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改訂版:アメリカ株決算の調べ方、まとめ方 

2022年の10月にアメリカ株決算の調べ方、まとめ方という題でNoteを記載しましたが、今だに1週間で100人程度の方に見ていただいています。

書いた本人としては非常にありがたいのですが、記載当時はまだ手探りな部分もあり、今読み返すと不十分な点も多く、今回改訂版を出そうと思い至りました。より良い記事になっているはずなのでご一読ください。

決算の流れ

アメリカの上場企業は1、4、7、10月の中旬から四半期決算の発表開始します。
最初はJPM、BAC、GS、MSなどの金融セクターから決算発表が始まり、
次にGAFAMなどの巨大テック企業、
約1ヶ月遅れでCRM、CRWDなどの有名SaaS企業の決算に移ります。

良い決算の定義

決算期は大量の決算資料の中から、気になる銘柄の決算を重点的に見ていくことになりますが、決算の良し悪しを自分で判断できるためにブレない基準を設けておくことが重要です。

良い決算の定義は
①EPSが市場予想を上回っていること
②売上高が市場予想を上回っていること
③ガイダンスが市場予想を上回っていること
この3つが満たされたものです。

これら3つの項目をクリアしたものは決算翌日上がることが多いですが、1つでもミスすると売られます。

<補足>
例外としてコモディティ銘柄は決算よりもコモディティ価格に連動することが多く、これら3つの項目はそこまで重要ではないかもしれません。例えばCRKは決算数字よりも天然ガス価格の方が株価にとっては重要ですし、SQMはリチウム価格の方が重要です。石油株(CVX, XOM)、金鉱株(GOLD, FCX)、ウラン関連銘柄(CCJ, UEC)なども同様です。

市場予想とは

市場予想とはアナリストのコンセンサス予想のことで、
各証券会社のアナリストが提出した予想数値から算出された値です。
サイトによって登録しているアナリスト数が異なることから数値は参照ページによって誤差が生じます。また算出時に平均値を出すか、外れ値の処理をするかによっても数値が変わってきます。

金融の現場でのシェアの高いBloombergはEPS、売上高、ガイダンスの予想を開示していますが、年間300万円近いコストがかかり個人で使うには非現実的です。
またFactSetというサイトでも各企業の市場予想を開示しています。IBDなどの株式新聞は必ずFactSetを参照したEPS予想は⚪︎ドル、売上高予想は⚪︎ドルと記載しており、重要な情報源です。

例えば、2024/2/15に発表されたCoinbaseの通期決算を見てみましょう。上のIBDの記事には以下のようにFactSetの数値が引用されています。

Coinbase reported diluted earnings of $1.04 per share, improving from a loss of $2.46 per share last year and ending a streak of seven consecutive quarterly losses. Total revenue spiked 51% to $953.8 million, marking the exchange's second consecutive increase after six straight quarters of double-digit declines. FactSet expected earnings of 2 cents per share on a 31% jump in revenue to $826 million.

しかしFactSetも個人の契約では年間100万円以上必要です。

EPS、売上高の市場予想との比較方法

上に記載したBloombergやFactSetが最も信頼されている大元のデータサイトですが、高額な値段を払わずともこれらに近しい情報を得ることは可能です。

①Trading economics

Trading economicsのearning calendarはおすすめです。
コンセンサス予想と四半期の着地数字が一目で比較できますし、アメリカ以外の重要な企業の決算も見られます。
右側にはMarket capや発表時間(AM/PM)も記載されており、このページで欲しい情報の大半を得ることができます。
このサイトは無料ですし、FactSetの数字と乖離はほぼなく、重宝しています。

②Trading view
Trading viewで銘柄のチャートを表示し、下にある"E"ボタンを押すと市場予想と着地数字が見られます。
見たい銘柄が決まっているときはこちらもおすすめです。

