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『週刊DiGG』#17 -最新HIPHOP 7曲レビュー紹介('20/12/12〜12/18)-

どうも。“今年のベストMV”なんて記事をアップしたいけど、毎週『週刊DiGG』を書くので手一杯の ドラム師匠 です。(#やれんのか俺!)

さて今週の『週刊DiGG』は、12/12〜12/18に公開された7曲を厳選し、レビューをつけて紹介します。さらに今回は、ラッパー NAITE さんから曲にまつわるコメントをもらいました。曲を奥深く味わえる内容となっています。


▶︎ 最新のHIPHOPはどうなっているの?
▶︎ てっ取り早くカッコいい曲を教えて!


なんて方にオススメの記事です。一緒に音の旅に出かけましょう。


※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse
とHIPHOP用語で表記しています。
※ アーティスト名に下線がある場合、TwitterまたはInstagramとリンクしています。

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|D96 / HASHIRIDAS (prod. by Cho5 from RFS)|

2020/12/12 公開

東京都に拠点を置き、MUSIC、CAMERA、FASHION、CARS、MOTORCYCLESなど様々なカルチャーを共通点として人が集まってできたクリエイティブグループ・RAVE NFAMILY STUDIO

そのグループの中心人物が、ラッパーD96 だ。

前MV「100 feat.KANT」は、疾走感あるメロコアサウンドであった。エレキギターを弾いていた事からも分かるように、8月16日にリリースされた最新EP『SHADOW』では、ロックの影響を感じるメロディの曲が並んでいる。

この曲は、前作とうって変わり、ゆったりとしたギターのアルペジオから始まり、まばゆい光を感じさせる。全編にわたり幾重にも重ねられたコーラスワークが素晴らしい。後半にはそこにオートチューンまでかけており、様々な感情をもち合わせた内なる声が聴こえているかのよう。

HOOKの「走り出す」と共に流れくる伸びやかなコーラスが、ポジティブな思いをどこまでも運んでくれる。

「映像と音と歌詞は 君を照らすライト
 世界に平和と愛を 世界に平和と愛を」



▼さらに深堀り

この作品の素晴らしさは音楽だけでなく、ドローンを駆使した映像も目を見張る。Uchino Keita による作品で、カラフルなのにサビれたスライダー、砂が入った廃墟のプール、通行止めとなった道路など、他にないロケーションが印象的。

特に、わずか数秒音が止まる箇所で映し出される断絶された橋のシーンで、ハッと息を飲む。これを挟むことで、後にくる砂浜を走るシーンが余計に開放感に満ちている。

妥協を許さない演出に、音楽家と映像作家のお互いのリスペクトを感じる。


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|SOUTHCLOUD /Over run(Prod.illrain)|

2020/12/12 公開

茨城県土浦市を中心に活動する7MC(Lil CottyKidney FujiSwetyS9UALLRICHゆうけんYoung lit GS)& 1DJ(Liberty)の8人で構成された若手クルーSOUTHCLOUD

残念ながらクルーとしての活動は2020年をもって一時活動休止になる。しかし、各々がソロ活動に専念するのが頷けるほど、この曲でVerseを蹴る3MCの個性が光っている。

気勢のあるハスキーボイスが特徴的なVerse1の Lil Cotty 。甘いマスクでスムースに言葉を並べ立てるVerse2の Kidney Fuji 。歌心あるフローで曲にアクセントをつけるVerse3の Swety 。BADHOPがそうであるように、クルーのメンバー同士がライバルであり、互いに刺激してスキルを磨きあっていたことが伺える。

楽曲をプロデュースしたのは、新世代ラッパーを数多く客演に迎えた1stアルバム「ill world」を発表した注目のビートメーカー illrain 。ギリギリの高音でベルを鳴らし続けるサウンドは、彼らのギラついた野心と共鳴している。

来年からソロ名義で、彼らの名前を頻繁に目にするであろう。今からチェックしておいて間違いはない。

「空が暗いうちに仲間たちと騒ぎたい」


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|CHAO-BASS / DAY'8 (Prod.JASON X)|

