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173.透徹のわざ

波紋と螺旋とフィボナッチ

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三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェア(本記事は2020-2021のヨンデル選書 3rd seasonが対象)で、お買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

「科学少年が読んだら小躍りする本」をときおり探している。それはたぶんぼくに息子がいるからという理由と、もうひとつ、ぼくだって今も科学少年でいるからだ。いっぺん読んだだけではわからない数式が書いてあっても、いっぺん読んだだけで頭に浮かぶ光景があれば、いずれその数式だってわかるようになるだろう、みたいな感覚がある。本書には数式は一切出てこないからその点は安心、そして、頭の中で、巻き貝がぐるぐると成長していくシーンだとか、何かの結晶がずんずん大きくなっていくシーンだとか、魚の体にある模様がぐいぐいと成長していくシーンだとかを思い浮かべながら文章を読む。元になっている理論は一発では理解しきれない。でも現象の美しさに思いを馳せて、「これも明快に説明できるのか」と感心するところまでは、誰もがたどり着く。

ポッドキャスト「#いんよう」で3,4回ほどとりあげた本である。ほかにも科学少年の心をわきたたせる本はいっぱいあるのだけれど、なぜだろうか、この本は何よりぼくの心をわきたたせるからだろうな。これ系のジャンルは、ブログ記事だと、取材したライターが妙に科学に感動しすぎるきらいがあって読んでいてしんどい。透徹な視点を有する科学者が文章をみがいて一冊の本にするというのがよいのだと思う。


(2022.11.11 174冊目)

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