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怪談市場 水の章

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2000字前後の短い怪談を取り揃えております。すべて投げ銭なのでお気軽にお読みください。いずれ百物語にする計画です。
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2015年1月の記事一覧

怪談市場 第三十八話

怪談市場 第三十八話

『婆さんが飛んだ日』

柴田君(仮名)が中学時代に、いまは亡き祖父の正夫さん(仮名)から聴いた話である。

当時、柴田少年はバレーボール部に所属し、日々練習に励んでいた。学校ではもちろん、家でも独りでできる練習があり、自分用のボールを持っていた。使用しないときや長い距離を持ち運ぶときは空気を抜いておく。ある日、なにかの拍子に祖父の正夫さんが空気の抜けたバレーボールを触り、嫌な顔をして吐き捨てた。

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怪談市場 第三十七話

怪談市場 第三十七話

『凍死と素麺』(ケイイチさん 2)

「俺はこれまでに2度、凍死の危機に直面した経験があるんだ」

山歩きが趣味のケイイチさん(仮名)は、そう思い出を語り始めた。

1度目は学生時代、山岳部のメンバーとの冬山登山中に、天候の急変に見舞われてビバークし、遭難しかけたとき。さいわい翌日には天候が回復し、仲間たちの介抱もあって、一時的な低体温症と軽度の凍傷程度で下山できた。

2度目は就職して数年、結婚

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怪談市場 第三十六話

怪談市場 第三十六話

『アスリート金次郎』

D君は、とある地方の旧家で生まれ育った。

彼自身は自分と弟との2人兄弟だが、父親は弟四人、妹2人の7人兄弟である。年末年始ともなれば、独立した弟や、他家に嫁いだ妹たちが帰省し、家の中は一気に賑やかになる。D君にとっての伯父さんや伯母さんだ。従兄弟たちも同行するので遊び仲間も増える。D君にとっては大歓迎だ。

1年ぶりに再会した子供たちが広間でボードゲームやUNOに興じるう

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