言葉の掃き溜め【pelluicule】

気づけば周りはみんな結婚
中には初めての子育てに奮闘
天国のお前と俺だけはずっと
昔と変わってないはずだろう
独り身のままなら結婚しよう
とか約束した周りのみんなも
大切な人と出会い結婚したんだ
俺は約束を信じていたのにな
「絶対に結婚しない」と誓った
あいつも時が経てば違った
今では明るく頼れるパパ
横にはマドンナだったママ
みんなあの日から大人になって
覚悟や責任ってものを担ってる
俺は未だに相も変わらず
いつも愛は空回り

薄氷のような薄皮一枚の記憶
翳せば光が差すような儚さ
そんな幾重ものpelluiculeが
紡いで織り成す一つの身体

周りに追いつく事を諦め
必死にこの命を繋ぐ明日へ
生きる事は手放さない
それだけは変わらない
お前が見れなかった景色や
あの日に止まった時間や歴史
俺は繋げる今日そして明日へ
これだけはマジだぜ 天から見てくれ
みてくればかりは「マジダセエ」かもね
これって確かお前の口癖
冷たい石の下だけじゃない
俺の心の中にも確かに居る
もしもあの時って過去の分岐点に
戻れるなら真っ先にあの日に戻る
国際電話でも迷わず掛けてやる
「心臓にだけは気をつけろよ」
「今日はやめとけ激しい運動」
「頑張りすぎだから休息を」
今なら沢山の言葉が浮かぶのに
あの日の俺はただの普段通り
薄氷のように薄皮一枚の記憶
お前との記録をしたためている所
そんな幾重ものpelluiculeが
剥ける度になっていく大人
まるで蛹から蝶のように
それなら大人になんてならないでいい

薄氷のような薄皮一枚の記憶
翳せば光が差すような儚さ
そんな幾重ものpelluiculeが
紡いで織り成す一つの身体

久しぶりに会ったあいつも
今では立派な会社員らしい
夢を語り合った面影は
もうすっかり見る影もない
「大人になんてならねえ」って
どの口が言ったんだよと
小突いたら苦笑いではぐらかした
上げた前髪にネクタイスーツ姿で
きっと夢という名のpelluiculeが
破れてあいつも大人になった
あの日から随分と遠くへ来た
得たものよりも失ったもの
時が経つほどに逆転する
始まりは生命で終わりも生命
与えられ 得てきて 重なったpelluicule
薄氷のように薄皮一枚の記憶
全てが剥けてまたゼロになる
その時にお前に会いに行く

薄氷のような薄皮一枚の記憶
翳せば光が差すような儚さ
そんな幾重ものpelluiculeが
紡いで織り成す一つの身体

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