熱曲しかない音楽素材サイト「煉獄庭園」について語らせろ。それと現状の報告もだ。[レビュー&現状まとめ]
こんにちは、Drvr(ドライバー)です。
魚の水を得たるが如く、いや"水の呼吸"を得たるが如く流行っている漫画/アニメ、鬼滅の刃。
同作品中のキャラである煉獄杏寿郎が、ちょっと前にTwitterのトレンド入りしたのをご存知ですか?
ちなみに鬼滅の刃は全く読んだ事は無いですし、煉獄杏寿郎というキャラも殆ど知りません。
じゃあ「なんで興味の無い作品のトレンド入りを覚えとんのじゃい」っていうと、僕が大好きなフリー音楽素材サイト、煉獄庭園と名前がたまたま似てるだけです。
でも、そんな4文字を想起する些細な瞬間すらかけがえのないものに感じてしまうほどこのサイトは素晴らしく、しかし死にかけているのです。
煉獄庭園とは
煉獄庭園とは、2000年から煉獄小僧氏を中心としたサークル団体で楽曲(著作権表記必須)を無料で配布しているフリー音楽素材サイト。
音楽素材サイトは、00年代の「青鬼」「洞窟物語」「魔女の家」「のびハザ」に代表されるフリーゲームブーム、そしてYoutubeやニコニコ動画の投稿主が使う動画内BGMなどネット上の創作活動に欠かせない存在であり、煉獄庭園はその氷山の一角として活動しています。
実際に煉獄庭園の楽曲が使われた例を挙げると、「ひぐらしのなく頃に(原作ver)」「ざくざくアクターズ」「東方の迷宮」などです。
特に「ひぐらしのなく頃に」は、今年アニメがリメイクされるほど長年人気がある有名作品ですね。
当時のフリーゲームの流行りは凄まじく、そのBGMとして煉獄庭園にお世話になったゲーム制作者も多いのではないでしょうか。
また、サイト内の楽曲はMP3形式が200曲以上、MIDI形式が1200曲以上公開されていて、ロック・ポップス・民族調・オーケストラ・ボカロなど、かなり広いジャンルが揃っています。
サークルメンバーは、主宰の煉獄小僧氏を始め、音楽系のクリエイターからWebデザイナー・イラストレーターまで計12名で構成されています。
このサイトの特徴は何と言っても、
煉獄の名を冠するに相応しい"アツさ"、王道の曲展開、そしてメロディアスかつハイクオリティな多数のBGM。
これに尽きます。
音楽素材の殆どは煉獄小僧氏が作曲しており、特にロック、ポップスのジャンルがとにかくアツい!
ただですね、それ故に紹介したい楽曲が多過ぎます。あんな曲もこんな曲も「これを聴け!!」と推したいのは山々ですが、全曲レビューするのは流石に控えます。
というわけで、煉獄庭園の特徴がすぐ分かる曲をある程度絞って紹介していきましょう。
焔-Homura-
焔-Homura-は「煉獄庭園」でGoogle検索をすると大体2番目か3番目に候補として「焔」が挙がるほど、かなり人気度が高い楽曲です。かの有名なフリーゲーム、ざくざくアクターズにも戦闘曲として使用されていますね。
一番の特徴は何と言ってもイントロから続く疾走感。スネアドラムで始まるノリノリな勢いが曲中で一切衰えずに駆け抜けます。
でも僕が敢えて推したいパートは35秒からのBメロです。突如挟まれた電子ピアノの音色が、ロック全開の曲調だからこそ際立っているのが良いんですよね。
…もしかしたら、バリキ・ジャンプをご存知のニンジャ=サンも聴き馴染みのあるロックかも。Wasshoi!
