太陽光発電が偉大だと思う理由

いま皆さんの手元に自由になるお金、例えば 100万円があるとして「そのお金を2年間で2倍に増やしますよ」という人が現れたら、どうするだろうか?話に乗るだろうか?

まあ、普通は怪しいので、話には乗らないだろう。利率が良過ぎるからだ。年率 40% を超える利率は怪し過ぎる。

しかし、これと似たような効率を誇る発電方式がある。それが太陽光発電だ。太陽光発電を行うには、基本的に太陽光を受ける太陽光パネルをつくる必要があるが、そのパネルをつくるためのエネルギーをほぼ 1年から 3年で回収できるようになっている。この時間のことを「エネルギーペイバックタイム」と言う。

そんなバカな!と思う人もいるかもしれないが、そういう人はぜひ Wikipedia を見て欲しい。Wikipedia に嘘が書いてある可能性もなくはないが、そこまで盛大に間違っていればきっと誰かが直している。

つまり、一度作ってしまえば、ひたすらエネルギーを生産し続ける、そんな素敵な仕組みがこの太陽光発電という仕組みだ。

もしエネルギーペイバックタイムが 2年なら、2年で投資したエネルギーは回収することができる。20年も稼働させれば、投資したエネルギーの 10倍ものエネルギーを回収することができる。うま過ぎる話ではないだろうか?

つまり、20年で10倍にできる。そして、こうして10倍にしたエネルギーをもう一度太陽光発電の整備に使えば、また20年で10倍に増える。同じことを何度も繰り返せば、無限にエネルギーは増えていく。

つまり、エネルギーはほぼ無限にあるのだ。

自分が子供の頃は、「いつか石油はなくなる…」とか、「限りある資源は大切に…」とか、散々言われていたが、人間ごときの使うレベルのエネルギーはこの宇宙にはたくさん溢れていて、事実上はほぼ無限にあると言える。

ただ、使いやすい便利な化石燃料のようなものには限りがあるので、使い切ればそこで終了!ということなのだ。

太陽は天然の核融合炉

では、なぜこんな魔法のようなことができるのかと言えば、太陽そのものが「天然の核融合炉」だからだ。

そして、この「天然の核融合炉」から発生するエネルギーを太陽光としてパネルで受け取れば、それが電気になってしまう。そして、そうしたエネルギーは誰にも等しく降り注いでいる。

誰でも太陽に向かって手を伸ばしさえすれば、無制限にそのエネルギーを受け取ることができる。それが太陽光発電なのだ。

ただ、地球上にある使いやすいエネルギーを使い切ってしまえば、そうした仕組みを作ることさえ難しくなってしまう。だから、そうしたエネルギーを使い切る前に、なんとか空からの恵みを受け取る仕組みへ変えて置く必要がある。

何が問題なのか?

では、何が問題なのか?と言えば、おそらく大きな問題のひとつは価格ではないかと思っている。

もちろん、近年は急激にコストが安くはなっているが、やはり電気代として設備の費用を回収するには非常に長い期間がかかってしまう

エネルギーとしては、投資したものを1年〜3年で回収できるが、実際のお金の投資としては、投資したものを回収するのに10年以上の期間はかかってしまうのではないだろうか?

ただ、お金による評価は相対的なものなので、電気代がいまの 2倍になれば投資を回収する期間は半分にできることになるし、電気代がいまの 1/2になれば投資を回収する期間は 2倍になってしまう。

つまり、原理的には地球上のエネルギーを何倍にも増やす仕組みは既にあるのだが、そこに経済を持ち込むと、なんだか途端に難しいことになってしまうのだ

上の記事にもあるように、量産効果により太陽光パネルの価格はどんどん下がっているが、それでもまだスピードが追いついていないというのが現状なのだが、頑張ってこれを超えることができれば、もはや人類がエネルギーの心配をする必要はなくなる。要するに、あともう少しなのだ。

需要と供給の問題

あと、もうひとつの大きな問題は発電量が天候に左右されてしまう点だろう。ただ、これを解決する方法としては、いくつもの方法があり、技術的には解決することはそれほど難しくないのではないかと思っている。

方法1)ダイナミック・プライシング
もし、個人でも企業でも自由に電力を売り買いできるような仕組みができているならば、価格により需給のバランスを取ってしまうのが、一番早いような気がする。つまり、市場原理を使う、ということだ。

これができると、太陽光発電を設置できる家庭からそうでない家庭へ電力を供給したり、また夜間の安価な電力をバッテリーに貯めて、それを供給が足りないときに放出したり、といったことが自由にできるようになる。

そのときに、電力会社が買い取り価格を決めてしまうと、それが制約になって電力の自由なやり取りができなくなるので、売り手と買い手が需給に応じてダイナミックに価格を設定できる必要がある。そのときに、使える考え方が、このダイナミック・プライシングという考え方だ。

これができるようになることで、電力をより効率よくやり取りできるようになり、いろいろな無駄が減らせるようになる。そして、電力会社はその役割を変えることになるのではないか?と思っている。

いままでの電力会社の役割は、電力を生産し、その電力を供給することが大きな役割だったが、これからは電力を流通させるプラットフォームとしての役割を電力会社が担うことになるのではないか?と思っている。

そして、おそらくこうした企業体のイメージに近いのが銀行だ。お金を右から左に動かして、儲けるのが銀行だとすると、それを電力に置き換えたものが、未来の電力会社のイメージに近いだろうと思っている。

Amazon や Apple の App Store も、これに近い立ち位置に近い商売と言えるだろう。商品を流通させる手数料やアプリを流通させる手数料で大きな利益を出している。薄い手数料で、膨大な量を流通させることで、巨額の利益を出しているのだ。

