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僕の考えた最強のリモートワーク

去年の3月にIAMASの修士課程そして研究生を終え、東京に戻ってきた。とりあえず食うに困るわけにはいかないので、実家に戻って日々の稼ぎをどうするか考えているうちに縁あってフリーランスのプロジェクトマネージャーとして友人の会社に世話になることになった。とはいえ、週五で出勤とかではないので初めからかなりリモートで仕事をすることが多くその頃から考えていたことと、あと去年の4月ににはシグナル・コンポーズ株式会社も起業したのだが、その前に考えていたこととその後を通じて、そこで協力してくれるパートナー達との働き方を模索してきた方法がちょうど今の状況に合っていると思うので紹介していこうと思う。

オフィスはお金を稼いでくれない

以前デザイン会社を経営していた時には会社の規模に合わせていくつかの賃貸物件を渡り歩いていた。最終的に家賃は月に40万くらいにはなっていたのかな、と思う。その当時のランニングコストがつき400万から500万だったので月の1/10はオフィスの家賃、と言うことになる。確かにオフィスがあると楽しい。人は来てくれるし花火大会の時には集まってビール片手にお客さんも呼んでワイワイできた。それになりにスペースがあったからイベントもできた。

でも今考えるとあれは本当に必要なことだったのかと思う。会社というのはそういうもんだ、って思ってやってただけなのかもって。その当時も「新しい働き方」みたいな話をしていたと思うけどオフィスが一番のネックだったのではないかと今では思う。結局リアルの場所を中心としたコミュニケーションはその場所に人を縛るし、その場所がありきのコミュニケーションをすべての人に強いる。僕はよく煮詰まるとオフィスを出て近所の喫茶店で仕事をしてたけど、あれをよく思ってなかった従業員も今となってはいそうな気がする。

そしてオフィスはどこにどんな規模で構えていても毎月間違いなくお金が出ていく。その上オフィスは一円足りとも稼いでくれない。どんなに綺麗な内装をしていようが「いいオフィスですね」って言われて終わりだ。それで仕事をくれる顧客なんか一人もいない。

今たくさんの会社がリモートワークに移行している。オフィスにはきっと普段の1/nの人しかいなくて閑散としてる、もしくは誰も出社していない、という状況のところも多いだろう。でもそれで営業できてる、という事実はすべての会社経営者にとってオフィスを毎月維持していくコストと言うのがいかに「仕事と関係がないか」と言うことを痛感するきっかけになると思う。都心の不動産はこれから大変なことになるんじゃないか、と想像するけど、オフィスというのはコロナの件があろうとなかろうと本当にリアルな場所が必要な人(飲食とか)以外にとっては随分前から不要なものだったんだと思う。

なので、自分の会社の家賃はものすごく低い。縁あってそういうことが出来てる。でもそれは他の人でも多分できることだし不動産業はそういうマイクロオフィスみたいなものにどんどんシフトしていくんだろうな、と思っている。

ちなみにリモートワークに関しては以前働いていたシックス・アパート社の取り組みが素晴らしいので興味がある人は情報を追ってみるといいと思う。僕がここで言ってるようなことは大体彼らがSAWSでやってることでもある。

コミュニケーションはSlack(無料版)

物理的なオフィスは「登記に必要で名刺に書くためだけのもの」になっているので会社/コミュニティとしてコミュニケーションをとる場所は別に用意する必要がある。で、御多分にもれず僕らはSlackを使っている。ただしそれを無料版のままで使っている。これも会社と同じで基本的にインフラに必要以上のお金をかけるとそれは「オフィスに綺麗な机やテーブルを並べるのと同じ」でしか無くなる。やれこの機能があるから便利だ、などというのはなくて済むのならないほうがいい。

