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じゃあこれを使って

11月末、カルテ東京ポップアップが終わり
心身共に消耗し切った私のイマジネーションは枯れ果てに枯れ果てております。

どうも、お疲れ様です皆様。
もう12月ですね。
ここからが速いですよ、毎年のことですが。
ぼーっとしてると12ヶ月目は光の如し矢の如し。
欠伸をしている間に置いていかれます。

そう自分に言い聞かせながら、回らない頭でうんうんうんうんうんうん唸りながら仕事を再開させつつあるところです。

通常モードの1/8くらいしかスタイリングが組めない程には頭が眠っている現在、決してコンディションそのものが悪い訳ではなく、こうして指を動かしてゆっくりゆっくりエンジンをあたためていく作業が必要なんです。

さあそれじゃその1/8ってどんなのが出たのよって話ですけれど、今回ちょっと普段と違ってまして。

HONDA社のレーシングブーツ。
これを使って何か組んでね、というお仕事です。

これ容量オーバーでポップアップ持ち込みを諦めたピースなんですけれど、軽くでもIGで紹介しちゃったが故に先ずこれ使って組まなきゃならなくなった次第。

「これを使って何か組んでね」
これ苦手なんですよ。
お前、これ苦手でどうすんだ、というところなんですが、苦手なんですよ。不得手。

綺麗なスラックス突っ込みたいよね、という何となくのビジョンは有りましたけれど実際組んでみると悉く上手くいかない。

どうしたと思います。

靴の下に石を入れました。
靴の中に入れたのでなく、石を踏ませたっていうと伝わりやすいかな。

すると
な〜〜〜んかダメ、なんかダメだわ
となってたのが急転。
水を得た魚のよう、ファニーカオスが元気に泳ぎ出してくれました。

何がダメだったかって、最終的なビジュアルプロポーションです。
人体的に自然じゃない角度で靴が置かれてるのが気持ち悪くて詰んでたんですね。
そんなことかよ。

改善前も撮っておけば良かったなぁと今でこそ思うんですけど、この時はそんな所まで考えが及びません。今より更に頭回ってないのでね。

はい、それじゃあ石を踏ませて一気に人間の形になってくれた当スタイル、みんな可愛いのでご紹介していきますわよ。


JIL SANDER c90's

今回の主役というか何というか。
とことん綺麗な、スリックスラックス。
大体90年代後期辺りのジルサンダーです。

モヘア混じりのモイスチャーウール。
パリっと張りがありながらも水の如きでろでろの落ち感。

これだよ……。
HONDAのブーツに突っ込みたい綺麗なスラックス、何となくでアバウトに想定してましたけど、これこれ。

多分プラダでもヘルムートラングでも可です。
可ですけど、このパンツの優美&無表情が織りなす無二のエレガンスは、こんなにミニマルな印象のアイテムに着用者の心を射抜くミニマル・レイピアを宿してくれています。

別に細くないのに、印象が細い。
細くて鋭い。

ジルサンダーでこれを見つける事に意味がある、とまで言えば大袈裟かもしれませんが、正にジルサンダーからリリースされていて欲しいアイテムの筆頭ではないでしょうか。
つまりは、この部分こそがこのレーベルの根幹にして源泉のひとつであると、そう思います。

今型紙だけコピーして同じ物を作るんじゃ遅過ぎますが、約20年前のタイミングでミニマリスムの本筋として的確に打ち出されたこれは、近代モードシーンを遡る時に必ず通る、アーカイブの大きな1ページ。

メタ的にお楽しみください。



あ、ついいつもの商品ページ感覚で締めちゃいましたね。

次です。

DIRK BIKKEMBERGS

これも同じくらいの年代。
ビッケンバーグのジップアップニット。

スリムなシェイプフィットとランダムながらも明確に表情を左右するストライプデザイン。
雛形としては同レーベルらしいストイックでスポーティな印象を受けますね。

しかしニットウェアならではのウィットが効いている。

ランダムな色切り替えに加えて、編み地そのものもランダムにミックスされている。

不規則に走るセルリアンブルー、これはケーブル編みです。
ベージュとこの色が組み合わさっている時点で垂涎級の魔力を持つ訳ですが、編み地もミックス。
良い意味でめんどくさい、繊細なリズム感。

靴に鉄入れたりワイヤーでブーツを縛ってる人のデザインとは思えませんね。
剽悍なイメージメイクに混ぜ込むエッセンスピースとして200点。

そんな訳で、同氏のファッションデザイナーとしての力量をひしひしと感じながらも自由に使わせていただいております。

タイトフィットと言うよりはサイジングがそもそも小さめですので、この服のMはレディースのMかな……。

フィッティングはこんな感じ。

寒いうちはインナーに甘んじることと思いますが、ヘビーアウターを脱ぐ季節には大活躍してくれましょう。
袖もしっかり意匠が入ってますから、ベストとのレイヤードも映えます。


で、それに重ねてるのがこちら。です。

HALB by K.M.


自身の名を冠したKiminori Morishita をはじめ、08circus、そしてこのHALBを手掛けたのが森下公則デザイナー。

窓状に区切られた各部屋に、色んなニッティングを織り交ぜた……いや、編み混ぜたチャンキーニット。

リジッドウールそのまんま、と言う感じの深いベージュカラーのジップアップセーターという定番のアイテムフォーマットではあるのですが、その中でも飛び切り表情豊かなファニーピース。

身頃だけじゃなく袖まで全部ミックスエディットの餌食です。

こうした優しい温もりを宿したファニーカオスってのはもう今の私の気分にドンピシャリ。
下半身で無機質なスタイリングを作ってくれてるのならもうこれを羽織る他無い。
(コーデュロイPとこれ、とかだと少しくどくて私には難易度高い……)

現代だと、拙いながらも(その拙さが鍵なんでしょうが)色んな生地を接ぎ合わせたパッチワークが台頭していますね。
そこに、それの上位互換…もとい、同ベクトルのトップレンジとして刺したい服です。


各アイテム詳細はもっと詳細に書いてますので是非ショップページにも遊びにいらしてください。


さて最後になりますが


日本代表、惜しかった……、
本当に惜しかった、悔しい……。

今までこんなに悔しいことは無かった。
何故なら今回が一番、世界に届くかもしれないという期待を持てたから。

こんなとこで書いてもしょうがないんですが
本当にお疲れ様でした。

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