涙絆-Ruki-
涙絆-Ruki-のレビューを述べる前に、この楽曲が生まれた背景について。
この楽曲は、煉獄小僧氏が当時のフリー音楽素材サイト、通称音屋の皆さんに呼びかけて作った企画である音屋FES【絆-Kizuna-】での書き下ろし楽曲です。
そのサイト内にある作曲コメントを引用してみましょう。
・・・らしいです。
僕の解釈としてはエンディングテーマですね。
淡い音色のイントロから、力強いドラムと主旋律のギターのサビへ。ピアノで優しくメロディを繋ぎ、そしてサビへと帰ってくる。それを2ループ繰り返してフェードアウト。
RPGの主人公達がドラゴン退治の役目を果たして故郷の街に帰る途中、これまでの思い出を振り返りながら、訪れた永い平和を噛み締める。
そんなイメージが段々と創られてくるんですよね。
見えない何かに怯える夜 -2nd Edition-
見えない何かに怯える夜 -2nd Edition-は上述した「ひぐらしのなく頃に」で使用された楽曲です。「圭一、レナ、屋根上」このキーワードで当時の名シーンを思い出せる古参もいることでしょう。
チャームポイントは何と言っても重低音を鳴らすベースを基に鳴り響く高音の旋律。ひぐらしの屈指の名シーンで使われるだけあって、テンションの高まりは折り紙付きです。
極めつけはサビラストの転調。想像するに難くない展開ですが、言い換えれば王道そのもの。まさに実家のような安心感といっても過言じゃない。
聞こえていますか僕らの声が…
聞こえていますか僕らの声が… は悲痛なSOSにも見えるタイトルですが、中身は全然違います。
先程の3曲とは全く方向性が異なるポップスで、ベースの控えめさとドラムのノリノリ具合が心地良い。指で机の端を叩いてリズムと取りたくなってしまうはず。
田舎で夏休みを過ごす少年少女たちが自然の中で遊びに遊び、夕日が降りる帰り道で「いるかも分からない妖怪」に口ずさむような、そんなひと夏の思い出をイメージした楽曲なんじゃないかなと思います。
Intersection (原曲:Passing each other / mozell)
Intersectionは厳密には煉獄庭園の楽曲ではありません。
作曲者である煉獄小僧氏がコンピレーションアルバムもぜコンにて、mozell氏のPassing each otherをリミックスした楽曲です。因みに原曲はノスタルジックな曲調が非常に良いですよ。
Passing each other(すれ違い)がIntersection(交差点)に、こういうタイトル遊びもいいですね。
紹介する前に、ちょっとこの曲を聴いてから。
薄情連鎖
薄情連鎖はもぜコンと同時期に発表された楽曲です。
さてどうでしょう。多分こんな感想を持ったはず。
「あれ…薄情連鎖とIntersectionって曲展開似てない?」
はい、びっくりする位似ています。
薄情連鎖はギターの主張がかなり強く、Intersectionは音色のバランスが程よい。
共通項として、AメロBメロサビのループは一度しかない。
イントロでじっくり高めつつ、1回目のサビで一旦熱を"吐き出す"。そしてAメロBメロで順調に曲展開を運んでいき、2回目のサビで一気にカタルシスを得る。
アウトロのギターの残響が余韻を存分に出し、エモさの塊を残して終わっていく。
どちらも2分強と短めながらも、インパクトはトップクラスの楽曲です。
実況動画を真似る楽しみ
さて、本記事の趣旨からはちょっとズレますが僕がいつも考えていることを述べます。
僕はゲーム実況動画が好きです。
ゲーム単体の面白さだけじゃなく、実況者の演出と視聴者のコメントが混ざってこそ1つの作品になっているのがめっちゃ面白い。ニコニコ動画はその最たる例です。秀逸なコメントに何度笑わされた事か。
それで自身でも多少なりとも真似事をしようとするんですが、トークセンスも無ければ編集スキルも無く、知名度も0です。
そこで思いついたのが「実況動画で使われたBGMを流しながらゲームを楽しもう!」という方法。
実はこれ、とんでもなく楽しいんですよ。
僕はリターン氏の「第三次絶望スカイブロック」という実況動画シリーズを見て、当時BGMに使われていた煉獄庭園に出会いました。
動画内では息を吸うように人外的なマイクラのプレイングが披露され、「こんなプレイが出来たらいいな」とBGMを調べて流しながらマイクラをやったのが全ての始まりでした。
