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持続的な顧客成功と事業成長を可能にするカスタマーサクセスの改変方針

はじめまして、株式会社ダイレクトソーシングマネージャーの竹山と申します。 まず簡単に私の経歴を紹介させていただきますと、 新卒で大手日系製造業に勤務し、その後indeed Japan株式会社に入社しました。 さらに個人でいくつかのマイクロ事業を経験した後、1年半前に当社にジョインしました。
今回はカスタマーサクセス部のマネージャーとして、顧客成功のための仕組みづくりを一新し、 プロジェクト広報することを目的に記事執筆をしました。 カスタマーサクセスとしての在り方や、目標・KPI設計、具体的な施策までを網羅しており、 既に当社と関係ある方以外にもご一読いただく価値はあるかと考えております。 早速本題に入る前に、まずは冒頭で当社のこれまでのお話しを簡単にさせてください。

ダイレクトソーシングは「STAND ALONE COMPLEX SOCIETY」というVISIONを掲げています。それは、

「独立した個人が協働し、活躍できる社会を創造する」

という意味を持ちます。 これまではベンチャー企業らしいスタイルで各人が大きな裁量や意思決定権を持ち、独立性の高い個人が協働する形で顧客の成功と事業の成長を実現してきました。
しかし近年は採用市場やトレンドの変化、顧客成功水準の高まりや複雑化など、属人的な個としての提供サービスには限界も見えてきました。加えて、担当であるコンサルタントの力量によりプロジェクトの品質が左右されやすい性質もあり、プロジェクトおよび人員マネジメントの重要性は日増しに増加しています。

このような課題に直面している中、indeed Japanで2018年新規セールスギネスの達成(恐らく抜かれていないとは思いますが…笑)、個人としていくつかのマイクロ事業を成功させてきた経験を活かし、目的達成のための指針とノウハウを組織に浸透させる努力を日々行っています。とりわけ採用市場が目まぐるしく変わる中でも、継続的に顧客成功を達成する方法を模索し続けています。
社内でのCSサービス改善プロジェクトキックオフからプロジェクト初動までのプロセスを記録し発信することで、社内外の多くの関係者に目的達成と目標設定、顧客成功に関する組織の方針を共有しようと考えています。当社自身の取り組みや記事内でのいくつかのノウハウがお役に立てる機会があれば、大変嬉しく思います。

プロジェクト概要

  1. プロジェクトの目的

  2. プロジェクトの具体

  3. プロジェクトの今後

1.プロジェクトの目的

  • プロジェクトの目的は持続的な「顧客成功」と「事業成長」のための仕組みづくりです。

「顧客成功があってこその売上(事業成長)であり、
事業成長に拘るからこそ顧客成功への質を研ぎ澄ますことができる」

  • プロジェクト対象は 「経営陣」「マネージャー・リーダー陣」「CSメンバー」

    • ほぼ全てのステークホルダーが一丸となりプロジェクト成功を目指す必要があります。

1-1.プロジェクトの思想

  • サービス改善と言うと旧態依然のサービスや体制の刷新をイメージするかもしれません。

    • ただ今回は**「既存体制や既存体制の再開発ならびアップデート」**を目指します。

      • 既存事業であるダイレクトソーシングは取り巻く環境こそ数年前と変わってきていますが、依然として重要性や有効性は失われていません。

      • そのため今後もダイレクトソーシングサービスの継続的な改善が不可欠となります。

  • またプロジェクト改善において、ダイレクトソーシングの4つのValueをベースに設計します。

    • 「Dig (深堀り) 」

    • 「Accelerate (実行力)」

    • 「Catalyst (結びつける)」

    • 「Game Change(戦況を変える)」

      • このValues(価値観)を根幹にし、それを体現できるよう仕組みづくりをします。

(補足):プロジェクト思想の根拠

  • (現状)

    • これまで顧客成功に向けた発信機会はオンオフ多くありましたが、以下問題が表出。

  • (問題)

