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怪談市場 水の章

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2000字前後の短い怪談を取り揃えております。すべて投げ銭なのでお気軽にお読みください。いずれ百物語にする計画です。
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2014年8月の記事一覧

怪談市場 第二十三話

怪談市場 第二十三話

『魂呼ばい』

最初の事件は高校2年の秋だった。

晃子さん(仮名)が昼休みを利用して訪れた図書室で、同行した友人の早苗さん(仮名)が突然、倒れた。心臓に持病があり、これまでも何度か倒れた経験があると本人から聴いてはいたが、実際に発作を目にすると動揺するばかりで咄嗟には動けない。図書室には他に10名ほど生徒がいたものの、彼らも成す術を失って硬直していた。

ただ1人、冷静に、そして速やかに行動した

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怪談市場 第二十二話

怪談市場 第二十二話

『遠い盆踊り』

クラス会で、担任だった島崎先生(仮名)から、こんな話を聴いた。

当時、先生は小学5年生。舞台は昭和40年代の田舎町だ。春休みが明けた始業式の日、島崎少年の学級はざわついた。この春に赴任してきた新人教員が、彼らのクラスの担任に決まった。名は紀野祥子(仮名)。大学を出たばかりの、美しい女性教諭だった。

それまで、島崎少年の通う小学校で一番若かったのは30代前半の男性教師。女性教師

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怪談市場 第二十一話

怪談市場 第二十一話

『呑鬼』

年下の友人マーと、海へ釣りに行った帰り道の話である。

我々の住む街は内陸にあり、海までは1時間以上車を走らせなければならない。夕方に出発して夜釣りでアナゴを狙い、中途半端な釣果のまま日付が変わる頃に竿をたたんで帰路に就いた。

片側2車線の国道を走行中、前方を走行する車両の異変に気付いた。テールランプが、やけに揺れる。かなりの蛇行運転だ。

「泥酔カー、発見。注意せよ」

「ありゃ、

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