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病院の待合室で、公園に忘れられた自転車の気持ちになった

警固公園の上空の雲が
羊毛みたいだと思いながら
バスに乗った。

父の病院の付き添いだ。

道すがら近況を話していると
ここ数日、父は腰が痛くて
近々、行きつけの整形外科に
行くつもりだと言う。

だったら、ついでだからと
帰りに寄ることにした。

一緒に診察室に入り
先生に父の近況を伝えて
診察のあと
父は少しリハビリ治療を
受けることにした。

看護師さんに付き添われて
父はリハビリ室へ
私は待合室で30分ほど待った。

処置が終わった父は
待合室まで戻ってきたが
私を探す気配がない。

会計を終える頃に声をかけると
一瞬驚いて
そういえば…と思い出した。

ここは父の行きつけの病院で
ここでの行動に私はいなかったから
ただ、いつも通りに行動していた。

今日はいつもと違って
私が付き添って来たことを
忘れていたようだ。

ふと、児童公園に忘れられた
自転車になった気分がした。

自転車で公園に来たのに
夢中で遊んで
友だちと歩いて帰ってしまう子
いたよね。

ある意味
父は今に集中しているのだろう。

ただ、過去は高速で色褪せて
多くのことが消えていく。

それが父の今の特性だ。

そんな父に役立ちそうな
便利な道具はいろいろあるが
新しい道具に慣れるのは難しい。

だから、父と相談しながら
父の暮らしに合わせて
仕組みに少し手を加える。

壁のカレンダーに予定を書く。
薬の袋に大きな字で情報を足す。
薬は日付を入れて分包にしてもらう。
過去の出来事を話すときは時系列がわかるものを見ながら話す。
不要な情報を減らすために、片づけたり処分する。

少しずつ積み重ねていくのが
私にできることなのだ。