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103.それはサイエンスというよりも

予測マシンの世紀

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三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

AI=人工知能として現在さかんにもてはやされているものは実際には「予測マシン」と呼ぶべき存在。「予測はAIにまかせて、人間は判断をすればいいのだ、人の仕事はなくならない」という本書の論調もよく目にします。けれども本書が秀逸なのは、「予測に知性とか金銭を注ぎ込んでる分野はヤバい」という警鐘の部分。ロンドンの伝統的タクシー運転手が豊富な道を知っているからこそ割高料金で営業していたのに、スマホの出現で安いウーバーみたいなタクシーに完全に駆逐されている現状が、AIに「診断の予測」を立てさせたあとの医者の末路を思わせます。本書はぼくが言っている内容と一緒ですがそれ以上に説得力があって読みやすい。章ごとにまとめがきっちりされている点もいいですね。未来の医者はみな研究者かケアの人になり、給料は下がるのだ。

2019年の本がもうすでに古文書のように感じる。内容は今読んでも悪くない、というか、今読んだほうが実感しやすい部分は多い。

テクノロジーの本ってあまり古いのを読む気はしないよね。ただ、AIとヒトとの関係ってのはテクノロジーというよりも社会学的な思考が必要だと思うんだよな。早川書房はこういうの出しまくってますけれど中でも本書はわりとおすすめです。


(2021.6.25 103冊目)

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