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58.ちがう言葉で語るということ

人間と動物の病気を一緒にみる

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三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

ぼくは「ベストセラー」のことすごく大事にするタイプです。かつて入江敦彦さんが「本の雑誌」に「ベストセラー温故知新」というコラムを連載されていたことがありまして(「ベストセラーなんかこわくない」という名前で書籍化)、ベストセラーってたとえ駄作でも読んどいたほうがいいんだなって思って以来、医療系の本についてもベストセラーを集め始めました。でもすぐ挫折。やっぱ医療系のベストセラーって嘘ばっかりだし、医学の嘘は読んでてキッツイんすよ。そこで守備範囲を広げてサイエンス系のベストセラー(シッダールタ・ムカジーとかサイモン・シンとか)を読んでみると、まあやっぱ世界でがんがん売れてる本はすごいっすね、たいてい大当たりなんすよ。まいったな。そして、この本も当たりです。Zoo+Ubiquityでズービキティはちょっと微妙だけど。

ズービキティ、という語感の「受け入れられなさ」はたぶんぼくが日本語使いだからなのだろう。海外でバカ売れしたからには、英語圏の人々にとってはインパクトがあって含蓄もあっていい言葉だったんだろうなと思う。

言葉が代わると同じ内容であっても受け止められ方は変わる。「同じ内容」を世に広めるだけのことにすごく苦労する。動物と人間の病気を一緒にみるというのは、「動物の病気」という耳慣れない言葉で人間の病気を語り直そうという試みだ。それは単なる比喩には留まらない。言語を変える、視点を変える、視座を変える、語り手を変える、そうすることで読み手が変わりやすくなる。

(2020.5.28 58冊目)

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