手軽に好きな実況動画の雰囲気を楽しみつつ、BGMに対するイメージが段々創られていく。例えば「焔-Homura-」をMinecraftの廃坑ダンジョン攻略中に流すと、「敵MOBをひたすら倒す処刑用BGM」なんてイメージが出来ます。
体験を基に一つひとつの曲に想像を膨らますのって、一種の創作活動でワクワクするんです。
これがフリー音楽素材だと、1つの曲に多くの人が「こんな場面で使えるよ!」と使用例を挙げていて、そこからイメージを新しく創ることが出来ます。
1曲にひとつのイメージじゃない。誰でも無料に使えるからこそ、幅が広がりイメージに多様性が出来る。
フリー音楽素材の強みはここにあります。
只の気まぐれか、又は寿命か
さて、ここまで長々と語っても百聞は一見に如かず。他にもどんな曲があるのか、ちょっとサイトを覗いてみましょう。
https://www.rengoku-teien.com/
所謂、ドメイン更新忘れです。
一言で言うと、管理者がサイトの運営を怠ったため閲覧出来ないという状態です。
まだアーカイブは残っているので、辛うじて閲覧出来る状態ではありますが。
http://web.archive.org/web/20190614071228/http://www.rengoku-teien.com/index.html
管理者はもちろん煉獄小僧氏なのですが、どうにもここ数年は多忙によりサイトの更新が6年ほどありません。
そのためドメイン更新忘れが毎年恒例となり、その度に復活していたのですが、去年の10月にドメイン更新忘れの状態になってから変化はなし。
サークルメンバーの方が煉獄小僧氏に確認をしたそうですが、進展は殆ど見られません。
冒頭で「死にかけている」と表現したのはこういう現状があるからです。
ですが、完全に死んでしまった訳ではありません。
もしかしたら、いつの日かこっそり更新されているかもしれない。
もしかしたら、コンピレーションアルバムにひょっこり参加しているのかもしれない。
もしかしたら、あるプロジェクトのBGMを担当してお披露目になる日が来るかもしれない。
このまま閉鎖になる事も、もちろんあり得ます。
でも僕は、このまま煉獄庭園がネット上から消えてしまい誰からも忘れ去られる事だけはどうしても嫌なんです。
元々この記事を書いた理由は、「煉獄庭園って神曲たくさんあるんだぜ!」と推すためでもありますが、一番は「煉獄庭園を知って欲しい、覚えていて欲しい」という願いからでした。
インターネットを触りたての時期に出会い、青春を共に過ごした相棒とも言える曲たちがこのまま消えていくのは悔しさがあります。
煉獄庭園が出来た00年代と比べ、今はSNS上での拡散が格段に多く行われています。
この記事、いや心の拠り所を失くしつつあるオタクの文字を呼んでくれた方や、「俺も煉獄庭園にお世話になったんだ」という同志には、是非ともTwitterで共有ツイートとか「煉獄庭園のこの曲いいな〜!」とか呟いてくれるとありがたいです。
その一声が煉獄庭園のドメイン更新へと繋がる事を信じて、これにて締めようと思います。
(2020/10/31) 追記
予想以上に多くの方に読んで頂いたため、調子に乗ってさらに7曲紹介します。もしかしたらまた追加するかも。
赤い鴉III-セピアカラーの僕の今-
ざくざくアクターズやもんむす・くえすと!等、著名なフリーゲームで知っている方もいるのではないでしょうか。赤い鴉III-セピアカラーの僕の今-は上記のいずれも強敵との戦闘BGMで使用される人気度の高い曲です。
静かで綺麗なイントロから加速していくロックは心を躍らせる"何か"がある、そう思わずにはいられない程のメロディアスさが感じられます。
特にシビれるのは2番のサビ前。1番のサビ前とは比較にならない程に一気にサビへとメロディを加速させるのがたまらない。そのままサビからイントロを繰り返すのも心に染み渡るものです。
また、この曲はlitchh氏により8bitアレンジされています。
他にも煉獄庭園の曲をいくつか8bitアレンジしており、その中から一部を挙げると…
DEATH TONE、2/14のサヨナラを、神風-Kamikaze-、そして焔-Homura-。どれも名曲なので是非ともご試聴あれ。
Noir Memory
Noir Memoryは煉獄庭園の中でいっちばん好きな曲です。