ガイダンスの市場予想との比較

ガイダンスが悪い企業は決算後売られることが多く、非常に重要な項目です。しかしBloombergやFactSetを使わずにガイダンスの発表値と市場予想を比較することはEPS、売上高ほど簡単ではありません。

そもそもガイダンスを発表しない企業もあります。一例としてAlphabet(GOOG)は決算資料を見てもガイダンスの記載はないです。

また企業によって、次の四半期のガイダンス(英語ではcurrent quarter outlook)を示すところもあれば、通年のガイダンスを示す会社もあります。
さらにEPSのガイダンスを提示する企業、売上高のガイダンスを提示する企業、両方を提示する企業など様々です。

以下ではガイダンスを比較する方法をいくつか説明します。

①1次資料にあたる
まず直近の決算で企業がどのようなガイダンスを示したのか知る必要があります。”企業名+IR”で検索し、企業の決算資料を見に行きましょう。

<例1 Deere & Company (DE)>
2024/2/15に発表したDEのQ1決算では以下のようにNet incomeの通年のガイダンスがレンジで示されています。
1つ前の2023/11/22に発表されたQ4決算では2024通年の利益ガイダンスを$7.75 ~ $8.25 billionで示しており、今回下方修正していることがわかります。
--->ガイダンスを下方修正しており売るべき決算と判断できます。

DEの通年ガイダンス


②Trading viewを使う
Trading viewで銘柄の決算ページに移るとEPSと売上高に関して四半期ごとの予想と年間の予想が見られます。
EPSや売上高のガイダンスを示している企業ではTrading viewの予想の数値と比較ができ、良し悪しが判断できます。

<例2 Applied Materials(AMAT)>

AMATの2024年Q1決算ではQ2のEPSは新ガイダンス$1.79~2.15が、売上高は新ガイダンス61~69億ドルが提示されました。このようにレンジで示された場合は中値をとって比較することが一般的です。


③2次資料で判断する
IBDの記事ではガイダンスに関してもFactSetのコンセンサスでは⚪︎⚪︎だったが、発表された数字は⚪︎⚪︎だったと記載されます。

<例3 Cadence Design System(CDNS)>
2024/2/12に発表されたCDNSについて書かれたIBDの記事を見てみます。

The San Jose, Calif.-based maker of electronic design automation software earned an adjusted $1.38 a share on sales of $1.07 billion in the December quarter. Analysts polled by FactSet had expected earnings of $1.34 a share on sales of $1.06 billion. On a year-over-year basis, Cadence earnings rose 44% while sales climbed 19%. However, for the current quarter, Cadence forecast adjusted earnings of $1.12 a share on sales of $1 billion, based on the midpoint of its guidance. But analysts were looking for earnings of $1.37 a share on sales of $1.09 billion in the first quarter. In the year-earlier quarter, Cadence earned an adjusted $1.29 a share on sales of $1.02 billion.

アナリスト予想では次の2024年Q1のEPSは$1.37、Revenueは$1.09Bだったが、会社側はEPS $1.12、Revenue $1Bでガイダンスを出してきたことがわかります。
--->結果としてガンダンスは予想に未達。EPS、売上高の着地数字はコンセンサスを上回りましたが、決算翌日は5%安となりました。

④2.5次資料を参照する
Twitter(X)ではEPS、売上高、ガイダンスを予想と比較してまとめてくれている方がおられます。
自分の保有銘柄は自身で確認できるようにしたいですが、特に時間のない決算期や幅広い銘柄を監視する際にはきちんとした資料を提供してくれる方から情報を得るのも得策です。

<例4 Upstart Holdings(UPST)>


まとめ

EPS、売上高の着地数字とコンセンサスの比較に関してはTrading economicsのサイトがおすすめ。ガイダンスに関してはIBD、Twitterも活用しつつ、1次資料にあたり自分で判断できるよう慣れていくことも必要。決算の解釈方法の基本を知り、より洗練された個別株投資を目指していきましょう。

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