2020/12/13 公開

多国籍なMC達で構成された IIKINGZ 。“大阪Drill”を名乗るだけあって、Drillサウンドをいち早く取り入れ、危険な香りをプンプンと漂わせていた。

そのメンバーである CHAO-BASS が、12月13日に1stソロアルバムをリリースする。 アルバム収録曲である前MV「MAWASE」では、裏街道から生み出された低温のグルーヴが時空を歪ませ、緊張感ある作品に仕上がっていた。

しかし、この曲では意外にもピアノループが悲しげに、そして懐かしく響く。

「忘れるはずない日も  思い出せないし」

時と共に変化する街の情景。見かけなくなったあの人。常に動き続けているからそこ、古いものから風化していくあの日の記憶。

ラッパーとしての生き様を「クソで最高」と称え、曲を作ることで未来を塗り変えていく。振り返りたい気持ちに別れを告げ、前に進む姿勢がいい。今ある確かなものとして、IIKINGZのメンバーや、地元MC達が出演しているのが意味深い。



▼さらに深掘り

大阪のHIPHOPシーンについて克明に書かれた濃度120%の良記事。CHAO-BASSも紹介されており、Trap/Drill〜Boom Bap〜Reggaeといった現在進行形のHIPHOPとルーツに横串をさす貴重な存在として論じられている。

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|EDWARD(我) / Loser|

2020/12/16 公開

京都に生まれ、幼い頃よりクラシックピアノとダンスを習い、グランジやメロコアを聴いて育った EDWARD(我)  (読み方:エドワード)。高校生で音楽理論を学んでいた時期にHIPHOPと出会い、女性プレイヤーが稀有なTrapシーンで頭角を表すようになる。

様々なバックグランドがあるため、彼女の音楽性は多彩。Yokai Jaki との客演曲「Revenge」ではハードコアな絶叫系Trapでラップをし、TAHITIとの客演曲「omoi」ではロックなギターに乗せて伸びやかな歌声と、心に引っかかる節回しを披露している。

2020年、yng muto nyng との共作EP『ウサギ』を経て、12月23日にソロ名義での7曲入り1st EP『202020』のリリースする。EPからの先行発売となったこの曲「 Loser」は、誰からも理解されない悲しみと、恐らく成長期から抱え続けてきたのであろう孤独さを歌う。「僕」という一人称で歌っているのも、主人公を別人格とすることで自分を客観視し、ギリギリのバランスを保っているのではないかと深読みしてしまう。

Trap経由での低音を意識したラップと、ファルセットを効かせたメロディアスな歌声を聴くことができ、魅力が詰まった挨拶代わりの作品となっている。

彼女の満たされぬ思いを抱きしめてあげれるのは、リスナーの声援だけなのかもしれない。同じ痛みを抱えた人に届いて欲しい。

「何もきこえない 時が進むスピード
 ずれてる何もかも 歪む視界
 僕だけの世界 誰も邪魔させない」



▼EDWARD(我)の情報が少なかったので、レビューを書くにあたり参考にした記事。

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|NAITE / あっちいけ!!!!!!!!! feat. なみちえ (Prod. TRIGGA BEATZ)|

2020/12/16 公開

HIPHOPの挑発的な曲といえば、「マジでお前誰?」のフレーズでお馴染み「Awich / WHORU? feat. ANARCHY」を思い出す。同様に「あっちいけ!!!!!!!!!」「は?いつまで足引っ張っるの?」と怒りを露わにするナンバー。

歌っているのは、 民謡、歌謡曲、R&B、ボカロなど様々なジャンルの音楽を聴いて育ったというだけあって、HIPHOPにとらわれないメロディメイクを得意とする福島出身のラッパー NAITE (ナイト)。

客演参加しているのは、東京藝術大学を首席で卒業した なみちえ 。 Zoomgals のメンバーであり、CMにも起用され、わずか15秒でラップのカッコよさを世に知らしめるなど注目を集めるフィメールラッパーだ。

激しい口調で挑発する曲だと思われたが、曲の背景をきくと趣が変わってくる。亡くなってしまったNAITEの祖母が、“産土様(うぶすなさま)”という土地の守神の前で、「邪魔者はあっちいけ!!!!!!!!」と唱えたことに由来するという。(※MVのロケ地も祖母の家の庭)

