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HIPHOPのMV 20曲をレビュー(2023年2月公開作品)

TwitterでHIPHOPのレビューを毎日書き続け、5年目に突入した ドラム師匠 です。今回は、2023年2月に公開されたオススメMV 20曲をレビューしました。

  • ヤバい曲をまとめて知りたい

  • 曲にまつわるストーリーを知りたい

なんて人にオススメの記事です。もし、お気に入りの楽曲と出会えたら、"スキ"をお願いします。


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Ganger / 豊作祈願の諸人こぞりて(Prod. 8ronix)

2023/02/01 公開

▌民族音楽✖︎HIPHOP

アフリカンパーカッション・ジャンベから始める珍しいHIPHOP。仕掛けるのは、将軍 & MC林太郎により結成されたクルー・Ganger 。場を華やかにする小刻みな打楽器、MC林太郎の遠い記憶を呼び起こす節回し、マリンバと笛で展開するメロディ。そして極め付けで挿入される読経。

どこをとっても規格外。だけどラップが入ることで、現代(いま)しかでしかできない音に仕上がっている。

土着的ゆえに、物事の真理に近づいていき、気づけば宇宙とも交信しているようだ。広大でおおらかな、えも言われぬ感覚にさせてくれる。


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PAIN / #ヤングRich feat.STACK THE PINK(Beat by Lil’Yukichi)

2023/02/02 公開

ラッパー PAIN は岐阜県出身2000年生まれ。Dancerとして活動を開始し、EXILE,JSB,GENERATIONS, 後藤真希等のLIVEでサポートダンサーとして踊った経歴の持ち主。若さと勢いがほと走る三連符フローは、どこか人懐っこさがある。

客演で参加したのは、名古屋で活動する2004年生まれのラッパー STACK THE PINK 。言葉が強風に変わった?と錯覚するほどの高速ラップを披露。「誰もマネできないだろ!?」と言わんばかりにスキルで他をタコ殴りする感じがいい。

新しい世代が突き上げてきているのを感じる。


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Ludolph / Won't Waste

2023/02/04 公開

横浜出身で、今は川崎を拠点に活動するラッパー・Ludolph 。横浜ヒップホップクルー Back Street Blues のリーダー Django との出会いからラップを始める。この曲では、同クルーよりラッパーの Allen 、映像ディレクター SKYWALKER を客演に迎えている。

ホーンアレンジを大胆にチョップした首を揺らすパワフルなBoomBap。音に負けじと息巻くLudolphはスピットにラップするも、人柄がにじみ出て親しみやすい。

餓鬼レンジャーが好きなら是非!

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T-Pablow feat. Fuji Taito & SEEDA / CRESCENT MOON(Prod. Jigg)

2023/02/07 公開

▌CRESCENT MOON = 三日月

ご存じBADHOPの中心メンバー・T-Pablow のソロ楽曲は、どこまで行っても満たされないハングリーさがテーマ。痛みをうまく吐き出せない人の受け皿となったHIPHOP。行くも地獄、引くも地獄でも、先人が敷いたそのレールをさらに進めていく。

2000年前後から、先立ってその道を敷いた SEEDA がフィーチャーされており、今もリアルで、1番エモーショナルなラップをしているのも素敵すぎる。

俺達の弱みを知ってても 知らない痛み
RAP MUSICが俺らには必要

「CRESCENT MOON」のリリックより引用


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FEELS / CAN!! & hella D

2023/02/02 公開

東京、埼玉、茨城の10代で結成されたクリエイティブクルー FEELS 。メンバーは、G-flow(rap & beatmake)、Bill(rap)、FU-GA(rap)、(rap)、White Rose(beat make)の5人だ。

このクルーの何が凄いって、10代らしい若々しさがあるにも関わらず、語尾の力をスッと抜くテクニックがあること。円熟味すら感じさせる。

ダーディーにザラつかせた質感と、完成された個性が絶妙なバランス。一体いつからラップを始めたのだろう?気になって仕方がない逸材。

あのパイセンよりもっと上の上
寝ないday night start
from bottom on the here

「CAN!!」のリリックより引用


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Campanella & GuruConnect / Bell

