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薫風⑲

その晩の夕食はいつも通りであった。
公平は仕事で遅くなり、母娘二人で食卓を囲んだ。料理を自分の皿に取ろうとする時など夕紀子は母親の顔を盗み見てみるのだけれど、当たり前だが普段の母親である。幾分すました顔で箸を口に運んでいる。夕紀子は食事を済ませた後、例のものを部屋に出しっぱなしにしていることに気付いてそのあしで二階へ登っていった。
「寒くないようにしなさいよ。」夕紀子はその声に返事をせずに書き込みの山の前に正座した。
ー100年早いけどいづれ僕にもその時がくるので今考えたことをかく 僕にとって好きな人とは一緒にいて欲しい人だ 生活の仕方とか、その他多くのことが僕と合わなくったって好きだし一緒にいて欲しい 自分の相手に対する好きだという気持ちよりも結婚生活のことを考え、生活が合わないだろうと考え別れるのはさびしすぎるし、情けない
結婚した後も同じだ 好きな人と結婚生活が可能な人とを別に考えるなんてバカげている 極端な話、一緒に生活できなくても好きな人は好きだし永遠に一緒にいたい 結婚にこだわるわけではないが、結婚したならうまく生活できるよう考えればいい 頭はかざりでついているのではないのだから、生活が合わないからといって別れられる方々は本当に相手のことが好きだったのか聞いてみたい そんなことが問題になっても、それが相手に対する気持ちを変えてしまうのはおかしいし、情けない
すくなくても、僕はそんなことで一番大切な人を失いたくはない
もし仮に一時的にそうなってもこの紙を見つけた時、頭を冷やせよ!ー

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