    • 顧客ニーズの多様化や複雑化、また採用成功水準の変化スピードが想定より速い。

    • 組織成長段階における、人員やプロジェクト体制の変化への追従に負荷がかかる。

    • 各人のスキル・経験、スタンスによりアウトプットに振れ幅が生じる恐れがある。

2.プロジェクトの具体

  • 前述した目的と思想、あるいは問題課題設定をベースに3つの大方針を立てました。

  • 改善プロジェクトは**「目的」「責任」「定量」**の3つをクリアに定義します。

    1. 目的ドリブンで考える

      1. 全体プロジェクトはもちろん、施策に対しても明確に目的を定めます。

      2. 目的設定により、余計なものではなくシンプルにコトに向かってもらう。

      3. 目的や目標への達成経路はSMARTに5つの観点から設定していく。

        1. S(pecific):目標が具体的であること

        2. M(easurable):測定可能であること

        3. A(chievable):達成可能であること

        4. R(elevant):関連性があること

        5. T(ime-bound):期限があること

    2. 責任分掌を規定する

      1. 業務内容・責任・権限を明確化すること

      2. 属人的要素における弊害を排除し、組織の顧客成功と売上成長の再現性を高める。

      3. まずは各人の責任分掌を全うすることから組織の足元固めをしていく。

    3. 定量による目標設計をする

      1. 経営指標からブレイクダウンしたSMARTな定量目標を設計する。

      2. 目標までのボトルネックやギャップを定量から適切に捉え改善していく。

        1. 多くの場合、目標へのギャップやアラートは定量数値の異変として現れる。

CS改善プロジェクトの具体Part1(責任パート)

①プロジェクトメンバー

  • 形態こそピラミッド型ですが、職務職責の違いを明確化しているだけです。

  • 実運営は各プロジェクトメンバーが個別チーム事情を踏まえた意見や施策をボトムアップ的に積極的に上げていきます。

  • コアメンバーを固定し顧客成功の布陣を強固にしつつも、個別チーム内におけるメンバーや施策の指定は極力せず、各チームの責任範囲での自治的運営を想定しています。

※以下はプロジェクトメンバー図となりますが、メンバーの個別名はマスキングしています。

②責任分掌の規定

  • 責任分掌の規定は誰がどの職務職責を負うかを明確に定義しているものです。

  • 責任分掌の見方 ※マネージャーの場合

    • 役職:カスタマーサクセスマネージャ

    • レポートライン:代表ならびチーフカスタマーサクセフオフィサー(CSO)

    • KPI:GRR(総収入維持率)、NRR(ネット収入維持率)、NPS(顧客推奨スコア)

    • 責任:KGIから導き出された上記3指標の定量達成

  • 責任分掌の課題と期待効果

    • これまで負うべき責任の範囲はおおよそは定まっていましたが、明確な線引きはなし。

    • 自らの責任セクションへのコミットメント向上、現状分析〜打ち手までのスピードUP

※以下は責任分掌全体ですが、具体的な数値の記載もありマスキングしています。

③会議体の制定

続いて3つ目は、会議体の制定と課題管理についてです。

  • 会議は何を目的に執り行われるか?代表的なものを5つ記載してみました。

    1. 意思決定

    2. 情報共有

    3. 情報出し

    4. 意見の交換と検討

    5. 士気を高める

  • 目的が「会議すること」にならないよう、5つの原則から事前に主要目的を列挙しています。

  • 会議体制定による期待効果

    • 議論の滞りがあった場合に目的に立ち返りやすい(目的ドリブン)

    • 良質なアジェンダ設定によるアウトプット質やスピードの向上

(※重要) 決まりきったガチガチの会議をするということでは決してなく、 会議の目的や趣旨から外れなければ、内外部環境を踏まえてのアップデートは歓迎する。 以下は個別チーム発のMTGアジェンダ例

CS改善プロジェクトの具体Part2(定量パート)

  • CSサービス改善プロジェクトの初期段階では、

中期経営計画ベースのKGIに紐づくKSFやKPIを適切に再設計する構想はしていました。

  • ただ方針としての構想はあったものの、具体的な指標や数値は非常におぼろげなものでした。

  • そこで原点に立ち返り「DS組織の目指すべき姿や在るべき姿」からSMARTな目標設計ができないかと考えはじめました。

(当初)方向性や指標としての大凡の方向性のみだった…

(導入期)

  • ダイレクトソーシングは、「STAND ALONE COMPLEX SOCIETY」というVisionを掲げます。

    • 意訳すると**「独立した個人が協働している社会の創造を目指す」**というものです。

    • 組織とすれば5つの組織モデルの「ティール的組織」を目指すというものです。

  • これは我々のビジネスにおいて顧客成功と双璧をなす、とても重要にしている信念です。

    • そのためメンバーの主体的な意思と事業戦略が紐づいた時に顧客成功、またその先にある独立した個人が活躍できる社会の創造に繋がると仮説ではありますが、確信を得ました。

