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スマホ脳(アンデシュ・ハンセン著, 新潮新書) ドラッグとしてのスマホ

著者はスウェーデンの精神科医であり, この本では著者の専門分野である心理学や脳科学の知見から, スマホが人を惹きつける理由を説明しています.

人類の進化の歴史を繙くと, そのほとんどはアフリカのサバンナで100人から150人程度の群れで生活していました. 当時の環境は過酷で, 生まれた子供の半数は10歳までに死亡し, 飢餓, 病気, 怪我, 争い事などにより, 平均寿命は30歳と短命でした.

人類にはそのような環境で生き延びるための性質が備わっています. 例えば, 食べ物を目にすればお腹いっぱいになるまで食べ, 脂肪を蓄えようとします. 次にいつ食べられるか分かりませんので当然の行動です. しかし, 食べ物が豊富にある時代になってから, わずか数世代しか経過していません. 短期間で人間の性質は変わらないため, 現代社会では肥満が健康上の問題となっています.

また, 群れの中でより良い立場を得るために, 群れの仲間の動向を観察し, 情報を交換してきました. この性質も変わっておらず,  当時は小規模なグループで行われていた情報の探索が, 現代ではSNS上に移り, 世界規模で行われています.

この情報の探索については, ドーパミンが重要な役割を果たしています. ドーパミンの役割は, 何に集中するか選択させ, 行動を促すことにあります. つまり, スマホの画面に何か通知が表示されれば, ドーパミンが分泌され, 通知を確認せずにはいられなくなるのです.

スマホを使うと, 日に何百回, 何千回とドーパミンが分泌されるので, スマホを見ただけでドーパミンが分泌され, SNSで何か新しい情報があるのでは, と5分ごとにスマホを手に取ることになります. 著者によれば, スマホは少量のドーパミンを何百回と分泌させる最新のドラッグです.

SNSに費やす時間が, SNS運営会社が販売している広告枠となります. SNS運営会社の顧客は広告会社で, ユーザは広告会社に販売する商品に過ぎません. そのため, SNS運営会社はユーザのドーパミンを分泌させるように, 脳科学や心理学の専門家を使ってさまざまな工夫をしています.

このようにスマホによって現代人が集中力を持続できる時間は短くなっています. サバンナで暮らしているなら集中力を持続させるほうが危険かもしれませんが, 現代社会で求められる仕事は集中力を要するものです. スマホに抗って集中力を維持しようとしても無駄な抵抗に終わります.

私にできる唯一の対抗策は, スマホからTwitter, Facebookなどのアプリを削除することでした. 焦土作戦です. これらのアプリを削除した結果, 心の重しが取れたようでスッキリしました.

ついでにnoteのアプリも削除しました. フォロワー数が100人に到達していない弱小アカウントですが, noteアプリを使って1時間ごとにダッシュボードを確認していました. 意味のない無駄な行動でした.

スマホにアプリを入れれば何でもできてしまいそうなので, 何でもスマホに突っ込んでいましたが,  集中力を高めて自分の能力を発揮するために, スマホですべきこと, パソコンですべきこと, 手書きですべきことを選別しています.


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