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~「食べ物」だけじゃない!きのこの役割~知っているようで知らない「きのこ」のこと②

日本きのこセンターの福政幸隆先生による「きのこのお話会」in『とっとり きのこフェア』で特に驚いたのが、きのこの役割についてのお話でした。きのこって、人間にとって栄養豊かでヘルシーな食材というだけじゃなく、地球上の自然や生き物たちにとっても、とても大切な存在だったんです。キーワードは、「腐朽(ふきゅう)」「共生」「寄生」。見えてきたのは、きのこの驚くべき役割でした。

●腐朽
木は枯れると少しずつ腐っていき、最後は土に戻りますよね。実はこれ、きのこの中でも「木材腐朽菌」と「落葉分解菌」の働きによるものなんです。身近なきのこだと、前者はしいたけやなめこなど、後者はマッシュルームなどがそれにあたります。養分を得るために倒木や落ち葉を分解できるのは、地球上で唯一きのこだけ!福政先生曰く、きのこがなければ、たった200年ほどで地表は全て倒木などで覆われてしまうのだそうです。そしてもしそうなったら、地表に日光が当たらなくなって多くの生物が生きていけなくなる。言ってみれば、きのこのこういった働きのおかげで陸上の生態系が維持されているのです。

●共生
植物は光合成で栄養を得ますが、きのこは光合成ができません。そこで、他のもの=生きたものや死んだものから栄養を得て生きています。中でも生きた樹木から栄養を得ているのが「菌根菌」です。マツタケやホンシメジ、トリュフなどが有名ですね。ここで大事なのが、きのこが一方的に栄養をもらっているのではなく、あくまで「共生」しているということ。きのこは樹木が光合成で作った糖類をもらう代わりに土の中のチッ素やリン、カリウムなどの無機養分や水を菌根を通して、樹木に届けているのです。この働きによって樹木は成長が促進され、環境ストレスや病気に強くなるというのですから、樹木にとっても願ったり叶ったりという訳です。なんと4億年前に植物が水中から陸上へ出てきた時から、きのこは植物と共生していたのだそうですよ!

●寄生
「寄生」の場合、相手は主に昆虫です。また「共生」とは異なり、寄生した相手を殺して栄養を奪います。昆虫にとってはいい迷惑ですが、自然界にとっては昆虫の数をコントロールしてくれる大切な働きです。そして人間には貴重な薬をもたらしました。「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」って聞いたことありませんか?中国では紀元前から不老長寿・強壮の秘薬として珍重され、現代でも東洋医学の貴重な生薬の一つとなっています。厳密には細かい分類があるようですが大雑把に言うと、冬虫夏草とは冬の間にきのこが幼虫に寄生してその養分を吸収しながら成長していき、夏にミイラ化した幼虫から伸ばした棒状の子実体(胞子を作る器官)を乾燥させたもの。冬には虫(幼虫)だったものが夏になると草(きのこ)になるためその名がついたそうです。滋養強壮、体力回復効果のほか、免疫力を高める働きもあるようで、今も研究が進められています。

気づかないところで自然や私たち人間の生活に役立っているきのこ。なかなか面白い存在だと思いませんか?

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