(ワークショップ期)

  • 個人・組織として顧客成功を目指すにあたり、重要成功要因KSFはメンバーの主体的な意思をもとに集めた顧客成功の種を、事業目標と紐付け花咲せる必要がありました。

  • 以下は実態のワークショップで使用した極めてシンプルな問いです。

    • 顧客成功のために必要だと思うこと

    • 顧客成功のためにできていないこと

  • ワークショップでは以下のように多くのアウトプットがありました。

(完成期)

  • 完成系は以下の通りです。

    • 【オレンジ部】

      • KGI全社下期売上目標は5つの組織のオレンジ部分で、「目標達成するための合理的組織」に必要となる重要な灯台の役割を果たします。

    • 【グリーン部】

      • KSFやKPIはメンバーの主体的な考えをベースに定め、KSFに紐づくKPIは顧客成功の指標となり確率を上げられSMARTな目標を検証を重ね設計しました。

      • 具体的なKPIは、①総収入維持率②ネット収入維持率③NPS(顧客推奨スコア)の3つそれぞれ表中の数値をKGIと紐付け設定しました。

    • 【ティール部】

      • 各チームやメンバーのボトムアップ中心の施策の一例になっており、ツリーのKSFやKPIの達成を前提に、ボトムアップ的に運営されることを想定しました。

      • ティール部においてはチームの自治的運営を尊重し、マイクロな各種設計はしません。

【※参考】GRR(総収入維持率)NRR(ネット収入維持率)の計算例
元来SaaSの短期サブスクリプションサービスと相性の良い指標のため、当社にFitする仕様へ

CS改善プロジェクトの具体Part3(定量&目標パート)

  • CS改善プロジェクトでは顧客成功と事業成長が明確な2つの目的です。

  • ここまで主に社内プロジェクト体制や目標設計の仕組みに焦点をあててきましたが、 最後に社外巻き込み型の取り組みのうち1つを紹介します。

NPS

NPSとは「Net Promoter Score」の略で、顧客ロイヤルティ(商品やサービスに対する信頼・愛着)を測る指標です。顧客アンケート調査において「商品やサービスを親しい人にどの程度おすすめしますか」の質問から「0-10の11段階」で回答を取得し、値を算出します。NPS®は顧客満足度とは異なり、企業の収益と相関が強い点から経営指標としての導入が進んでいる指標です。

※以下はNPSアンケートの例や採点について

今回NPSを導入するにあたっての理由は、

  • 顧客成功は自社ではなく顧客が認識したり評価したりするものだということ。

  • 顧客の購買理由は①投資への期待②損失リスクの回避③社内外の政治的事情などが主である。

上記を踏まえると、企業が有限な資金を身銭を切って発注する場合、少なくとも何かしらの便益に期待がある。

その場合顧客成功という目的に立ち返ると、

  • 顧客のリアルで具体的な定量定性情報といった生の声がクリアに捉えられない場合、顧客成功の正しいアプローチから遠のき、CS部門の目的やミッションから外れてしまう。

  • 顧客成功は一日にしてならずなので、継続的な発注がないことには顧客成功させづらい、そのためには顧客の評価を真摯に受け取め、各人また組織がupdateし続けることが必要。

  • これらを踏まえて実際に導入したNPSシートが以下です。

3.プロジェクトの今後

サービス改善プロジェクトは主に既存サービスや運用体制のアップデートに焦点を当てました。 ①目的目標設定②責任分掌や会議体③定量目標達成の仕組みの主に3つの再設計を行いましたが、 新規SaaSプロダクトや新規採用支援サービスなども続々と創出されてきています。今後は新旧サービスがより調和する形でプロジェクト推進を加速させていく予定です。
サービス改善プロジェクトはあくまで顧客成功あっての事業成長を掲げ、 事業成長は目指しますが、顧客成功なくしての事業成長を追うことは決してあってはなりません。 あくまで既存サービスを磨き続ける上で、新たな価値やサービスを提供し続け、最終的に顧客成功と事業成長をさせることが唯一無二の目的となっています。
プロジェクトはまだ初動です。 良い戦略や設計があっても、それを継続し価値を生み出すのは意思を持った個です。 最終的にはそのような独立した個人が協働し顧客成功と事業成長を果たす社会の創造を目指し、 今後とも真摯にプロジェクト推進へと取り組み、継続的な顧客成功を実現し続けていく所存です。