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HIPHOPのMV 16曲をピックアップ(2022年2月公開作品)

Twitterで毎日レビューを書き続け、4年目に突入したドラム師匠です。今回は、2022年2月に公開されたMV 16曲をピックアップしました。

  • 最新のHIP HOPってどんな感じ?

  • 曲にまつわるストーリーを知りたい

なんて人にオススメの記事です。
イケてる曲ばかりと自信をもってオススメします!

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GOTU / ASAP RUF Feat. anddy toy store(Prod. Kojoe)

2022/02/01 公開

▌雅楽にも通じる緊迫感


ラッパー Kojoe が大阪にJ.Studioを設立したことで、リリース頻度が上がり、作品の質も上がるという好循環が起きている総勢18名の大所帯HIPHOPクルー THA JOINTZ 。そのメンバーである GOTU が、2021年9月にリリースしたアルバム『Osaka Trash』からの1曲をMV化した作品。

歌のピッチを落とした不穏なループ。それを打ち破るGOTUのラップに、空気が一気に張り詰める。小節ごとに急カーブで語尾を上げるさまは、能の雅楽にも通じる緊迫感がある。英語を多用することで増していくスピード感。

転調するかの如く、Verseパートでダーティーに声色を変えるギャップもいい。


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itachi / HighStandard(Prod. ermashov)

2022/02/02 公開

▌次世代のスターの予感


HIPHOPでは珍しいTB303を用いた高音ACIDサウンド。画面いっぱいに幼虫がうごめくような気忙しいウネウネ感。

ラップするのは、2001年生まれ神奈川出身の沖縄育ちのラッパー itachi 。タッタカタッタと馬が駆けるような早口で行う挑発的なラップ。曲中で様々な声の表情を見せるのはLEXの影響か?聴かせたいポイントで、Trap metal系のシャウトを入れる迫力がある。

別の曲ではクリーミーな歌声を聴かせる表現の多彩さ。丹精な顔立ちに、次世代のスターの予感がする。


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OVER KILL (FUJI TRILL & KNUX) / HAHAHAHA Feat. JINMENUSAGI & SANTAWORLDVIEW

2022/02/01 公開

▌アンバランスな確信犯


FUJI TRILL と KNUX のプロデューサーユニット・OVER KILL 。江ノ島のクラブで出会ったという2人は、トゲトゲしいハードコアサウンドを得意としている。新曲「HAHAHAHA」はタイトル通り悪意に満ちた笑い声から始まる。

ラップが始まったら笑い声をフェイドアウトさせ、ラップを聴かせようとしそうなものだが、鳴り止まずにループし続ける。不快さと悪意をまき散らすアンバランスさがOVER KILLらしい。

笑い声の中を、早口で駆け抜ける2人のラップは痛快。韻を踏みながら言葉遊びをする JINMENUSAGI 、17才の時に憧れだったJINMENUSAGIとの共演を喜びつつ、ラップスキルでは引けを取らない SANTAWORLDVIEW 。

あれほど笑い声が気になっていたのに、ラップに気を取られて、いつの間にか気にならなくなっているはず。それほど突き抜けてる。


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1017 Muney / ときどきFly(Prod. Pasta & V4Vanquish)

2022/02/04 公開

▌パーカッシブな小気味よさ


仙台を拠点に活動する 1017 Muney 。キレのあるラップで、「ときどきfly いつもじゃない」とリフレイン。それはパーカッションのような小気味よさがあり、つかみそうでつかめないリリックが、煙に巻かれる感じでいい。

祭り囃子のようなトラックは、大太鼓に低音を、鳴り物に高音を任せ、 1017 Muneyは中音パートを担うなど実に機能的。この曲のREMIXが3種類作られたのも頷ける。


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BNKR街道(超一 & JUNKY) / 超いい感じ(Beats by ジャッキーゲン & JASON X)

2022/02/06 公開

▌カッコよくて、可笑しくて、


2019年、楽曲「ナイナイシット」では"ナイもんばっかで怖いもんはねー"と歌っていた2MCが、この曲では「超いい感じ」と歌っている。この2年数ヶ月の間に何があったのか?