何と言ってもピアノとロックの組み合わせが良い!焔-Homura-や薄情連鎖のようにハイテンポで攻めるメロディではなく、涙絆-Ruki-のスローテンポでじわじわ聴かせるメロディでもない。
ですが、足でビートを刻むのが心地良いくらいのテンポで、主旋律のピアノが哀愁と陽気さを両立させるメロディが流れるのが感情に響くんですよね。ベースとドラムが高低音のギャップを支えているのも最高に良い。
このメロディって、なんだか程よいノスタルジックでエンディングテーマを想起させるんです。RPGのエンディングに使ってみたい。
SIXTH SENSE
SIXTH SENSEは「聞こえていますか僕らの声が…」と同様にポップス枠の曲です。
かなーり抽象的な表現ですが、煉獄庭園の中で最も2000年代を象徴するようなサウンドをしています。特にAメロの裏で奏でている独特なテンポがそれを強調していますね。
また、特段目立つ要素ではないですが個人的に好きな所はサビ前でワンテンポ溜める所です。あれだけでサビの勢いが強く聴こえるのでめっちゃ好き。
Z•E•R•O
Z•E•R•Oは見えない何かに怯える夜 -2nd Edition-と同様に「ひぐらしのなく頃に」で使用された曲です。
罪滅し編のエンディングを担当したこの曲は、とにかく煉獄小僧氏の代名詞と言わんばかりのメロディアスさが光ります。イントロからAメロまでの、エンディングらしくギターソロから楽器が増えていく展開に始まり、流れるようにサビまで繋げていくメロディはもう煉獄庭園らしさ全開。
実は、サークルメンバーのノーザン・キラー氏によりZ・E・R・O-RK.ver-としてアレンジされたバージョンもあります。こちらはさらにギターの味が増し増しです。
Ice Rain
Ice Rainは名曲が犇めくロック調のBGMの中でも人気度が高く、煉獄庭園で好きな曲を挙げるスレが建てば必ず名前が書かれる程。
特徴的なのが鉄琴のように淡い音色がロックに織り交ぜられている所です。Noir Memoryと同様に高低音のギャップが生まれ、どこからかしみじみと感じさせるAメロBメロディから、ドラムを起点に盛り上がるサビがこの曲の美しさと激しさを物語っています。
そしてこの曲もイントロが抜群に良い。ドラムが完璧なスタートダッシュを決めて盛り上げているのが静かな紅い鴉とはまた異なる感触があって好きです。
桜華・白章-Ouka.Hakushou-
恐らく煉獄庭園の中で最もラスボスとの戦闘に向いている曲であろう、桜華・白章-Ouka.Hakushou-です。
一番魅力的なのが間奏です。曲全体のハイテンポなメロディから繰り出されるサビの盛り上がりに劣らず、それどころかさらに加速して次のサビへと繋げるのが非常に良い。
ラスボスとの戦闘で生まれる緊迫感や威圧感といった怖さより、手に汗握る激戦の高揚感をイメージさせるようなメロディが強敵との戦闘BGMにマッチしているんですよね。
Then the sunset (原曲:煙突はうす / mozell)
Then the sunsetはIntersectionと同様にコンピレーションアルバム内の曲で、煉獄小僧氏がもぜコン2にてmozell氏の煙突はうすをリミックスした楽曲です。
原曲の煙突はうすは優しいファンタジーな音色が特徴的なのでこちらもどうぞ。
Then the sunsetの良い所は穏やかなメロディとドラムの組み合わせ。煉獄小僧氏の特徴が盛りだくさんなので、これまで紹介してきた曲を聴いた上でこの曲を聴くと「サウンドが煉獄庭園じゃん!」と気付けるのではないでしょうか。
それに2分あたりから流れるフェードアウト、そして汽笛からサビへと繋げるのが如何にも曲中でストーリーを作っているようで想像がかき立てられます。
フェードアウトからの汽笛で、船上にいる主人公から見える景色が一気に開けていく。新しい世界への汽笛が鳴るような、そんな世界観が想像出来たり出来なかったり。
最後に一言。
ちょっとした思いつきて書いた記事が予想以上に多くの方に読んで頂いたり、さらにTwitterで本当に宣伝もして頂いて凄く有り難いです。
いつ煉獄庭園が復旧するかは分かりませんが、その日が来ることに少しばかり思いを馳せる一時になれば幸いです。
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