医薬系特許への無効審判請求(新規・確定分、2021/11/25)

特許庁公報第8437号掲載分(2020年11月25日公示)
・新規分
予告登録件数(無効・訂正):25件
医薬系の件数:0件
・確定分
審決の確定件数(無効・訂正):25件
医薬系の件数(無効審判):3件

1.東レ v 沢井製薬

(1) 登録番号:特 3531170
(2) 発明の名称:止痒剤
(3) 分割出願:有
(4) 審判番号:2019 審800038
(5) 審決の趣旨:不成立
(6) 登録年月日:R 3. 9. 21
(7) 出訴:有(令02行ケ10041:請求棄却(審決維持)、上告受理申立(令03行ノ10011)・上告受理(令03行ヒ00194):不受理)
(8) 権利者:東レ 株式会社
(9) 請求人:沢井製薬 株式会社     
(10) 請求項:
(請求項1)
下記一般式(I)

[式中、

は二重結合又は単結合を表し、R1は炭素数1から5のアルキル、炭素数4から7のシクロアルキルアルキル、炭素数5から7のシクロアルケニルアルキル、炭素数6から12のアリール、炭素数7から13のアラルキル、炭素数4から7のアルケニル、アリル、炭素数1から5のフラン-2-イルアルキルまたは炭素数1から5のチオフェン-2-イルアルキルを表し、R2は水素、ヒドロキシ、ニトロ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルキルまたは-NR9R10を表し、R9は水素または炭素数1から5のアルキルを表し、R10は水素、炭素数1から5のアルキルまたは-C(=O)R11-を表し、R11は、水素、フェニルまたは炭素数1から5のアルキルを表し、R3は水素、ヒドロキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシまたは炭素数1から5のアルコキシを表し、Aは-XC(=Y)-、-XC(=Y)Z-、-X-または-XSO2-(ここでX、Y、Zは各々独立してNR4、SまたはOを表し、R4は水素、炭素数1から5の直鎖もしくは分岐アルキルまたは炭素数6から12のアリールを表し、式中R4は同一または異なっていてもよい)を表し、Bは原子価結合、炭素数1から14の直鎖または分岐アルキレン(ただし炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、ヒドロキシ、弗素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびフェノキシからなる群から選ばれた少なくとも一種以上の置換基により置換されていてもよく、1から3個のメチレン基がカルボニル基でおきかわっていてもよい)、2重結合および/または3重結合を1から3個含む炭素数2から14の直鎖もしくは分岐の非環状不飽和炭化水素(ただし炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、ヒドロキシ、弗素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびフェノキシからなる群から選ばれた少なくとも一種以上の置換基により置換されていてもよく、1から3個のメチレン基がカルボニル基でおきかわっていてもよい)、またはチオエーテル結合、エーテル結合および/もしくはアミノ結合を1から5個含む炭素数1から14の直鎖もしくは分岐の飽和もしくは不飽和炭化水素(ただしヘテロ原子は直接Aに結合することはなく、1から3個のメチレン基がカルボニル基でおきかわっていてもよい)を表し、R5は水素または下記の基本骨格:

のいずれかを持つ有機基(ただし炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、ヒドロキシ、弗素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ、ニトロ、シアノ、イソチオシアナト、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチレンジオキシからなる群から選ばれた少なくとも一種以上の置換基により置換されていてもよい)を表し、R6は水素、R7は水素、ヒドロキシ、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルカノイルオキシ、もしくは、R6とR7は一緒になって-O-、-CH2-、-S-を表し、R8は水素、炭素数1から5のアルキルまたは炭素数1から5のアルカノイルを表す。また、一般式(I)は(+)体、(-)体、(±)体を含む]で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤。

(11) 関連医薬品:
東レ(先発品):レミッチ®錠等
沢井製薬(後発品):ナルフラフィン塩酸塩OD錠「サワイ」等

(12) 備考:
事務所案件だったらと思うと肝が冷えるフリー体への補正。延長登録の拒絶査定不服審判、延長登録の無効審判等のその後の影響が甚大であり、当たり前のことを当たり前に遂行することの重要さを再認識します。

・知財高裁判決(令02行ケ10041)
本件の知財高裁判決については、以下が参考になります。

2021.03.25 「沢井製薬 v. 東レ」 知財高裁令和2年(行ケ)10041

医薬系特許的判例ブログ

・延長登録に対する無効審判
3件の延長登録(特願2017-700310、特願2017-700309、特願2015-700061)に対しても無効審判が請求され、一部は延長登録無効、その他の医薬用途は延長登録有効との判断が確定しています。
関連する知財高裁判決については、以下が参考になります。