それは彼らのクルー BNKR街道 が起動に乗り始めたことを意味する。とにかくリリース量が凄く、2020年〜2021年だけで5枚のアルバムをリリースしている。

さらに今回、4thアルバム『力の覚醒』のレコーディングを終わらせていた2022年の正月。遊びの延長で楽曲制作を始めたら、あれよあれよと曲が溜まり勢いのまま別アルバム『四面奇歌 -肆.貮零貮弍- 死汁感染、ぼんくら珍道中』を完成させてしまったというモンスターっぷり。

そんなクルーの好調っぷりを象徴するのがこの曲だ。モーニング娘の名フレーズ「超超超いい感じ」をサンプリングしつつ、アーティスト名義を"カムナビMC"から"超一"に変えた自己紹介がわりの曲となっている。

2人のカッコよさを凌駕するユーモアセンスは、可笑しいを通り越して可愛らしい。Verseパートを聴くと"乗ってるね〜♪ ご機嫌だね〜♪"って思うんだけど、HOOKになるとこう突っ込んでしまうはず。

「体調悪いんかーい!!!!!」


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BUDWARPS feat. SHU-Z / √134(Prod. TreeQube)

2022/02/06 公開

▌広大な空間デザイン


湘南の中部に位置する茅ヶ崎。そこを拠点に神奈川ベースのアーティストをフックアップするレーベル・レコードの館

2017年、そこから27曲入りのビートアルバムをリリースしたKwM(beatmaker)とTreeQube(beatmaker)によるユニット・BUDWARPS 。

今回、5年ぶりのニューアルバム『a moment of the trip』が完成させ、アルバムに先駆けたリード曲「 √134」のMVが公開された。

この曲では、KwMがラッパーとして参加しており、レーベルメイトでもあるSHU-Z (from 潜伏期間)をフィーチャーしている。

シンセの厚みのある浮遊感サウンドが、上手くいかないことすら包み込んでくれる。広大な空間デザインは、地平線を眺めることで自然に生まれたものだろう。海辺の町が育んだHIPHOP。


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CHICO CARLITO / 23時30分(Prod. ELIONE)

2022/02/09 公開

▌ここに復活を宣言


今のHIPHOPシーンは、MVが年間5500本以上アップされるほどプレイヤーが増え、曲が量産されてる。その中で、リリースがないと存在が忘れられていくのは当然とはいえ、残酷な事実だ。

かつてテレビ朝日『フリースタイルダンジョン』の初代モンスターとして人気を博した CHICO CARLITO といえども例外ではない。

2016年にアルバム『Carlito's Way』、2017年にEP『Septile1 - 南方作戦』とまとまったリリースがあったものの、その後はいくつかの客演にとどまり、本人名義のでのリリースがなかった。

その理由について、プレスリリースにはこのようなコメントが寄せられていた。

前回のアルバムから5年。正直、「もうラップはいいかな」と思う時もあった。思い通りの曲ができなかったり、売れていく周りを見て凹んだり。

楽曲「Never Go Back」のプレスリリースより抜粋


一度は諦めかけた音楽。でも止められなかった音楽と向き合い、ついに新しいアルバム『Sandra’s Son』を2022年2月9日にリリースした。

彼を信じて待ってくれていた仲間やリスナーに向けて腕を高らかに挙げ、CHICO CARLITOの復活を宣言する。彼の背中をグッと押すような力強いホーン。言葉がどんどん熱を帯びるに従って、ブレイクビーツが四つ打ちに変わるアレンジが見事だ。

23時30分
それは1日を締めくくるには丁度いい時間。でも、そんな時間にいても立ってもいられなくなって行動することに情熱を感じるし、勇気づけられる。人間的に大きくて、温かみのある歌声が、今のシーンに欠けてたピースだ。そんなことに気づかされた。


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d.a.b.d.e / 匂い。

2022/02/11 公開

▌死を身近に感じる切迫感


仙台出身。 2018年に結成したunnunのラッパー兼ビートメーカー d.a.b.d.e(ダビデ)。シンガソングライターとしての才覚もあり、ゴリゴリのラッパーというより、HIPHOPの枠に収まりきらないのが特徴だ。

この曲は、90sを彷彿とさせる雑味の多いブレイクビーツ。穏やかな日常描写の中に、「まだ死にたくないよ」というフレーズが出てきてドキッとする。

それは新しい生命の成長を見守りたいという思いと、死を身近に感じる切迫感がある。死と生が隣り合わせなのを知っているから、この瞬間の大切さを歌っているように感じられる。(MVの中には東日本大震災の映像が映し出される)

初期のS.L.A.C.K.や、ZAOが好きな人にオススメ!