2023/02/09 公開

鎮座DOPENESSとの共作が記憶に新しい Campanella の新曲は、Hip Hopバンド・skillkillsのベーシストである スグルスキル a.k.a. GuruConnect をプロデューサーに迎えている。

iPhone 14の日本向けCMにも採用されたこの曲は、雨粒が弾け、水滴に映った景色がキラメクるようなみずみずしさがある。カーニバルのような華々しさではなくても、自然の中に溢れるカラフルさに目を奪われ、心が踊りだす。そんな色彩豊かな曲に仕上がっている。


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▼この曲が起用されたCMがこちら

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CJ ft.$mell Good Shampoo / GOFLEX

2023/02/10 公開

日本とブラジルの血が混じったクルー HomeboyZ のメンバーで、三重県津市を代表するラッパー CJ 。伊勢志摩のラッパー $mell Good Shampoo をフィーチャーしている。

「俺は俺に本物で居たいぜ」

お金が価値基準になっている世の中で、本当の価値を自分に見出そうとする姿を描く。メロディアスなフローから流れゆくHOOKへと導く$mell Good Shampooの歌が心地いい。

2人の根底には地元への愛情がある。そして、そこだけにとどまらない野心に満ちている。


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Siryu / making(Prod. 山猫)

2023/02/11 公開

17才の夏、同じ淡路島出身のラッパー SILENT KILLA JOINT に自らDMを送ったことで始まったストーリー。

2003年生まれのラッパー Siryu 。ラッパー写楽や、高校の同級生・山猫をプロデューサーに迎え、1st EP「2022いま」を2月10日にリリースした。

EPに収録されたこの曲は、まだ何者でもないゆえの素朴さがあり、 「making」することへのピュアさがフォーキーな質感で表現されている。

神戸でパーティーを主催するなど自ら行動に移し、少しずつ仲間の輪が広がっている。ラッパーとしての成長過程も今まさに「making」している。


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Issei Uno Fifth / For Real | 03- Performance |

2023/02/11 公開

YouTubeチャネル『レイブログRayVlog』で行われた次世代スター発掘企画。そこでビートメーカーYung Xansei が選んだのは、東京とCHICAGOを行き来するラッパー / シンガーの Issei Uno Fifth だ。

ドン・ドン・ドンドンドンとキックが先導するトラックの特徴を活かし、「For real ,for real」とリフレインを効果的に用いた曲。 Issei Uno Fifth の歌声は光を照らすような直線力があり、隙間を埋めるために意図的に吐き出すブレス音が色っぽい。


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miroku & IRB / Make(Prod. Meguri Sasaki)

2023/02/12 公開

▌これは首振り案件

レペゼン秋田のHIPHOPクルーmadjunctionより、mirokuIRB、そしてビートメイカー Meguri Sasaki が投下した入魂のBoomBap 。

力強く叩きつけるマイナー調のピアノループ。お金のためとか、売れるためとかじゃなく、ただ作りたいから作る。そんな迷いなきピュアさが曲に勢いをつける。

「MAKEしてまたREC 街を眺めるよMidnight Blue」

価値基準を他人からの評価に委ねるのではなく、自分を高めるためにやれ。そう問いかけられているように思えてならない。MONJUやONENESSが好きな人はチェック!