後方で流れる尺八の音色、どことなく民謡めいたフロー、「諸行無常無双」と言った古風な言い回しと掛け声から、「あっちいけ」には邪気を追いはらう意味も込められている事がわかる。

聴き込むほどに、意味合いが変わってきて奥深い。


▼NAITEからのコメント

うぶすな様という、その土地の守神がばあちゃん家の庭にいます。
昔からずっとその土地を守っていて、うぶすな様の周りには白蛇が出ると噂されてました。

小さい頃、毎日その周りで遊んでまして、その頃に養われた感覚がいまの自分を構成していると思っています。

ファッションで音楽をやる人や、"バズる" ことのみを目標としてる人も沢山いる中、"本物" とはなにか!

"本質をダイレクトに伝えるアーティストであり続けたい"
という思いから、この楽曲は生まれました。

東京芸術大学を首席で卒業している なみちえ とだからこそ、
"fuck up 邪魔だアートもどき"
という自分のバースが輝くと思いました。

その全てを構築したのは、紛れもなくおばあちゃんのおかげでして、
その地でMVを撮れたこと、
そして、この楽曲が生まれたことは、とても意味のあることだと感じています。


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|OLDCHILD / A.T.K.M(all time killa motherfucka) feat. Maligno Blain|

2020/12/17 公開

新しいLabel "ROOM SERVICE CREATIVE"を立ち上げ、その第1弾リリースとなる1stアルバム『CHILD PLAY』をリリースするビートメーカー OLDCHILD 

YOUBOB 名義でアニメーション作家しての顔や、デザイナーとしての顔を持つ大阪のアーティストである。

アルバムに3曲フィーチャーされ、OLDCHILDから信頼されているラッパーMaligno Blain 。流れるようなスムースなフローが心地いい。さらに隠し持ったsmellの如く、ごくわずかに声を左右に揺らすエフェクトをかけており、ラップに色気が宿っている。

BoomBapで色気があるラッパーといえば、硬派でゴリゴリの仙人掌と、メロウかつ病みと温もりをあわせ持つ唾奇が思いつくが、Maligno Blainは2人の中間に位置する存在になりそう。今後メディアへの露出が増える予感がする。


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|WELL-DONE / OSNG (Prod. Gerardparman) |

2020/12/18 公開

ー コンプレックスを最大の武器に ー

MC、DJ、DANCER、WRITERなど様々なクリエイター集う大阪の大所帯クルー Tha Jointz 。その末っ子的存在で、わんぱく坊主がそのまま成長したようなキャラ立ちNo.1のWELL-DONE 

タイトルの「OSNG」は“オーバーサイズナイスガイ”の略で、自分で言い切る面白さがある。肉付きのよい体型に比例した迫力あるラップは、全面に押し出された声がスピーカーからあふれてくる。

「見た目と裏腹 スムースなラップは裏技
 噂がデカくするぜ 俺はもっとまだまだ」

「プッシュ、プッシュ」と体型から連想するパブリックイメージを、自分がさらに後押しする。コンプレックスをさらけ出した無双感があり、人々に愛されるキャラクター作りに成功している。

MVではTha Jointzのメンバーが、カロリー高めのピザをバクバク食べることで援護射撃。丸みを帯びた曲線が可愛いらしく思えたら、あなたはすでにWELL-DONEのトリコ。



▼さらに深掘り

MV「OSNG」にも出演している JASS がアルバム『獅子奮迅』をリリースした際、海外メディアのインタビューをWELL-DONEが同時通訳した動画。常に半笑いなWELL-DONEの悪ノリが面白すぎる。

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さらにHIPHOPを知りたい人へ

『週刊DiGG』では、これからもHIPHOPの魅力を紹介していきます。良かったら高評価とフォローをお願いします。では来週もお会いしましょう!またね🤚


▼著者が毎月2回作成しているプレイリスト。'20/12/1〜12/15までに公開されたMVの中から至極の30曲をセレクトしました。今回紹介しきれなかった曲があるので、ぜひクリックしてみて下さい。


HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。