そう考えると、これからの電力会社の良し悪しは、いかに安く電力を生産するか?ではなく、いかに効率よく流通させるか?が、ポイントになってくるだろうと考えている。

方法2)バッテリーによる電力の貯蔵
電力を電力のまま貯蔵できるバッテリーは、エネルギー効率という観点からは最も魅力的な方法になるだろうと思う。ただ、貯蔵する電力量が大きくなるに連れて、必要なバッテリーの容量も大きくなってくるので、あまり膨大なエネルギーを溜め込むには向いていない方法かもしれない。

ただ、これも量産化をグンと進めることができることができれば、バッテリーもいずれタダ同然という日が来る可能性があるのではないかと思っている。おそらく、そういう方向で進もうとしているのが、テスラなんだろうと思う。

方法3)水素による電力の貯蔵
電力を一旦水素に変換して貯蔵する仕組みは、設備の大きさが溜め込むエネルギー量に比例しない点はバッテリーよりも魅力的だと言える。ただ、電力から水素、水素から電力というエネルギーの変換を行うことになるので、このエネルギー変換の過程で無視できない水準の無駄が発生する。

燃料電池の発電効率は一般的に 60%くらいなので、これ自体はそれほど悪くないのだが、水を電気分解して水素を発生させる際のエネルギーのロスなどもあり、電力を貯めてから取り出すまでのプロセスを考えると、この過程で半分ほどのエネルギーは失われてしまうことになる。

燃料電池は熱も発生させるので、利用する環境によっては、そうした熱エネルギーも利用することができるが、単純に熱を発生させるという観点からはヒートポンプの方が3倍くらいは効率よく熱を発生できるため、電力は電力のまま貯められる方がより有効に活用することができる。

更に、水素を圧縮して高圧タンクで輸送することを考えると、水素の圧縮時に使われるエネルギーなども無視できないコストになってくるため、燃料電池車みたいなものは実は結構難しいのではないかと思っている。

方法4)熱エネルギーとしてのエネルギーの貯蔵
家庭で使われるエネルギーのおおよそ半分くらいは熱エネルギーとして消費されている。つまり、お風呂や暖房で使われている。

一般的な家庭ではガスを燃やすことで、こうした熱エネルギーを生み出しているが、この方法は効率の観点からはあまりよい方法とは言えない。そこで、こうした熱エネルギーをヒートポンプで発生することにして、お湯として貯めてしまう方法が考えられる。これが「熱エネルギーとしての電力の貯蔵」という考え方だ。

簡単に言ってしまうと、最終的に熱としてエネルギーを消費するなら、最初から熱として貯めてしまえばよいということなのだ。例えば、夏場の日中に電力が余るのであれば、その電力をお風呂のお湯として沸かすことにして、熱エネルギーとして溜め込んでしまえば、余った電力を無駄なく使うことができる。

単にお湯を貯めておくだけなので、一般的なバッテリーのように鉱物資源を大量に消費してしまう、といったデメリットもないし、生産するための新たな設備も必要ない。ただ、場所を取るタンクの設置が必要になるので、タンクをどう設置するかが問題になってくる。

もの凄く単純に考えてしまうと、非常に断熱の高いバスタブを開発して、そこに直接お湯を貯めてしまうのがよいのだと思うのだけど、どうなんだろうか??

こうしたアイデアの詳細はこのブログの別の記事でも買いているので、興味がある方はぜひ読んで頂けたらと思う。

エネルギー輸送の問題

「エネルギーの需給のバランスを取る」ということを考えたときに、国内であれば電力網で繋がっているので、エネルギーを電力として地域間で融通し合うことは考えられる。

しかし、例えばサウジアラビアで発電したエネルギーを日本まで輸送するみたいなことを考えたときには電力網で電力を日本まで運ぶというのはあまり現実的ではないかもしれない。

そういったときにすぐに思い浮かぶのが「水素」だが、実はエネルギーの輸送にも太陽光パネルを利用することができる「メタ輸送」という考え方だ。

通常、エネルギーを運ぶことを考えたときに、いままでの発想に沿って物事を考えると、エネルギーを変換してガスや石油のような形にして運ぶことが思い浮かぶが、必ずしもこうしたフォーマットに沿って物事を考える必要はない。単にエネルギーを輸送したいのであれば「エネルギーそのものを運ぶのではなく、エネルギーを生み出すものを運ぶ」という考え方を取ることもできる。これが「エネルギーのメタ輸送」という考え方だ。

こちらもアイデアはこのブログの別の記事でも紹介しているので、興味のある方はぜひ読んで頂けたらと思う。

人類の分岐点はもうすぐかもしれない

こんな風に考えていくと、実は太陽光パネルの低価格化で、長年人類がかかえてきたエネルギーの問題も案外簡単に解いてしまうことができるのではないかと思っている。なぜなら、太陽光発電により人類はほぼ無限とも言えるエネルギーを手にすることができるからだ。

ただ、ひとつポイントがあるとすれば、人類が太陽からエネルギーを受け取る仕組みを作り上げるまえに化石燃料を使い切ってしまうと、本当に人類は詰んでしまう、ということだろう。

多少の元手があれば、それを増やしていくことはそれほど難しくはないが、最初の元手を使い切ってしまえば、ゼロから何かを生み出していくことになり、途端に問題の難易度が上がってしまう。

だから、少しでも早く太陽光発電のような空からの恵みを受け取る仕組みを十分に生み出しておく必要があるし、そうでないと人類は詰んでしまう。その分岐点がもうすぐ迫っている。

子孫に天国を残すか、それとも地獄を残すか、それはいまを生きる人類の選択に全てがかかっていると言えるのではないだろうか。




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