延命中は独り
「外がそんなに面白い?」
そう聞いてきた彼女の方を向いた。
「……あー、いや」
言い淀んで、美術室に展示されているよく分からないオブジェを見つめながら、僕はどう言い訳をしようか考えた。
「大丈夫。答えなくてもいい。意地悪みたいなことを言ってごめんなさい。別に寂しかったわけじゃなくて、今あなたが何を考えているのかを知りたかっただけ」
きっと、嘘ではない。寂しくはないのだろう。それでも、彼女の悲しみが表情に出ていて、それに心が痛んだ。
「今の僕は眠っていなければダメみたいで、また負担をかけるかもしれない」
「そんなの……、別にいいのに」
優しく笑う彼女。それにも心が痛んだ。
「ちゃんと休めたら、あなたはまた、ほんの少しだけ生きることができる。それなら、私は待てる」
僕は「そうか」とだけ言って、限界に近い体を横に倒した。それから少しずつ遠のく意識の中で、風に靡く彼女の髪を見ていた。
僕は「綺麗だ」と言ったけれど、声になっていたかは分からない。
そして、彼女の顔が近付いてきて、視界の端にあったオブジェが消えた。
生きているだけでいいや。