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YO-1 / Own Style〜情熱〜(Prod.SKINNYBEATS)

2022/02/15 公開

▌地方にはまだまだ才能が埋まっている


そう思わせてくるのは、静岡県浜松市のラッパー YO-1 だ。

若かりし頃の TwiGy を彷彿とさせる滑らかな舌さばき。高級なワインを口に含んでいるような饒舌さがある。伸びやかなフローからHOOKへは、継ぎ目に気づかないほどのナチュラルに移行する。

「ラッパー金にならん うるせー」

と陰口を叩かれながらも、諦めなかったのは情熱があったから。その熱は、当然言葉の説得力となってリスナーに伝播する。30才過ぎて念願の1stアルバム『Patriotism』を2022年2月22日にリリースに漕ぎ着けた事実は、いま夢に向かってモガいている人に勇気を与える。


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Kvi Baba / 愛槌(Prod. BACHLOGIC)

2022/2/16 公開

▌愛を肯定する


楽曲「Too Bad Day But...」のリミックスでは、 先輩ラッパーAKLO & KEIJUをフィーチャーしたことで話題になった Kvi Baba 。

2022年最初のシングル「愛槌」は、
"愛してる"なんて口に出すのは小っ恥ずかしい
そんな思いを見透かすかのように、1小節で印象を反転させる。

これは楽曲「ヤワじゃない」でも用いられた、いい意味での裏切られるリリック構成。

愛を肯定するかのように、BACHLOGICによる野太いビートが力強く鳴り響き、伸びやかな歌声を加速させる。ヒューチャーリスティックなサウンドが行く先を明るく照らしている。

精神疾患を患っていることを告白するも、一輪の花に目をとめ、その咲き方に自分を重ねる充実ぶりが伺える。


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Killing Mob & 法斎Beats / New Game

2022/02/16 公開

▌歩調とこれほどマッチした曲ある?


名古屋のラッパー Killing Mob と奈良のビートメーカー 法斎Beats がタッグを組んだダブルネイムEP『Bring』からの1曲。

スネアにしっかりと重心を乗せたBoomBap。
Killing Mobは決してサグではないし、マッチョでもない。しかし諦めないタフさ、ひたむきな誠実さがある。ツンのめったライミングが規則的に鼓膜を刺激する。

スクラッチがカッコいい曲にハズレはないと改めて確信した。


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Peterparker69 / Flight to Mumbai

2022/02/18 公開

▌天国に1番近いサウンド


ラッパー SEEDA をフィーチャーした楽曲「FANTASMA」を" Jeter & Y ohtrixpointnever "名義で発表していた2人。所属していたクルーWATER DAWGSの解散が発表され、ほぼ同じタイミングで2人はユニット Peterparker69 として新たなスターを切ることとなる。

ミントの口に含んだようなスカッとした清涼感のある曲。Z世代ならではの未体験の感覚に襲われるオルターネイティブR&B 。

英語のリリックから洋楽を聞いている感覚になるが、途中で日本語が入ってきてドッとさせれる面白さ。女性が歌っているように聴こえるパートは、もしかしたらJeterの声を加工しているのかも…

つかみ所のなさがリスナーの重力を奪い、空高く昇天させられる。映像のトリップ感もヤバすぎる。クルーに収まりきらない程やりたい事が突き抜けたんだと納得。今後が楽しみすぎる。


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G-KANKAKU / JAMAN (prod. Leo Iwamura)

