こうめい

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最近の記事

ふてほど ミュージカルシーンの意味

38年前にタイムスリップし現代と行き来する話。 西洋哲学の限界を東洋哲学的アプローチで突破しようとする試みは見事(この意味は最後に触れる) クドカン節炸裂で、一話一話の伏線回収も物語全体の伏線回収も風俗(いやらしい方のではなく文化の)描写も素晴らしい。 昭和を単純に良かったものともせず、現代もまたしかり、良いところも息苦しいところもあり、またラストカットも現在すら過去になるしその時は不適切にもほどがある状態になっているだろうという風刺が入っていて素敵 震災も見逃さないあたり

    • アンメット 記憶障害とは編集行為そのものである

      ドラマ アンメットについて批評。 記憶障害の医者の話。 冒頭のグミのシーンがラストに繋がるのはなるほどと思った。 話のベースが何か才能を持っている者が事故や病気によって才能や能力を失っていくということと、アンメット=満たされない、何かに光を当てるとそれ以外に影があることを見失う、というタイトルなので、何かを失っていくことが主題になっている。 そして、主人公がボソボソと喋るのも特徴的。 この、全盛期を過ぎて何かを失っていくこととボソボソ語りといえば、そう、葬送のフリーレンのメタ

      • ベイビーわるきゅーれの感想

        社会不適合者の女子高生が殺し屋として人生を生きていく話。 文字通り、もし社会不適合者の女子高生が殺し屋だったら?を徹底的にシミュレーションしているという設定勝ちなのと、それを詰めるリアリティがよい この設定と、徹底的なリアリティの追求が、日常と非日常の極端さとそれが入り混じる時の奇妙な曖昧さ、死体処理業者から説教されるなどの現実的な詳細を描写すればするほど面白さが増す構造になっている。 これは、監督がパトレイバーなどを手掛けているのも大きい。 パトレイバーも、もし東京に震災が

        • 幽遊白書実写版、雪村食堂のラーメンの意味等解説

          編集も良い話の取り入れ方、左京と幻海が出すメタメッセージや、モチーフとして出す雪村食堂のラーメンは素晴らしい。 一方、やはりアニメ版ファンとしては粗が目立つ部分が見えたり、時間の時間の重要性(我々はコンテンツではなく時間を体験しているということ)に気づかされたので語りたい。 【良かったところ】 ・バトルシーン ・原作初期のシーンは丁寧に描写 ・未成年の喫煙シーンをカットしてない ・時間短縮のためのストーリーのつぎはぎの編集が見事。交通事故と魔回虫をセットにする、いじめられっ

        ふてほど ミュージカルシーンの意味

          サンクチュアリの考察

          Netflix史上最高レベルで面白かった。 人間の動物的部分を掻き立てられるような部分と、相撲という伝統的でドメスティックなカルチャーを客観的に捉えつつも熱く描写していたのが胸熱だった。 あらすじ:田舎から親父の借金を返すため上京し相撲で稼ごうとする話 ポイント:意識高い系の女性記者が、女性禁制かつ暴力的な相撲文化をおかしいと正論で指摘するのが面白い。 躾といいつつ暴力的な教育、伝統といいながらやり方を変えないあたりはグローバルから見ても異質であり、昨今話題のジャニーズやラ

          サンクチュアリの考察

          考えるスキルを武器にする

          考えるスキルを武器にする、の本のまとめと感想 結論:考える行為は楽しい、だがゼロベースで考えるのは難しいから型を覚えよう。覚えた型とこれまでのオリジナルの自分の経験を基に仮説を作ろう。その仮説を制約や条件が課せられた状態でも作り出せると提案に値する「考える」に辿り着く。ということが言いたいのかなと。 以下、初級・中級・上級編ごとのまとめと感想。 初級編まとめ:頭の外に出す ・考えることはまとめないこと、分けること、図にすること →考えることに陥りがちなのが、まとめない

          考えるスキルを武器にする

          エルピスの定義する正義

          エルピス 正義についての再定義がされていて面白かった あらすじは、冤罪事件を追ううちに巨大な権力にぶつかり権力に抗うという話。 主人公の岸本はテレビ局に勤める金持ちボンボン息子のADで、最初とあることで脅しを受け泣く泣く冤罪事件を追うことになり、キャスターの浅川を巻き込み真実を追うことになる。 そこで真犯人の存在を突き止めるが、テレビ局へ権力の圧力がかかり、証拠があっても真犯人逮捕に至らず…という展開。 主人公は途中から正義に目覚め、真実の究明に燃えるが、自分の信念を貫く=

          エルピスの定義する正義

          シン・仮面ライダーはシンではなくリメイクだった

          結論、シン・仮面ライダーではなく仮面ライダーリメイクだった。 内容は初代仮面ライダーを踏襲したような内容。 面白かったのはショッカーの理念。 ショッカーは「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling」の略称で、「計算機的知識を組み込んだ改造による持続可能な幸福の組織」つまりAIを使って持続可能な幸福を追求する組織ということ。 具体的には、絶望を抱えた人間

          シン・仮面ライダーはシンではなくリメイクだった

          ハイスコアガール〜究極のラブストーリー〜

          これは、俺の遺言であり、人生そのものであり、理想の物語であり、究極のラブストーリーであり、これを超える作品はもう出てこないであろうことをここに記す。 ザンギエフのスクリューパイルドライバーを指弾きの1回転で歩きスクリューで出せる女。たまらない。 ・あらすじ ゲーム全盛期の91年、主人公がアーケードゲームの格ゲー(スト2)で無双する中、突如現れた同じクラスで学業優秀、金持ちの娘の大野晶に完敗。ハメ技(待ちガイル)でリベンジするも自力で圧倒する大野に対しライバル視しながらも段々

