大手に消費されるASMR

こんチワワ

『アレンデール城のクリスマスの薪』


2020年12月18日、ディズニーが送る映像サブスクリプション『Disney+』内で新たな映像作品が配信されました。
それが『アレンデール城のクリスマスの薪』

「アレンデール城」と言えば、映画『アナと雪の女王』に登場する架空の城。主人公アナと姉のエルサが住んでいる家でもあります。

ところで、『アナと雪の女王』と言えば、『Let it go ~ありのままで~』という名曲を携え異例の大ヒットを記録したディズニー作品。
今で言う『鬼滅の刃』みたいな現象が起こっていて「アナ雪見てないの!?遅れてるな〜笑」みたいな会話がいつでもどこでも聞こえてくる有様でした。
『アナと雪の女王』は社会現象を巻き起こした作品といっても過言ではありません。

売れた作品はとことん擦るのがディズニー・スタジオ。
『アナ雪』旋風が吹き荒れたのを良いことに、スタジオは『アナ雪』関連のアニメーション、イベント、その他グッズ等をポンポン量産していきます。
他のディズニー映画の同時上映で公開される短編アニメーションの枠を席巻し、“短編”アニメーションという名目でありながら約20分ちょいも時間を占める状況もありました。

最近(と言っても2019年11月)では実質上の『アナと雪の女王』の続編である『アナと雪の女王2』も公開されました。


…………おい。

2は作るな。

聞いてるか?ディズニー。
お前たちは『リトル・マーメイド』や『アラジン』、『ポカホンタス』で学ばなかったのか?

2は作ったら作品としての価値が死ぬ。

いいか?
何でも擦れば良いってもんじゃねぇんだ。

無印のまま終わっておけば、『アナと雪の女王』は“伝説”として残っていたハズなんだ。

2はいけない。 ダメなんだ。

短編アニメーションやアニメシリーズで留めておいてくれよ……頼むよ……。

(でも、『ファインディング・ニモ』の続編である『ファインディング・ドリー』や『ピーターパン』の続編である『ピーターパン2』、『シュガーラッシュ』の続編である『シュガーラッシュ:オンライン』は最高だった。ちゃんとやれる続編もあんだな。ごめんよ、偉そうなこと言って)(ディズニー「いいよ」)(俺「ありがとう……でもやっぱりアナ雪2は許せねーわ……」)


話が逸れました。

とにかく、アナ雪人気にあやかって、何でもかんでもアナ雪を乗っければいいと思ってるディズニー・スタジオ。
そして、今回Disney+に突如として現れた『アレンデール城のクリスマスの薪』。
何の前情報もなく目に飛び込んできたその作品は私の心を一種動揺させました。

(え?アナ雪新作?嘘……なんの情報もなかったのに?180分もある……。そんな……。3時間も何をやるの?180分の映画見たことないが?)

情報を仕入れられなかった悔しさと、作品の長さに狼狽えながら恐る恐る再生ボタンをクリック。


薪が、燃えとる。

暖炉で。

薪が。

180分間永遠に燃え続けとる。


やられた。

薪が燃え始めてから10分ぐらいしてそう思いました。
そうです、これは『アナ雪』の新作というより、『アナ雪』というコンテンツを活用したASMR作品だったのでした。


ASMRとは……

Autonomous Sensory Meridian Responseの略称であり、人が聴覚や視覚などの刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった反応・感覚。
正式、および一般的な日本語訳は今のところ存在しないが、直訳すると自律感覚絶頂反応(じりつかんかくぜっちょうはんのう)となる。

(Wikipedia ASMRより)


自律感覚絶頂反応ってなんかエロくね?
絶頂と反応ってだけでエロく感じる。中学生から脳の成長が止まってる。
助けてくれ。


ゴチャゴチャ御託を並べても分からないと思うので、大好きなASMR作品を張っておきます。
イヤホンをして聞いてみてください。

分かりますか?
もっと砕けた言い方をすると「音フェチ」の延長線上にあるのがASMRです。
私があげた動画のように耳かき音やタッピング音だけでなく、焚き火や海、雨の音など幅広い領域の“音”がASMRに分類されます。

完全にフェティシズムの世界にあるため、日本での普及はインターネットを通して行われました。
ブームは2015年辺りから始まり、YouTube上ではASMRのカリスマ的存在達が現れ始めました。
また、時にポルノ的な消費をされる文化でもあり、「耳舐め」や「バイノーラル音声」がそれらに値します。

そんなASMRですが最近はフェティズムの域を超え、メディアで紹介されたり、今回のように大手企業に商業的利用されたりするようになってきています。
最近はポケモン公式もYouTube上でASMR作品を公開してます。

あ〜ピカチ~😭😭😭プリチ~……😭😭💘


Netflixでも焚き火が燃え続けるだけの番組があったようです。(配信期間が過ぎたのか、今はもう無かった)



個人のフェティシズムの領域であったASMR(基音フェチ)が、現代ではネットの普及によりたくさんの人の目につく(いや、この場合耳につくなのか)ようになりました。
思ったよりもハマる人口が多く、商業的価値が高まります。

『アレンデール城のクリスマスの薪』もそういった背景から生まれた作品でしょう。

レビューですが、薪が180分間燃えるだけの映像でありながら、その音には癒しの効果が期待されます。
パキパキと音を立てて暖炉で燃える薪……。
バーチャルでありながら心地好さを提供してくれる焚き火。
文字を書いたり、本を読んだり、片付けをしたり。何かの作業中に流すにはうってつけです。

正直、これが『アナ雪』に出てくる「アレンデール城」の暖炉である必要があったのか定かではありません。商業的利用価値に相応しいASMRと、同様に価値を持っているアナ雪という2つの丁度いい組み合わせがあったからとりあえず名前だけでも使っとけ。みたいな感じでしょう。

初めてこれを聴きながら作業をしている際、

急にラリったおっさんの笑い声が耳元で聞こえ、思わず「ウワッ」と叫びイヤホンを外してしまいました。

恐る恐る画面を見てみると、オラフが左から右へ笑顔で暖炉の前を走り去っています。


ラリったおっさんじゃなくてオラフの笑い声だったようです。
良かった〜。

ちなみに、オラフは10分に一度通り過ぎます。
焚き火の音より5倍はでかい笑い声を発しながら急に来るので、初見だと大分ビビり散らかします。

申し訳程度のアナ雪要素辞めろ。


Disney+には、『ドリーとサンゴ礁の世界』というタイトルで、海や水の音を基調としたASMR作品も公開されています。
名前の通り、『ファインディング・ニモ』と『ファインディング・ドリー』の世界を落とし込んだ作品です。こちらは『アレンデール城のクリスマスの薪』よりも作品色が強く、多くのキャラクターが画面に現れてくれます。
まぁ、現れてくれるだけで特にそれ以外は何も無いんですが……。180分間同じ映像と音をループしてるだけだし……。

どちらも良いASMR作品ではあるのですが、私は焚き火の音より海とか水の音が好きなのでこっちの作品の方が気に入ってるかもしれません。

ところで、ディズニーさんはノーチラス号ASMRや海底2万マイルの音などの作品を作る気はありませんか??
深海の音や船の起動音、ネモ船長のオルガンを響かせて、まるで視聴者が海底2万マイル先へ冒険に出ているような気分にする。そんな映像作品を首を長くして待っております。
なんなら、東京ディズニーシーにある海底2万マイル100回乗船耐久動画とか出しませんか?
というか海底2万マイルに住まわせてください。ミステリアスアイランドに住みたいです。
よろしくお願いいたします。



終わり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?