すぎる筆致により、単なるディスクガイドとは違う「読んで楽しいインダストリアル/ノイズの本」として3刷重版出来という偉業を達成した書籍『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!』。数年前より、重版未定(版元在庫品切れ)という憂き目にあいながら、古書価が高騰(しかし、著者は1銭も儲からない)という状況をふまえ、待望の電子書籍化となりました! 今回、電子書籍化を記念して本書の「あとがき」を公開します。なお、電子版には「電子書籍化についてのあとがき」も加筆されております。
INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!
雑音だらけのディスクガイド 511選
持田保 著
A5・並製・221ページ 本体2,000円+税
ISBN: 978-4-92506-458-3
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK023
<おもな電子書店リンク>
・Kindle
・honto
・Kinoppy
・イーブックジャパン
・セブンネットショッピング
あとがき
「そんなもん音楽じゃねえ!!!」深夜のスナックに罵声が響きわたる。雨の高円寺。罵声の主は某メジャー・ロック・バンドのギター奏者。「ビートが無ぇ? メロディーもサビも無ぇ? ? あるのは雑音だけって、ふざけんじゃねぇ!」。当時若干ハタチになったばかりの私に彼の攻撃は容赦なく続く。
ことの発端は「キミ、どんな音楽聴いてんの? 」という彼の酒場トークからだった。場の空気を読む、というTPOを若輩者故に持ち合わせていなかった私は素直にホワイトハウスやTG、MBなどについて嬉々として語った。そう、ロック魂を絵に描いたような彼がみるみる不機嫌になっていくのも気づかずに…… 。
「とにかく、そんなモンは俺は絶っ対認めねぇ!クソだよクソ!!」彼のツレのボディコン女もクスクス笑っている。畜生…… 反論したい、この男をギ
ャフンと言わせてやりたい…… そう思うも、大ステージでスポットライトを浴びる彼のきらびやかな活躍、ボトルキープしてるジャック・ダニエル、豊富なおつまみ類、傍らのボディコン女を前にして、ツケで焼酎をチビチビ飲むしかないフリーターの私は萎縮するよりほかに手立てはなかった。そして頭のなかではいつしかホワイトハウスもTGもMBも吹っ飛び、浜省の「マネー」がBGMとしてグルグル回っていた。「いつかビッグになって見返してやるっ!!!」
四畳半一間のボロアパートで枕を濡らしながらその夜、私はそっと誓ったものだった。あれから20年以上の歳月が流れていった。ひたすら「ビッグになる」ことを目指していたハズが、気づくと脱サラ& 独立開業の失敗より、負債を抱えながら板橋の工場で40過ぎで人生イチからやり直し状態になってしまう。全くとんだスモールっぷりである。「嗚呼、なんでこんなことに…… 」ボリビア人やチュニジア人などの外人部隊に混じって、泣きながら朝から夜まで汗と油にまみれるARB ライクな日々。そんな過酷な労働状況
のなかにも関わらず、工場のミニマルな機械音は騒々しくもどこか懐かしかった…… あぁ、そうだ、これって昔聴いてたヴィヴェンザみたいじゃないか。そうか、忘れてたよ。
「僕、インダストリアル・ミュージックが好きだ!」とブルーハーツ的に開眼。こうして本書は生まれることとなった。
しかしいざ執筆となるとリアル・インダストリアル・ライフは大きな足枷となった。週休2日などハナから都市伝説。下手すりゃ月休2日もアリアリの肉体労働の日々に原稿は遅々として進まなかった。焦燥感、そして増える酒量。執筆期間だけはもはや大物作家先生レベルに達してしまった。一番の心配は「誰かが同じ企画で先に本を出しやしないか」である。だが杞憂だった。それほどにこのジャンルは現在の音楽メディア産業からは無視されていた。唯一頑張っていた「電子雑音」も残念ながら今はもう無い。誰もやらな
いから自分がやる。ナチュラル・ボーン・隙間産業な私の生きざまが今こそ問われているのだと確信した。
最後に、本書制作にあたって多大なるご迷惑をおかけした関係者各位にはこの場を借りてお詫びするとともに感謝の意を表したい。特にディスクユニオンの佐藤雄彦氏、宇都木景一氏、熊切良太氏、元ディスクユニオンの五十嵐学氏& 松原祐一氏、そしてデザインを担当してくれた高木紳介氏には足を向けて眠れません。また創立から現在に至るまでの全てのインダストリアル・ノイズ・アーティスト、及びシーンを支えてきた関係者、ライター、編集者たちに最高のリスペクトを。
持田保(もちだ・たもつ)
オカルティズム、スピリチュアリズムと音楽の交わりを探求するプロジェクト「あなたの聴かない世界」書籍化マジ奮闘中の半身文筆家。『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS)等にも寄稿。BARDS TOKYO構成員
twitter: https://twitter.com/clearbody
OFFICIAL SITE: https://mochida10225.wixsite.com/home
INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!
雑音だらけのディスクガイド 511選
持田保 著
A5・並製・221ページ 本体2,000円+税
ISBN: 978-4-92506-458-3
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK023
<おもな電子書店リンク>
・Kindle
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・Kinoppy
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