2022/02/18 公開

▌マジでイケてるマイクリレー


ラッパー KAKKY を中心に集められた関西のMC達が集い、神戸某所にある”G-KANKAKU”スタジオにて夜な夜な行われるセッション。

今回は J'Da Skit とのコラボで知られるビートメーカー Leo Iwamura とがっぷり四つで取り組み、アルバム『Blue Session』を完成させる。 Leo Iwamuraが「今年のベストアルバム候補」とツイートするほど気の入れようだ。


アルバムの中で、もっとも人数が多い6MCが参加したマイクリレー。アフリカのパーカッションのような複雑なハイハットが心地いいトラック。

気に入らなかったら返金保証
と言いたくなるほど全員がイケてるVerseを蹴っており、関西アンダーグランドの層の厚さを感じる。

ここまでレベルが高いと好みになるだろうが、どのラッパーのリリックが耳に残ったか『パンチライン大賞』を決めるのも楽しみの一つ。ちなみに私は、4th Verseの 写楽 による「当たって砕ける 煙みたいに上がってくだけ」が耳に残った。みなさんはどうですか?


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kou-kei & Mell Owell / Where to go

2022/02/22 公開

▌暖かくなったらどこに行こう?


94年生まれの佐賀出身、神奈川在住のラッパー kou-kei は、人懐こい歌声と類いまれなるメロディセンスを兼ね備えている。

HOOKの「Where to go」が "どこに行こう?" と聴こえるほど、どこかに遊びに行きたくなる。それでいて清涼感があって、春がそこまで来ている時期に聴くのがピッタリな曲。

ビートメーカー Mell Owell によるキレのあるリズム。そして歌をチョップしたサンプリングが、コーラスの役割もしてて曲を華やかに彩っている。


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SUMMER SNOWMAN(EASTA, KVGGLV & NOTYPE 9) / Don Dada

2022/02/25 公開

▌アバンギャルドな世界


AbemaTV『ラップスタア誕生』で決勝まで勝ち進み、審査員から実力だけでなくキャラクターも絶賛された EASTA 率いる2MC+1BeatmakerのユニットSUMMER SNOWMAN 。

「Don Dada Don Don」

タブラにリズムに合わせ歌うインド特有の歌い回し。これを大胆にHIPHOPに落とし込んだアバンギャルドさ。怪しさととユーモアとスケベさが程よい軽快さを生んでいる。

低音ボイスをビリビリと響かせる KVGGLV 、「個性のないお前よりマシ」とFATな体型すらも味方につけた EASTA は、怖いもの無しでしょ。


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EVISBEATS,Nagipan / ON REI

2022/02/25 公開

▌心地よさ、ここに極まり


楽曲「ゆれる feat. 田我流」が、YouTubeで1310万回再生される大ヒットを飛ばしたビートメーカー EVISBEATS とキーボード奏者・Nagipan(ex. MICHEL☆PUNCH)が、2021年12月にリリースしたダブルネイムアルバム『PEPE』に続き、シングル「ON REI / FUROJECT A」をリリースした。

タイトルを見れば分かる通り、お風呂をテーマにした曲で、EVISBEATSは2018年にも楽曲「NEW YOKU feat CHAN-MIKA」をリリースしており、生粋のお風呂好きなことがわかるだろう。(昨今のサウナブームに便乗している訳ではない)

今回、桶 Music Factoryという新興レーベルからリリースしているのは、入浴ソングがまだまだ作られるという事であろうか?本気なのかシャレなのか分からないのもいい湯加減だ(笑)

レゲエをベースにしつつつ、Nagipanが奏でるバブルのような粒状の高音、ジワーを沁みてくるシンセサウンド。そしてEVISBEATSの柔らかいビートと優しい声。もう目をつぶってうっとりすること間違いなし。あ゛〜〜〜 ♨️


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終わりに

最後までお付き合いありがとうございます。ヤバい曲との出会いがあったなら嬉しいです。ついでに高評価とフォローしてもらえると励みになります。皆さんのリアクションで一喜一憂してますので…

最後に、この記事で紹介しきれなかった曲のプレイリストを作りました。さらに深堀したい人は、⬇︎コチラもチェックして下さい。

では次の記事でお会いしましょう!


HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。