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白血球の数と分類

治療中の方は、化学療法によって減ってきますので採血の度にいつも数を確認されている白血球の話。

白血球は正常の値としては4000-10000/μLくらいです。

「くらい」と曖昧なのは施設によって多少異なるからです。

白血病細胞が血液の中を流れると、白血球にカウントされるので、白血球の数が増えます。白血病になると白血球が必ず増えるかというとそうでもありません。

骨髄にいても血液に流れてこない白血病があるからです。

例えば急性前骨髄球性白血病(APL)では、骨髄で正常な血球が抑制され、白血病細胞も血液に出てこないので、白血球数はむしろ低値であることが多いです。(1/4の方は診断時白血球1万以上です。)


正常な白血球はいくつかの種類に分類されます。

好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単球。

おそらく好中球はよく確認されているのではないでしょうか。他の血球も採血結果に表れていますので一度ご自身の結果を見てみてください。

これらの血球の分類は機械法と目視法があります。

機械で大まかに分類できるのですが、機械では白血病細胞を正確にカウントできないため、白血病の場合は目視法も行われることが多いです。

採血をすると血液をプレパラートに薄く塗り、染めて、それを検査技師さんが顕微鏡でみて、100-200個数えて分類してくれて、検査結果として出てきています。

本日のTOP画像として使っている写真には紫色の細長い核を持つ細胞が写っています。これが好中球です。これらを目で見て分類してくれています。

目で見てカウントするのには時間を要するので、朝一の採血結果にはまだ反映されてないかもしれません。

好中球は体にばい菌が入ってきたときに一番にやっつけにいく働きをしています。この好中球がないと、入ってきたばい菌をやっつけられず、感染症を起こします。敵のいないばい菌はどんどん増殖し、感染症は速いスピードで悪化することがあります。

実際の値としては好中球500/μL未満だと急に悪化しやすいので、我々は対応を急ぎます。夜間でも血液採取をし、抗生剤の投与を開始します。

好中球による免疫があるかどうかは、このように数によって分かります。500/μL未満は急ぐのだと患者さんも覚えておいてください。

次はリンパ球についてです。

リンパ球はさらに、B細胞、T細胞、NK細胞に分かれます。

これらも免疫に関わっていますが、好中球とは異なる免疫を担っています。

B細胞は抗体を作る働きをしています。例えば、インフルエンザの予防接種をしてインフルエンザにかかりくくなったり、重症化しにくくなるのは、インフルエンザに対する抗体ができるからです。一度かかった水疱瘡に2回目かからないのも、抗体ができているからです。おそらく、新型コロナウイルスに一度かかれば2回目の感染はないと考えられているのも、抗体ができるからです。

ちょっと脱線しますが、症状のでない新型コロナウイルス感染がありますが、採血で抗体ができているかどうかを確認すれば、かかったことがあるかが分かります。

このようにB細胞は一度であった細菌やウイルスに対して抗体を作る免疫を担っています。

T細胞はさらに様々に分類が分かれていますが、感染した細胞を障害する細胞障害性T細胞というものがあります。

好中球や抗体は細胞の中に隠れてしまったばい菌をやっつけるのが苦手です。そのような感染に対してはこの細胞障害性T細胞が働きます。

T細胞が弱まっている状態では、日頃では感染しない感染症を起こします。細胞内に感染するレジオネラなどの細菌、サイトメガロウイルスなどの再活性化を起こすウイルス、真菌(カビ)、寄生虫などです。

好中球がない時のように急な悪化はあまりないものの、リンパ球の機能が落ちているときはこのように幅広い原因が考えられるので、原因特定に時間を要することがあります。

また細菌をやっつける抗生剤ではなく、抗ウイルス薬、抗真菌薬を使うことになると、副作用が強く、また治療期間が長くなります。

リンパ球の免疫が落ちているかは、これは採血で数をみても分かりません。リンパ球が落ちている状況かどうかを考える必要があります。

急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫といったリンパ球の病気に対する治療中、ステロイド使用中、移植後などがリンパ球の免疫が落ちている状況です。


長くなってきましたので、他の血球に関してはまたの機会に書くこととします。

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