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171.生きる意味

これやこの


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三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェア(本記事は2020-2021のヨンデル選書 3rd seasonが対象)で、お買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

ヨンデル選書で推さずにどこが推すというのか。「これやこの」を芸能人の棚に置いてしまった本屋さんは(まあそれでもいいんですけど)反省してください。本書は文芸の棚に置くべきです。「出会いと別れ」という古今東西の文学の大テーマに真っ向勝負、しかもボレロみたいにずっと死にまつわる物語が変奏されていくのに、単なる暗い読後感にならない。韜晦しているのに情がある、諦念しているのに心配りがある、このあたりのさじ加減はもう異能ですよね。異能。そういえばぼくはヨンデル選書で過去にいくつも生死のナラティブを扱う本を紹介してきましたが、「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」、や、ほんと、つまりはそういうことなんですよ。中井久夫先生の著作や岸政彦先生の著作と併読するとそれだけで十年ひたれます。

書く側の気持ち、読む側の気持ち、いろいろあるのだが、いちおう「書く側」である私がこの本に対して思うことは、「このような本が書けたならそれだけで自分の人生には大きな意味が存在したことになる」だろうなということ。傑作。

(2022.10.28 171冊目)

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