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Young Yujiro / ZONE!! (Prod. DJ Whitesmith)

2023/02/15 公開

Jin Dogg を擁する大阪のクルー HIBRID ENTERTAINMENT を2016年に発足させた Young Yujiro 。「Hey」の一言だけで誰だがわかるほどドス黒い低音ボイスが特徴的なラッパーだ。

6枚目のアルバムとなる『WOLF!! 』を2月15日にリリースした。アルバムのオープニングを飾るこの曲は、ラップでは珍しく言葉数が少なめ。禅のように余分なもの削ぎ落とした結果というより、自分との対話しているようなラフなフリーキーさがある。

何かを言ってるようで何も言ってないラッパーが多い中、何も言ってないようで自分の生き方を語っている。自身のツイートで「ベテランはどんどん味が出てくる」というように、言葉からしみ出るエキスを感じてほしい。


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18scott / R.E.A.L.(Prod. Beat by RobEVN)

2023/02/15 公開

こんな彼を待っていた。

キレのあるフローが特徴的な18scott(ジュウハチスコット)は、神奈川県藤沢出身のラッパー。これは、3月上旬にリリース予定の2ndミニアルバムからのリード曲。

この街で生きるリアルを歌っている。2〜3文を息継ぎもせず、一気に畳みかけることでスピード感が生まれている。それは3年前に沈んでいた時期の遅れを取り戻そうとしているかのようだ。スキルと世間のタイミングが合致し、ラッパーとして充実ぶりが伝わる。

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DSXTX FKA D-SETO / GET

2023/02/17 公開

D-SETOからアーティスト表記を変更した DSXTX(ディーセト)は、青森出身で現在は東京を拠点とするラッパーだ。

激しく刻むブレス、急き立てるストリングスが心拍数を上昇させる。

ダークで鋭利な語感とは裏腹に、ラップゲームのシビアさを嘆いている。揺れる心と、揺るぎないプライド。その両面が描かれている。


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Ridho Louis / My Thing(Prod. SBK)

2023/02/20 公開

ラッパー KAKKY を中心に夜な夜なMC達が集い、神戸某所にあるスタジオにて行われるセッションから派生した異能表現集団・G-KANKAKU 。

そんなG-KANKAKUの愛されキャラ Ridho Louis は、1996年生まれで神戸出身、日本人の母とインドネシア人の父の元に生まれ育ったラッパーだ。

2022年の大晦日にリリースされたアルバム『Portopia』。そこに収録されたこの曲で伝えるのは、「やることやる 当たり前に」というシンプルなメッセージ。実はそれが難しかったりするのだが、彼の肩の力が抜けたラップを聴くとと、"当たり前にやったらいいだけか"と心も身体も軽くなる。

Ridho Louisの不思議な魅力にヤラれる。


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SATORU / Drill Flow feat.Watson(Prod. THE UNCLE & MFDP)

2023/02/21 公開

今やラッパーとしてより格闘家としての方が有名かもしれない SATORU 。格闘技イベント「BreakingDown7」に参加予定だったが、何者かに襲撃されドタキャンすることになった。

そんな良くも悪くも注目が集まったタイミングでリリースされたのがEP『GOLD ROGER』だ。EPに収録されたこの曲は、今もっとも勢いのあるラッパー Watson をフィーチャー。1VerseとHOOKを担っており、巻き舌を多用したパキパキのラップは、彼の新曲かと思わせるほどインパクトを残す。

底辺からはい上がる姿をパワフルに描くSATORUは、セックス、ドラッグ、バイオレンスの香りを漂わせる。中には襲撃後にアザだらけの顔でアップされた動画とリンクするリリックもあり。

あの動画ってプロモーションの一環だったのか?なんて頭をよぎる。真相はいかに???