2020.12.02 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10096, 令和2年(行ケ)10097, 令和2年(行ケ)10098(中間判決)
2021.03.25 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10096
2021.03.25 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10097
2021.03.25 「東レ v. 沢井製薬・ニプロ」 知財高裁令和2年(行ケ)10098
レミッチ®用途特許の延長登録に関する審決取消請求事件 最高裁が上告棄却・上告不受理決定したことにより知財高裁の審決取消(延長登録有効)判決が確定

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経口そう痒症改善剤レミッチ®の用途特許に関する審決取消訴訟の判決について

東レ株式会社HP

・延長登録出願
1件の延長登録出願(特願2017-700154)について、拒絶査定及び拒絶審決がだされ、知財高裁で争われた後、延長登録されています。

2021.03.25 「東レ v. 特許庁長官」 知財高裁令和2年(行ケ)10063

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・特許権侵害訴訟
本件特許に関しては、沢井製薬株式会社及び扶桑薬品工業株式会社を被告とする特許権侵害訴訟(地裁判決:平成30年(ワ)第38504号、第38508号知財高裁係属中)が進んでおり、フリー体クレームの解釈が気になるところです。

経口そう痒症改善剤「レミッチ®」用途特許に関する特許権侵害訴訟提起について

東レ株式会社HP

地裁判決については、下記が参考になります。

2021.03.30 「東レ v. 沢井製薬・扶桑薬品工業」 東京地裁平成30年(ワ)38504, 平成30年(ワ)39508

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・ジェネリックメーカーの参入
東レのレミッチに関する後発医薬品メーカーの参入の動きについては、下記が参考になります。

レミッチ®用途特許に対するジェネリックメーカーの動き

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・その他
レミッチに関しては、沢井製薬の製剤特許について、東レが無効審判を請求しています。

医薬系特許への無効審判請求(新規分、2021/08/25)
2.沢井製薬 v 東レ

2.メルク(MSD) v ワイス(ファイザー)

(1) 登録番号:特 6192115
(2) 発明の名称:免疫原性組成物を安定化させ、沈殿を阻害する新規製剤
(3) 分割出願:有
(4) 審判番号:2020 審800028
(5) 審決の趣旨:取下げ
(6) 登録年月日:R 3. 10. 12
(7) 出訴:無
(8) 権利者:メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
(9) 請求人:ワイス・エルエルシー      
(10) 請求項:
(請求項1)
 シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの、シリコーンにより誘発される凝集を阻害する、シリコーン処理された容器に入れられている製剤であって、
(i)pH緩衝塩溶液、ここで該緩衝液は、約3.5から約7.5のpKaを有する、
(ii)アルミニウム塩および
(iii)CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型1多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型3多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型5多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6A多糖類、CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型7F多糖類およびCRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19A多糖類を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート、
を含む製剤。

(11) 関連医薬品:
MSD(先発品):Vaxneuvance™
ファイザー(先発品):Prevnar13®、Prevnar20™

(12) 備考:
・他の無効審判
本件特許については、別の無効審判(2018審800090)も請求されており、審判及び知財高裁(令和2行ケ10015)において、特許有効との判断が出ています。最高裁への上告(令03行サ10013、令03行ツ00195)及び上告受理申立(令03行ノ10029、令03行ヒ00261)後、後述の両者での和解により請求取下げとなっています。
知財高裁判決については、下記が参考となります。

2021.05.17 「メルク・シャープ・アンド・ドーム v. ワイス」 知財高裁令和2年(行ケ)10015

医薬系特許的判例ブログ

・和解
MSDとファイザーとの和解により取下げに。

Merck Announces Settlement and License Agreement Resolving Pneumococcal Conjugate Vaccine Patent Litigation

Merk社HP

3.アメリカ合衆国 v ヘクサル アクチェンゲゼルシャフト

(1) 登録番号:特 4162491
(2) 発明の名称:ボロン酸化合物製剤
(3) 分割出願:無
(4) 審判番号:2018 審800012
(5) 審決の趣旨:取下げ
(6) 登録年月日:R 3. 10. 14
(7) 出訴:無
(8) 権利者:アメリカ合衆国
(9) 請求人:ヘクサル アクチェンゲゼルシャフト     
(10) 請求項:
(請求項17)
凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート。

(11) 関連医薬品:
ヤンセンファーマ(先発品):ベルケイド®注射用等
第一三共エスファ(後発品、オーソライズド・ジェネリック):ボルテゾミブ注射用

(12) 備考:
本件特許については、別の無効審判(2016審800096、2016審800130)も請求されており、審判及び知財高裁(平成30年行ケ10158、平成30年行ケ10113)において、訂正後の特許については、特許有効との判断が出ています。
知財高裁判決については、下記が参考となります。

2020.07.02 「アメリカ合衆国 v. 高田製薬」 知財高裁平成30年(行ケ)10158 (A事件); 10113 (B事件)

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