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個性とオリジナリティー 後編

ドラムチューナーですがチューニングの方法は書いておりません。でもみんなあまり口に出して言わないような事を書いたつもりでもおります。ご了承ください。


 前回、楽器から最大限に鳴りを引き出す方法を例にとって【個性】を考えてみました。
 「楽器が良く響くように準備できていれば、おのずと個性は表れる。あなたのドラムも必ず持っています。」といったことを書いてみました。

 そして、この楽器を、こうセッテイングして、こういう風に使いたいという部分では・・・「そこからはオリジナリティの話」とも書きました。

 「いやいや、オリジナリティを持ち出すまでもなく、だれかがそう考え、そういう音を作るのなら、すでにその人だけのオリジナルの音じゃないか?」

 そういったご指摘もあるでしょう。しかし、現実的に音のオリジナリティはそうそう誰にでも感じるものではありませんし、表現を追求する分野においては、やっていけるか否かの明暗を分けるところでもあります。
 今回はその【オリジナリティ】に関する考察です。

 質問してもよかですか?

 オリジナリティがある!と思うのはどんな音ですか?

 いきなりだと難しい?ではオリジナリティを感じない音は?

 これはたぶん・・・ありふれた音なんだろうと思います。逆に言うと、ありふれていない音=オリジナリティがある音、となりますが、それだけではなんだかちょっと違和感があります。奇抜であれば良いってことになってしまう。

 「ありふれてなくて、でも共感できる音」。もしくは「他にはない感じだけども、その音楽にすごくマッチしてると思える音」というのはどうでしょうか。

 あなたを主体にすると「あなたしか持ち得ないもので、他の人にも伝わる音」ということになります。


 オリジナリティ溢れるプレイや音に出会うと嬉しくなったり、驚いたり、憧れたりします。

 表現が伝わり感動する。ここがポイントだと思います。

 だから「自分がやれば自分のオリジナルじゃん!(けっこう多い)」というようなお気楽な意見には?が浮かんでしまうのです。
 オリジナリティは(あなたの独自性は)観た人、聴いた人が決めるものであって、自分で「おれにはある!」って言っても仕方ないでしょ?って思います。

 ではどうやったら、そのオリジナリティを手に入れられるんでしょうか?

 こんな経験ありませんか?

 ちょっと口やかましい先輩やオーディションの審査員に、オリジナリティがない!とか言われてへこんでしまう。

 オリジナリティが大切、オリジナリティを出さなければならない。。。色々と目新しいことをやっては見るが伝わらない。どうすればいいの??

 結論から言うとオリジナリティは考えて出てくるものではないと思います。
 ふりかけみたいにパッと出してササッとかけて「はい、オリジナリティです」というわけにはいかない。

 滲み出てくるようなものだと思うのです。

 今まで、何を、だれと、どこで聴き、演奏してきたか、といったような音楽経験そのものが問われます。
 オリジナリティを出す、といった作為的な考え方はこの〈滲み出てくるもの〉を邪魔するのです。

 憧れのあのアーティストは、オリジナリティを出してやるぞ~と考えて演奏してはいない。
 自分だったらこうやる、この曲はこう演奏しよう・・・と普通なんです。

 ただ注目すべきは、彼の普通のつもりのモノが他の多くの人には、自分にはない、なにか特別なモノに感じる。

 この彼と自分のズレの部分こそが実はオリジナリティの正体です。


では具体的には?

 好奇心を持って模索し続けること。そうやって手に入れた音をできるだけたくさんの場で磨くこと。

 一言でいうと音楽人生の履歴書を充実させる事。いろんな音を聴いて、たくさんの楽器に触れて、いろんな人たちと交流すること。

 余談ですが・・・僕はワークショップやレッスンを開催しています。ここに集う生徒さんの中で一年で一番伸びる人はどんな人だと思いますか?

 これは、その年いちばん経験した人です。

 そして素直に受け入れる人。いろんなやり方や考えをいったん受け入れて、試してみる、そして感を働かせる人なんです。

 具体的な日々の鍛練としては、模倣することから始まります。

 えっ・・・真似?そう、真似です。

 逆説的ですが、模倣の先に、オリジナリティは存在すると思います。僕も真似しかやってこなかったし、いまでも実はそうです。
 

 とにかく、たくさん模倣すること。そうするとセッティングやチューニングの理解がどんどん深まります。
自分が興味を持った音を忖度なく真似してみる。そこからスタートして、それが次第に体系化してくると、思ったことをある程度表現できるようになる。

 先人の音楽への尊敬も生まれますし、良質な音づくりの勉強にもなるのです。音の解釈が深まり、自分の音にインパクトが出てきます。

 さらに興味を持って模倣し何回も何回もチャレンジして磨いていく。そうすると今度は模倣できないところ、限界を感じ始める。どうしても埋まらない溝。

 それは先人の偉大さであり、人間性や誠実さでもあります。その時代を響かせるような音は、その時代を一所懸命に生きた人にしか出せない時代の共鳴そのもの。

 そこは今度はあなたが、自分の何かで埋めなければならないところ。魂と言われる部分の勝負になっていくんだと思います。

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