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左きき対応グッズや左ききな子どもたちへの指導について

私自身は右利きですが

支援学校で働いていると、左ききの子どもは少なくありません。
先日の委員会活動で、私が担当する班の生徒6人中4人が左で字を書いていました。
翌週の委員会時に改めて数えてみたところ、出席者の半分弱が左!
世界的にも左ききは1割前後だそうです。脳性麻痺の方だと左ききの割合が非常に高い事は知られていますが、本校は知的校です。それでも2〜3割くらいいるのが実感としてあります。

ちなみに私はお箸も鉛筆も右ですが、棒状の物を持ったり、雑巾の縦絞りをすると左が上になります。野球は右投げ左打ちです。母が「お箸と鉛筆以外は基本左」なので、遺伝と環境双方が影響しているようです。

なので昔から、授業では生徒の利き手は必ず考慮しますし、見学の際にもついついチェックしています
あと、知的校だと子どもの私物はさみやカッターは持込禁止な所も多いので、生徒への貸し出し用はさみを私物で用意していますが、私は左きき用のはさみも3本入ってます。

「ユニバーサルデザインはさみ」の功罪

この10数年、日本でも「ユニバーサルデザイン」を謳う製品がかなり増えました。
こと、ハサミに関しては、指を入れる部分が左右均等なサイズのものが「ユニバーサルデザイン」として販売されています。
が、実を言うと持ち手が左右均等サイズでも、人によっては「ユニバーサル」とはならないのです。
なぜなら、右手ユーザー向けはさみを左手ユーザーが使うと、ネジの向きが逆で非常に使いづらいのです。
それを教えてくれたのは、10年ほど前の勤務校にいた美術の先生でした。

コクヨのサイトにはそのあたりの解説が掲載されているのですが、実を言うとコクヨで販売されている左手用はさみは子どもサイズしかありません。
この数年で、日本製大人サイズの左手用はさみ(事務用)はどんどん淘汰されてしまったらしく、私が現時点で把握しているのははPLUSのフィットカットカーブ左手用のみです。(画像はAmazonのものです)

この間、スーパーやホームセンター、画材店や文具専門店等様々な店を探しましたが、それでもPLUS以外は見つけられませんでした。もしもご存知の方がいらっしゃれば、ぜひお知らせください

また、お箸や鉛筆が左手な人であっても、ハサミは右手用を右手で使う人や左手で使う人、左手用じゃないと使えない人…など様々です。
かつての同僚には、「長年右手用を左で使って来たから、はさみはものすごく下手だし、かと言って左手用のも上手に使えない」という人もいました。そのあたりはまず、本人に聞くのが1番かと思います。

ちなみに裁ちばさみに関しては、持ち手が左右均等のものがほとんどないようなので、左手用が用意されている事が多いです。それも持ち手だけが左な「柄左」と、ネジ(刃)の向きも逆な「総左」の2パターンあったりします。そのあたりは美鈴のサイトを是非どうぞ。

知的障害・発達障害&左ききな子ども達の苦労

さて、そんな私もつい最近までは「左ききの苦労=はさみ/自動改札/缶切り」くらいの認識しかありませんでした。あとは、2人ペアで座らせる時などに、右利きの子の左側にして、利き手同士がぶつからないようにするくらい。
認識を新たにしたのは、昨年夏に50cm定規を使う某生徒を見た時です。

彼女が右手で定規を押さえ、左手の鉛筆で線を「左から右へ」引こうとしているのを見て、非常に違和感を持ちました。あれ?自分はどっちから引いてたっけ?と考えて、後ろでこっそりシミュレーションしたところ、右手で鉛筆を持つ私は左から引いています。
「Aさんは左ききだよね?もしかしたら線引く時は右から左の方が楽かもしれないよ?ちょっと試しにやってみない?」と声をかけました。
「え?」と最初は戸惑っていた彼女ですが、私の言葉通りに「右から左へ」線を引いたところ、「ホントだ!」と、ぱあっと顔が輝きました。
その姿を見て、正直泣きそうになりました。決して器用とは言えない彼女、もしかしたらマジョリティである右利きの真似をして必死にここまで来たんじゃないかと。ADHD&ASDで、なおかつ左ききゆえに、しなくても良い失敗経験をたくさんしてきたんだろうな、と。

