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大ヒット上映中『TENET/テネット』を読み解くために知っておきたいノーラン監督のインスピレーション源と創作論が満載!本日(9/30)発売の『SF映画術』。


映画評論・分析が乱立し、世間をザワつかせている超難解映画、クリストファー・ノーラン監督作『TENET/テネット』ですが、本書を読むと、ノーラン監督の作品に対するこだわりがよく分かります。”NO FATE”なジェームズ・キャメロンとの対話から読み解く、『TENET/テネット』理解のために押さえておくべき映画やこだわりを書籍『SF映画術』よりご紹介!

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◎将来を決めるにあたり大きく影響した映画は『スター・ウォーズ』(77)と『2001年宇宙の旅』(69)

「7歳だったかな。幕が開いてスクリーンが広がり、映画が始まって想像を超えた世界へ観客を連れていくというプロセスは、僕の中であの映画(リバイバル上映されていた『2001年宇宙の旅』)が基準になっています。」
「僕が『インターステラー』を作ることになったとき、様々な疑問に向き合うことになりました。どうやってこの3次元を超えた次元――人々の理解を超越した空間に行くのか? どうやってブラックホールの中に飛び込むのか?そこで『2001年宇宙の旅』を観直したところ、気づいたんです。今の人間が誰もできないけれど、キューブリックができていたのは、“省略”だったと。ミニチュアワークだろうが、視覚効果だろうが、単に当時実現不可能だったことだろうが、あの手この手で見せられるものでも敢えて見せないという選択をしていたんだと思いました。」
「『スター・ウォーズ』はかなり反体制的ですが、何より、通常とは全く異なる方法で物語を描き出すことを少しも恐れていない。「昔々、はるか彼方の銀河で」で始まる『スター・ウォーズ』のオープニングクロールで、観客はたちまち、自分たちが未来の話だと思っていたものが、“過去”に起きた出来事ということになっていると気づき、面食らうわけです。あれは、”未来”を違った角度で見せるとても素晴らしいやり方です。」

◎SF映画のプロダクションデザインの歴史を語る上で外せないのは『エイリアン』(79)。リアルさを生み出す原点。

「『エイリアン』を語るとき、僕はいつも宇宙版ケン・ローチ作品だと言っているんです。粗い質感と鬱になりそうな荒涼感が漂う映像が、まさにローチっぽい。」
水が滴る音なんて、本当に些細なサウンドエフェクトですよね。だからこそ、あの映画は僕たちのお手本なんでしょうね。そして、『インターステラー』で決めたのは…映画を観ても誰も気づかなかったかもしれないけれど、未来的なものは実際に何も作らないということでした。あの映画に出てくる人間をいきなり未来の住人にはしたくなかったんです。」
「僕は、スペキュレイティブ・フィクションについて語る方が好きなのかもあしれない。『インターステラー』からは、いかにも未来志向なアイデアを取り去りましたし、SFが前提の『インセプション』でもそういう部分がありました。いずれの作品でも、僕はあらゆるスタッフに「違う。これは現在の話だと思ってくれ。遠い未来じゃなくて、今と同じ世界で起きていると考えるんだ」と話していました。」

◎夢に魅了され続け、出会ったのは『マトリックス』(99)。小説ではウィリアム・ギブスンの『ニュー・ロマンサー』。そして大切にし続けているのは「主観」的であること。

「『インセプション』を作る際にインスピレーションを受けた作品のひとつが『マトリックス』です。あの作品は、まさに、「オーケー、僕たちの周りの世界は現実じゃないんだ」と捉える噺でした。いわば、プラトンの洞窟で、人類史最古の哲学的問いかけです。どうやって人は、自分を取り巻くものがリアルなものと判別するのか。
「僕はいつも夢に魅了されてきました。世界に対する主観的な見方に関して、夢が僕たちに何を伝えるのか。そういった考え方に夢がどうやって入り込み、重要な役割を担うか、ということについても。特定の例を挙げるとしたら、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』ですかね。この作品の登場人物たちは、自分たち自身のためのちょっとしたメインフレームコンピュータを創り出します。そこは、自らが好む方法で世界を所有でき、永遠の居場所を得られる世界でした。」

◎比喩的ではない現実的な世界を描くことで、より‟仮想現実感”を感じることができるようにする。

「『インセプション』では複雑なルール設定の世界で物語が展開しつつも、世界観は現実と大きく乖離していません。つまり、非現実と現実の巧みな組み合わせが実現できたんです。特にSFの分野では、それが必要です。」

◎ノーラン監督作品で登場するタイムトラベルと、そこで起こる出来事は、常に「人」が紡ぎ出すという点について。『2001年宇宙の旅』の影響力。

「”彼ら”と呼ばれる存在って、本当に多くのSF映画に出てきますよね――すなわち、より高度な知性を持つ生命体が、実は未来の人類に過ぎなかったというアイデアに僕は胸が躍りました。」

◎物理学の研究には「直観」が大切。そして、常にノーラン作品のテーマである「時間」のこと。

「キップ(・ソーン/物理学者)が僕に語ったことのひとつで、研究には”直観”による理論がかなりの割合で存在しているそうです。僕が物作りの過程で直観で何かを知ったり、決めたりしていたことに、彼は感心していました。物理学者として何かを本当に理解するためには、知識を得るだけでなく、その何かを感じなくてはならない、とも言っていましたね。」
「”時間”は確かに、興味をそそられた一要素でした。時間の理論があったから、(『インターステラ―』にて)もはや原因と結果が意味を持たない世界を眺める方法を僕は思いついたわけです。
自由意志の概念が何か、人々は誤解していると思うんです。自由意志と聞くと、原因と結果という構図を連想する人が多い。もし自分の人生を映画にして、時系列を逆にして現在から過去へと時間を遡って再生しても、それはタイムトラベルではありません。」
”復讐”という物語の軸があり、そこで時間の逆転させると、一体何が得られるか? そういう意味で、『メメント』は立派なSF作品なんです。」

◎人の意見を気にしないことこそ、SF映画制作を作る上で大切なこと。

「人間が何に影響を受け、何に怯えているかは、非常にわかりやすい。ですが、SFはそれを気にする必要はないと思います。もしSFが人の意見を気にするなら、それこそ説教がましいものになってしまう。SFは楽しくて、娯楽要素にあふれた世界を持っているべきだし、SFを通じ、観客はそういった面白みやスリル満点の世界が体験できなければならない。だからこそ、SF小説を読んだり、SF映画を観たりすると、普段とは全く異なる視線で世の中を眺めることができるんです。」

『SF映画術』のクリストファー・ノーラン章より、一部その発言をご紹介しました。『TENET/テネット』鑑賞済みのみなさんなら、ピンとくる発言も多いのではないでしょうか? 本書にはこれらのほか、ノーラン監督のSF作品に対する見解など、多くの情報が詰まっています。また、映画制作の方法が真逆とも思われてきたジェームズ・キャメロン監督とのやり取りも、必見です!もちろん、他の巨匠たちにおいても、今まで語られてこなかった制作秘話や、インスピレーション源が詰まっています。

是非、その目でお確かめください!

(DU BOOKS編集・中井)

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