モビリティ―ショーに行ってまいりました
こんにちは。
DSSで助手を務めている松山と申します。よろしくお願いいたします。
ジャパンモビリティショー(モビリティショー)に行ってまいりました。
経済活動が本格的に再開して初めてのモーターショーですが、今回から名称をモビリティショー(Japan Mobility Show2023)に変えて開催されました。参加社数も前回に比べて2倍以上となり、会場の東京ビックサイトを目一杯使用する大規模な展示会となります。会期は2週間余りで10月25日から11月5日まで。来場者も前回より増えると思われます。
モビリティショーは近年では隔年の開催で、私は2000年以降、仕事兼プライベートで足を運んでいます。約20年間の変遷をこの目で観てきましたが、今回は主催者が「生まれ変わり」を宣言しているだけあり、かなり内容が変わった印象を受けました。
ニュースリリースでは「自動車業界の枠を超えて、他の産業やスタートアップ企業と共に日本の未来を創るためのショー」と紹介しており、コンセプトも出展する企業の顔ぶれも従来とは異なるものになったようです。今回の名称変更もその狙いを込めて行ったのだと思います。
実際に会場を廻ってみると、未来の生活スタイルを提案したり研究中の技術を体験させたりするブースや、自動車関連技術には留まらない内容のものも多くあり、とても驚きました。新技術を自動車のために使う提案、基礎技術は自動車関連の研究から生まれたけれど活用先は別の産業を模索するものなど、色々な方向性も提示していました。EV関連や安全運転に関わる技術・アイディアを持ったスタートアップ企業の出展も多かった気がします。
今回のモビリティショーは、新車の発表会や自動車関連技術の見本市ではなく、国内外に向けた産業博覧会と表現したほうがしっくりくるような気がしました。
従来、自動車関連企業の主たる事業は自動車生産ラインの一部を担うもので、取引先や活動領域も自動車に関わるものに留まっていました。資本的には独立した企業もいわゆる系列という枠組みに組み込まれました。この構造が自動車関連産業の強みであり、系列企業は安定した経営基盤を確保することができました。しかしその仕組みもどんどん変化しており、自動車関連企業も生き残りのために新たな方向性を打ち出すことが必須となっています。他の産業や新しい領域への活動を模索することもそのひとつだと思います。
また、今後の自動車関連技術は自動車産業の中だけで課題解決して進化していくことは不可能です。他の産業ともアライアンスを組んで革新的な技術を創造し、競争力のある「日本製自動車」を創り上げていかなければなりません。
モビリティショーでも、自動車産業の枠を超えてオールジャパンで未来を創っていこうと宣言しています。今回のリニューアルには自動車産業の新しい方向性を強く示す想いがあるのだと感じました。
大きく変化したモビリティショーですが、話題の中心は従来通り自動車メーカーだったと思います。出展ブースは東館に集められており、来場者の多くもそちらに足を向けていました。自分も駆け足で観ましたが、国内自動車メーカーは自動車や関連技術を使った新しい生活スタイルの提案をしているところが多かった気がします。また、電気自動車に対する方向性もそれぞれが出していたと思います。あと、中国の電気自動車メーカーBYDがレクサスの隣のブースに出展しており、とても勢いを感じました。
過去のモビリティショーでは、開催に合わせてフラッグシップ車の新車発表を行うなど、各メーカーが「ショーの目玉」を用意していました。今回は具体的な製品ではなくコンセプト提案に留まる企業も多く、少しおとなしめな印象を受けました。レクサスは新型の電気自動車をずらりと揃えましたが・・・ホンダやスバルは航空産業にも軸足を移しているようなイメージでした。
従来のモーターファンの注目を集めていたのがマツダのコンセプトカーでしょうか。EV+ロータリー技術を使った新エンジンを積むRX-7(FD3S)やロードスターを彷彿させるようなビジュアルの2シータースポーツ「MAZDA ICONIC SP」です。
スポーツカー好きの自分も、その美しいフォルムとロータリーエンジンの復活というロマンにウットリと魅入られてしまいました。
クルマ好きだった20代の時、ロータリースポーツに手を出す寸前でしたが、友人のFC3Sに試乗させてもらい購入を断念した思い出があります。伊豆半島の下田から伊東方面に山越えをしたのですが、片道でフュエルメータを1ゲージも減らしてしまい平謝りしました。友人は「この燃費の悪さもRX-7の特徴だから」と笑って流してくれましたが…。
アクセルを踏むとリニアに反応するエンジンとミッドシップカーのような車重バランスがもたらす高い回頭性、ゴーカートのようなハンドリングが可能なこの車はとにかく運転が楽しく魅力的だったのですが、あまりの燃費の悪さに心が折れました。
結局、ホンダのVTECエンジンを選んだのですが、今でもロータリーへの憧れは持ち続けています。「ICONIC SP」、スポーツカー好きのオヤジには楽しみのクルマです。
今回のモビリティショーは、日本の自動車産業の変革と新しい産業の創出を目指すという意志を強く感じる未来志向のイベントでした。その一方で自動車産業の勢いとクルマの魅力を伝えてきた従来のモーターショーのような要素はかなり薄れていました。
「頼もしいけれどちょっとだけ寂しい」、少し複雑な気持ちで会場を後にしました。