後から、そのあたりも含めて彼女と話をしました。(彼女は高校生、彼女も含め、中学までは支援学級在籍だった子が多い、知的には割と高めの子たちのクラス所属です)
「この先、現場実習や就職先で、安全面や衛生面で、どうしても右手でしなきゃいけないところはあると思う。だけどそれ以外では、線を右から引くとか、左手で使いやすいように物を配置するとかは自由にしていいよ。学校以外のところでも『私は左ききだから〜な風にしたいです』って、自分から言えるようになるといいね」と。
彼女自身、「線は右から引いてもいいんだ!」という衝撃の余韻がまだ残っていたようで、少し泣きそうな顔で聞いていました。

左ききな同僚へのヒアリング

さて、本校職員室にいる数十名のうち、左ききは私が把握しているだけでも3名います。鉛筆に関しては3名中2名(40代と30代)が「左右どっちでもいけるけど、左の方が楽」、1名(20代)は「右もいけなくはないけど、かなりしんどい」とのことでした。
「左手で線を引く時には左右どちら側から始める?」と聞いたところ、
・楽なのは右から
・定規の目盛を読む時は左から引く
・目盛読む関係上、左から引くのが癖になってる
という回答にまた衝撃。
「市販されてる定規の目盛は左スタート」というのに、目からウロコが落ちました。

左きき対応の定規

そんな事をTwitterで呟いたところ、左ききな当事者仲間から「クツワの左利き用定規」の存在を教えてもらいました。
「しかも右利き用と同じ値段で売ってて嬉しかった」と。(画像はAmazonのです)

そして改めて目を向けると、「左利き用」として売ってるのはクツワだけのようですが、左きき用目盛が併記してあるものは結構ある事に気付きました。

画像は左利き用定規の存在を知った直後、地元(田舎)の文具店やホームセンター、本屋などを回って購入した定規たちです。黄色と紫は、弱視の方でも比較的見やすい配色かも?という理由で、厚みを測れる定規は単なる好奇心で買った物なので、左きき対応ではありません。

ちなみにこの日は、クツワの「左利きの方も使いやすい」タイプのはありましたが、左利き用は見つけられず…でした。(ちなみに夜のモスで撮影したので、照明が映り込んでます…)

後日、クツワの左利き用定規を老舗文具店で見つけて職場に持って行き、左きき同僚達に見せました。
「すごーい!使いやすい!」という反応だったのは「右手で書くのはかなりしんどい」という職場の最年少(24歳)教員。他2人は「わ〜!左利き用なんてあるんだ〜」と喜んだものの、「うーん、でも目盛は左から読む癖が抜けないかも…」とのこと。
まぁハサミ同様、長年の癖や条件反射を変えるのは難しいですよね。でも、選択肢があるのとないのでは大違いですよね。

まぁ、究極のユニバーサルデザイン定規といえば、画像のような、昔からある竹尺ですよね。

とはいえ、現代だと竹尺って和裁とか手芸店以外ではそうそう見ない気がします。まぁ、アラフォーの私が小2算数で定規の学習をする時には竹定規が指定されていたのですが。
現代だと軽くて、定規下の文字などが見やすいプラスチック製が主流ですしね。定規に関しては別角度からも書きたいことはあるので、いずれまた。

左ききの道具店

2018年8月にオープンしたという「左ききの道具店」というネットショップ。きっかけはもう覚えていませんが、2019年頃には知っていた気がします。
このサイトを見ていると、目からウロコが何枚も落ちます。
左利き用定規の存在を知るきっかけになった、当事者仲間とのTwitter会話では、別の仲間が「左手用のはさみがある事自体知らなかった」と言うのに驚愕しました。
「どうやっても上手に使えずにいた」という彼女に左ききの道具店を教えたら、ものすごく感謝されました。
左ききの道具店、ネットショップ以外にも「note.」もありますので、ぜひご覧ください。

他にもリアル店舗では相模原の「菊屋浦上商事」も有名なようですね!機会があればいつか行ってみたいです。

蛇足ですが、相模原といえば以前アンティークや作家さんの一点ものを扱う海福雑貨、絵本・児童書・シュタイナーおもちゃ専門店のよちよち屋を訪ねた事があります。
海福雑貨とよちよち屋はどちらも小田急相模原が最寄りで2店の距離も近かったのですが、菊屋浦上商事はJR相模原が最寄りで結構離れている模様…いつか相模原を再訪する時は、3店とも行ってみたいです

今回ははさみと定規の2点ですが、たった2つの道具であっても、視点が変わると見える景色が大きく違うことに気づかされた出来事でした。

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