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なぜKaiju on the Earthをやるのか?

『Kaiju on the Earth』シリーズは共通の世界観のもと毎作異なるゲームデザイナーが作品を発表していく連作ボードゲームシリーズ。株式会社アークライトとの共同プロジェクトで、ドロッセルマイヤーズは企画の原案、世界観の構築、総合ディレクションを担当しています。

2019年春のゲームマーケットにてプロジェクトの立ち上げが発表され、2019年秋のゲームマーケットで第1作を発売予定。以降、半年に1作、ゲームマーケット東京開催ごとのペースで新作を発売していく予定です。

なぜこのシリーズをやりたいと思ったかというと、第一には日本産ボードゲームの国際競争力を上げるためです。欧州にはドイツ系ボードゲームのオリジンとしての文化的土壌があり、アメリカや中国には巨大な市場がある。では日本には何があるかというと、ここ10年で爆発的に拡大した同人ゲーム界を苗床に育つ、たくさんの作家(ゲームデザイナー)たちがいるのです。その中には個人として海外パブリッシャーから作品を発売したり、賞をとったりする作家もあらわれていますが、日本全体として国際市場において「存在感がある」というところまではまだ至っていない。これは作家たちの問題ではなく、われわれビジネスサイドの人間が取り組むべき課題です。(渡辺はゲームデザイナーでもありますが、根っこの部分はプロデューサーなので、このように感じます。)

ボードゲーム業界は良くも悪くものんびりしていて、あまり商売っ気が強くないのが個人的にも好きなところではありますが、やはりプロの専業作家を育てていくためにはもう少し強固な経済基盤が必要です。そのためには作家たちの個別の戦いに任せているだけではダメで、みんなが力をあわせて戦うための「旗」が必要だと思いました。そのひとつの提案がこの『Kaiju on the Earth』シリーズです。これひとつで市場が変えられるほど簡単ではないでしょうが、このシリーズがうまくいくようなら、ここを出発点に新しい発想もいろいろ見えてくるかもしれません。

そして第二の目的は、小説、コミック、アニメ、ドラマ、映画、ビデオゲームなど様々な物語メディアがある中での「ボードゲーム」の地位を上げていくことです。

いまボードゲームが他のメディアとコラボレートしようとすると、どうしても他メディアの人気作品を原作として、その「ボードゲーム版」を製作/発売する、という発想になりがちです。それはそれで当然やっていくべきことですが、それだけではボードゲームはあくまで二次著作物/二次市場にとどまってしまいます。

僕がいま必要だと思うのはその逆で、「ボードゲームを原作とした他メディア展開」です。しかしこれも言うほど簡単ではなく、単にオリジナルIPの作品をつくれば誰かが勝手にアニメ化してくれるというわけではありません。メディア展開というのは基本的に原作人気を根拠に判断するわけですから、「で、その原作ファンは何人いるの?」という点が重要なのです。そのとき、日本のボードゲーム市場は(右肩上がりの成長を続けているとはいえ)まだまだ規模としては小さく、「ゲームマーケットで人気」というレベルではコンテンツビジネスの俎上に乗ることは難しいでしょう。なのでまず、「日本産ボードゲームといえばまずこのシリーズが思い浮かぶ」というところまで『Kaiju on the Earth』を育てたいのです。そうなって初めて、ボードゲーム市場全体への今後の期待感もコミで、「まあチャレンジしてみるか」というレベルまでもっていけるかもしれない。

またそのとき、もし海外で『Kaiju on the Earth』の人気が高まっていれば、このうえない強力な援護射撃になります。そしてノベル化、コミック化、アニメ化といったメディア展開は日本のお家芸ですから、そういったバックアップがあれば海外での競争力もワンランク上がる。なので第一の理由と第二の理由は相互に関係があるのです。(これと逆の順番でも良かったりもします。)

10/15(火)『Kaiju on the Earth』第1作の具体的な内容が発表になる予定です。他のあらゆるコンテンツビジネスと同じく、これもあくまで「チャレンジ」なので、結果はやってみないとわかりません。びっくりするぐらいスベる可能性だってあります。

でも少なくとも、I was game上杉さんは僕らのリクエストに対して、ゲームデザインで120%の成果を返してくれました。ジャイアントホビーさんは多数のフィギュア/コマ類をありえないほどパッケージ価格を抑えて提供できるよう帆走してくれたし、中北さんの怪獣デザインはカッコいいし、開田さんのパッケージイラストも中村さんのカードイラストも宇佐美さんのグラフィックデザインも、とにかく作品の出来は最高です。

後はこれをちゃんと届けるべき人たちに届けるのが、ドロッセルマイヤーズとアークライトの役割です。いまアークライトさんが先行予約の手段やクラウドファンディングなどいろいろ準備してくれています。『Kaiju on the Earth』の志に共感してくださる方は、ぜひ応援お願いします。「6~7割は同意できるかな」とか「半分ぐらいはわからんでもない」ぐらいの気分でも構いません。まずは完成したゲームを遊んでみてください。そしてもし、面白さや可能性を感じたら、シリーズの次作もよろしくお願いします。

そんな感じで『Kaiju on the Earth』はこれから毎作、世界市場とも怪獣災害とも戦っていきます。

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