          ハイスコアガール〜究極のラブストーリー〜

          ロマンティック・キラー〜恋愛に興味ない時代のヒロイン〜

          恋愛に興味のない主人公の女子高生が少子化対策のもと無理やり男子と恋愛させられる話。 腐女子インサイトをよく付いていて、男でも楽しめる、というかむしろ男子向けの話でもあった。 テレビ局ではなくNetflix制作というのも結構エポックメイキング。 レトロゲームっぽいトーンを出したり主人公が男らしさを出すときの表情は70〜80年代劇画風になったりと、おっさんホイホイ的な作画も狙っており、さすがジャンプ+でヒットするだけのターゲット設定。 時代分析的には、若者が恋愛しなくなっている

          ロマンティック・キラー〜恋愛に興味ない時代のヒロイン〜

          ドラゴンボールスーパーヒーロー〜悟飯の変身演出という芸術と敵の不在〜

          シナリオより演出、画の力に振り切った作品だった。悟飯好きにはたまらない作品。 あらすじ:レッドリボン軍のDr.ゲロの孫、Dr.ヘドが、レッドリボン軍トップのマゼンタにそそのかされて人造人間セルを超える人造人間を作り、悟飯とピッコロたちと闘う話。 解説:レッドリボン軍、ピッコロ大魔王という設定を持ってきたのが見事。 悟飯とピッコロが主人公だと、Z以前の無印のドラゴンボール好き(50代以降)にとって興味ないもなになりがちなところを、冒頭いきなり子どもの頃の悟空の回想シーンを入れる

          ドラゴンボールスーパーヒーロー〜悟飯の変身演出という芸術と敵の不在〜

          花束みたいな恋をした〜オタク的恋愛の敗北〜

          サブカル男女の恋愛物語。 一見大衆向けの甘酸っぱいラブストーリーのように見せながら、実態は似非サブカル好き批判の没入型ラブストーリーだった。 出てくる固有名詞が少しだけサブカル好き向けで、でも超コアかというとそこまででも無いのが絶妙。 麦はサブカル好きに見えてあまりそうで無い、ストリートビューに自分が映る方がガスタンクよりも好きで、だからこそ最後は幸せのテンプレにすがる。 絹は何よりもミイラが好き、というのがブレないあたりが麦よりもサブカル好き。 麦は現実主義、絹は理想主義だ

          花束みたいな恋をした〜オタク的恋愛の敗北〜

          シン・ウルトラマン〜野生の思考が示す文化的優劣の無効化〜

          シン・ウルトラマン あらすじ:カイジュウが現れた日本でカトクタイ(地球防衛軍的組織)が対抗するもダメで、そこに銀色の巨人が現れてカイジュウを倒す話。 感想:シン・ゴジラからのシン・ウルトラマンということで対比が面白い。シン・ゴジラは原発のメタファーとしての怪獣、キャラクター性の封印としての早口演技(アンチエヴァ)、ここ30年の日本の政治のグダグダ感(怪獣にミサイル一発打つのにかかる手続きの遅さ)がテーマになっているのに対し、今回はシン・ゴジラの早口感は踏襲しつつも、ウルトラマ

          シン・ウルトラマン〜野生の思考が示す文化的優劣の無効化〜

          呪詛〜応援上映を逆手に取った、観客を裏切る禁じ手〜

          呪詛 一番恐ろしい手法のホラー、名付けて逆応援上映。 ・あらすじ 母親が呪いにかかった娘を助ける話。 立ち入ってはいけない田舎の区域に立ち入り呪いを受けた娘の呪いを解く ・恐ろしいポイント 単純に画面の中の登場人物だけで呪いを解くのではなく、視聴者にも呪文を唱えるよう語りかけるシーンがある。そしてその呪文は、唱えたもの自身が呪われる呪文。呪いを1人にではなく多数にかければ1人あたりの呪いの負荷が軽減されるから、というもの。 ここで視聴者は騙され、驚く。 いわば応援上映のよ

          呪詛〜応援上映を逆手に取った、観客を裏切る禁じ手〜

          今際の国のアリス〜今際に込められた2つの意味とデスゲームが示す日本独自のモチーフ〜

          今際の国のアリス。 「今際」の意味がダブルミーニングになっていることがわかり、日本のデスゲームコンテンツクオリティの高さが改めて理解できた ・あらすじ ゲームばかりして定職に付かない主人公がある日渋谷で仲間と待ち合わせし、花火が上がったと思いきや東京が一変、デスゲームの街に変わり、生き残りをかけてゲームをしていく話 ・考察 解説すべきことは特になく、ゲームの複雑さもデスゲーム好きにとっては複雑性が担保されそれなりに面白い。 考察したいのは最後のオチ。 結局デスゲームの街と

          今際の国のアリス〜今際に込められた2つの意味とデスゲームが示す日本独自のモチーフ〜

          カルテットの考察 カルテット、みぞみぞ、歌詞の意味とは

          冒頭のドラクエ演奏で心揺れ、小ネタで笑い、夢と愛の話で泣き、サイコパス女ありすに気狂い、カルテットに微笑み、クライマックスのどんでん返しに唖然とした。坂元裕二節炸裂。 あー、みぞみぞする。 ■あらすじ 東京のカラオケボックスで偶然出逢った4人がカルテットを組んで軽井沢の別荘で音楽活動し夢を追いかけながら、互いの恋愛関係が変化しながら、出逢った時からすでについている嘘が暴かれていく話。 ■解説 キャラクターとしては以下。 まき:プロの音楽家、既婚者 すずめ:まきに友達として

          カルテットの考察 カルテット、みぞみぞ、歌詞の意味とは