大失敗しても落ち込むだけですむのは、ありがたい(800字)
大失敗した。
失敗すると辛いのに
怒りや不機嫌をぶつけられて責められて
それに腹を立てて逆ギレして
さらに落ち込む材料が増える。
そんな負のループに陥らないのはありがたい。
●一瞬で晩ごはんのメインが消える
作り置きの牛丼の具で晩ごはん。
副菜も準備して
どんぶりにご飯もついで
温めなおした牛丼の具をのせるだけだったのに
蓋を開けて熱い容器に手が滑り
容器ごとシンクにぶちまけた。
洗い桶に沈んでいく牛肉と玉ねぎ。
呆然…
●自分の失敗に向き合う
呆然としたまま
シンクを片づけながらつぶやく。
こんなこと起きるんだ…
今日のメインだったのに…
昨日お弁当に少し入れただけなのに…
夫は、
先に食べようや
おかずなくても仕方ないやん
ごはんだけ食べるしかない、と言っていた。
少し不機嫌そう。
無理もない。
だけど、私はそれどころではなく
ただ茫然と
牛肉と玉ねぎと調味料の皆さまに申し訳がたたない…、と
落ち込みながら具を拾った。
そんな妻を不憫に思ったのか
夫は一緒に片づけてくれた。
●次どうするかは落ち着いてから考える
水を触るのがよかったのか
目の前のできることに集中できたからか
2人とも落ち着いてくる。
そうすると
気になるのは晩ごはんだ。
食卓にはすでにご飯と副菜が並んでいる。
ぱっと作れるものはなんだろう?
おかずどうしよう?
ベーコンエッグでも作ろうか?
そしたら夫が
卵焼きがいい、俺が焼くから準備して、
小さいボウルに
卵3個、砂糖と塩と八方だし
なんともありがたかった。
●消えたメインの代わりは卵焼き
言われるまま準備しながらも
表情は悲しそうだったらしい私。
夫が卵焼きを焼くのをそばで見ながら
たわいのない言葉を交わす。
そんなに落ち込む?と夫
だって申し訳がたたない、と妻
落ち込む妻に苦笑しながら卵焼きを焼く夫。
牛肉と玉ねぎと調味料の皆さまには申し訳ないけど
夫の卵焼きは美味しかった。
失敗して落ち込んだけど
感情に振り回されずに
ただ落ち込みを噛み締められた。
いい夜だった。