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Fly-Hi / No Style Nothing

2023/02/21 公開

福島のラッパー Fly-Hi 。詳細不明だが、Instagramのアカウント名から2005年生まれだと推測され、恐らく17歳か18歳だろう。

まだあどけなさが残る面影と、若々しい声。だが、早くも自分のスタイルを確立させようと曲に言葉をのせている。

流行りに乗ったて別にくだらない
リアルじゃなければ 別につまらない

「No Style Nothing」のリリックより引用

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Blue Bass / Flight mode

2023/02/23 公開

Ado、ヨルシカなど顔出ししないアーティストが増えてきた中、HIPHOPでもピーナツくんや炒炒、など戦略的に顔を出さないラッパーが増えてきている。この Blue Bass もその1人。

京都を拠点にしてること以外、プロフィールなど詳細は不明。顔が見えない分、余計にラップの上手さが際立って聴こえる。頭の中で妄想でパンパンに膨らまし、夢に向かって上昇する自分と飛行機を重ね合わせる。

Fuji Taitoのような語気の強いフロー。その反面、律儀さとインドア派であることも見え隠れ。仮面の奥の顔が気になったら、もう虜になった証。

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A'she / Égoïste feat. RAU DEF(Prod. iron)

2023/02/25 公開

Hip-Hop Art コレクティブ"A-Psycho Squad"のメンバー・A'she 。AbemaTV『ラップスタア誕生2023』で、3457人の応募から130人まで絞られたAREA TRIALまで勝ち進んだ。審査員のSEEDAに「個人的にめっちゃ好きですね」と言わしめた実力者だ。

彼の最大の武器は高音ボイスだ。時に女性ボーカルに聞こえるし、時に赤ん坊のようにも聞こえる種類の多さ。それを4小節ごとに使い分けているから、耳だけで聴いていると何人ものボーカリストが共演しているのかと勘違いするほど。

かつては高音ゆえの繊細さがあったが、この曲ではそこに男性らしさが加わった。それは「俺が担ってく 俺が担ってく」というリリックにも表れていて深みとなっている。


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tanta / Dress room

2023/02/25 公開

京都のラッパー・tanta はTrap metalやHard trapから影響を受けたラッパーだ。Trap metalは、メタルから派生してHIPHOPとの化学変化を起こし生まれたジャンルで、日本ではクルー Xgang がシーンを牽引している。

この曲は、ノイズにも近いリバーブを多用したギター(?)が、不穏かつ退廃的な空気を増幅させる。tanta は、過剰な自意識が心を病ませ闇に堕ちていく様を描く。

技術に裏打ちされた安定したリズムキープは、ダークでありながら踊れる楽曲に仕上がっている。


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guca owl / 6TH CORNER | Selfies

2023/02/27 公開

国内最大規模のヒップホップフェスティバル "POP YOURS" による新たなスタジオライブ動画「Selfies」。装飾が何もない黒バックのスタジオで、実力と人間性が剥き出しになる演出だ。

Skaai、Watsonに続く第3弾に選ばれたのが大阪府東大阪市出身の guca owl(ぐかーる)。今年開催される"POP YOURS" のDAY 1に出演することが決定している。

そんなguca owlの新曲は、音楽を生涯の仕事にする覚悟を歌にしている。東大阪といえば中小工場が多い下町で、知らず知らずにできあがった町のセオリー。周囲の「当たり前」が見せない足枷となっていたが、そこから外れた生き方を次の世代に提示する。

6TH CORNERとは、6番目に選んだ職業ということであろうか?家族を思いやる視点が優しく、そして夢とリアルの間で相当な葛藤があったことを物語っている。

母子家庭にはいるぞmoneyが
ああグズグズしてらんねぇぞ

「6TH CORNER」のリリックより引用


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▼guca owlが生まれ育った東大阪でのルーツが語られた動画。この曲が生まれた背景が垣間見られる。

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大切なお知らせ

最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。お気に入りの楽曲が見つかったらうれしいです。

さて、今月号でこの『月刊DiGG』を休刊することにしました。2020年9月1日に『週刊DiGG』として産声をあげ、『日刊DiGG』にしたものの体力的に厳しくなり、今の形に落ち着きました。

長い間応援してくれた皆さん、ありがとうございました。

私はHIPHOPが嫌いになって止める訳ではありません。今後は活動の場をHIPHOPメディア"スラムフッドスター "に移し、責任を伴う形でHIPHOPを紹介していきます。引き続き応援をお願いします。では!








HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。