見出し画像

89.タイトルと本文が関係なかった気もする

彼女がエスパーだったころ

(上記リンクをクリックすると版元ドットコム。さまざまな方法で買えます。)

三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

どういう縁だよ、と笑われるかもしれませんがぼくこう見えて「小説すばる」に文章を載せたことがあります! ……文学じゃなくて書評ですけれど。医療に関係のあるフィクションを何冊か紹介してくれ、と言われ、いくつかの本と一緒に宮内悠介の連作短編集を選びました。本書は別に医療モノではなく、病院が舞台にもなっていません。Kindleで購入したときは単に宮内悠介だから買ったってだけですからね。ところがいざ読んでみると、「百匹目の火神」は感染症パニック作品として読むことができますし、「ムイシュキンの脳髄」なんて精神医療そのものですし、「薄ければ薄いほど」はそのままレメディが題材ですからね。驚きました。普段、医療の世界で偉そうに暮らしてるぼくはこういう作品を読むと、「殴られて神妙になりました」的テンションになります。名作。

ケン・リュウやテッド・チャンのSFを読むと、そこに横たわる背景論理のいくつかが今の医療とすごく相性がいいなあと思う。というか医療や健康にまつわる話なんてもはやジャンルじゃないんだよな、元素みたいなものだ。人間が生きて死ぬ間のことを書く小説が医療の要素を持たないほうが不思議なのである。

……に、しても、だ。宮内悠介はいい。ぐっとくる。この本いいですよ。


それにしても小説すばるの書評企画のときは困った。宮内悠介を思い付くまで何日悩んだことか……。「あっこれだ!」と思って再読して、読み終わったらすぐに書評が書けた。そういうものである。


(2021.2.26 89冊目)

この記事が参加している募集

推薦図書