むしろSlackに関しては無料版だと大変良い点がある。それは、、、

「遡れる情報の数に制限がある」ことだ。

すでにもう1年前の情報は僕の会社のSlackでは追えない。なんなら発言がなかったプロジェクトはなんの情報も表示しないくらいだ。なので、会社の情報の流れの濃さが一目瞭然なのだ。発言がなく更新されてないプロジェクトは基本無条件にアーカイブしている。多分それで困る人はいないしもしそのプロジェクトをもう一度立ち上げたいと思った時はそれはもう「別のプロジェクト」だと思った方がいい。フロー情報は基本消えていくことにこそその価値があると思っている。

ちなみにフリープランだと「検索可能な10,000件のメッセージ、10個のアプリとインテグレーション、1対1のビデオ通話と2要素認証など、フリープランでは Slack の基本的な機能が利用できます」とのことなんだけど、10000件以上の記録遡るには組織が小さすぎるのでそれで充分。10個アプリがインテグレーションできればワークフロー的に欠かせないものはそんなに多くないのでそれで充分。ビデオ通話はGoogle Meetsがある。2要素認証はそもそもgoogleできちんとしたパスワードで認証かけてれば大きな問題にはならない。

最近はDiscordなんかも良いと思うようになり始めたのでどこかで乗り換えてもいいかな、、、と思ってもいる。まぁこの辺りはコミュニティとしてのslackを整理するタイミングかな、と思うので思うしばらくあとだと思うけど。

情報のストックはScrapbox(無料版)

で、じゃ、保存する情報は?というとそれはScrapboxに保存している。これも無料版のままだ。会社で無料版を使うとページ数に上限がある。今のところ上限に達していないので無料版のままなのだが、多分上限になったら有料にすることよりも古い情報を消す、ということをまず選択肢に入れるだろう。1年も見なかった情報で本当に必要なものというのはとても限られていると思う。もしどうしても記録しておく必要があればGoogle Documentが使えるのでそちらに移動させてしまえばいいし、何も有料のツールを増やすことはない。繰り返していうが便利さのためだけに有料のツールを増やすのは「見栄でオフィスに家具を揃えているようなもの」なのだ。

というかランニングコストはこういうツール積み上げていくことでどんどん上がりますよ、、、まじで。

メールやファイル共有、Office系ソフトはG Suite。ソース管理はGithub(有料)

じゃー有料のものを使っていないかというとそんなことはない。メールやファイル共有、Office系ソフトは基本的にGoogle のG Suiteで運用している。これには理由がある。もしこれらの環境を自前で揃えようとするとサーバ管理者が必要になる。こういうバックオフィス系で使うツールを人依存で管理するのと、外部のサービスを使うので生産性が変わることなんかないのと、ぶっちゃけメールサーバが壊れたことがあってものすごく辛い思いをしたことがあるので二度と自分で運用なんかしたくない。ファイル共有もGoogle やDropbox 以上の機能とセキュリティーを自前で用意する作業コストや人的コストを支払うならその分一行でも論文を読み、コードを書き、プロトタイプを作ったほうがマシだ。

そもそも僕はバックオフィスがやりたくて会社をやってるのではないし、少人数の会社でそんなところに力を入れる必要なんかないと思っている。こういうところにはお金を払っている。あとソース管理についてはGithubの有料版を使っている。でも最近、無料版でも無限コラボレーターが可能になったので無料版に移行できそうかは調べているところ。多分今の仕事がひと段落したら無料版に落とすことになると思う。

リモートワークのルール

今のところ取締役候補と外部パートナーというメンバーで運用してるので出退勤の管理はしていない。基本的には今後もなるべくしない方向にしたいと思っている。というのも好きな時に好きな場所で好きなように働いていていいと思っているから。基本人の管理、というものはしない。相手は子供でも生徒でもない普通の大人なので、そんなものが必要だとは思っていないし、プロジェクト管理も「いついつくらいにはヤバくなりますよ」とはいうけど、それを判断するのは相手の仕事であり責任なので僕はそこは肩代わりしない。最短距離は常に考えて示せるようにしておくし、捨てるところ拾うところみたいなディレクションはするけどね。

外部の人とのやりとりに関しては、相手の都合もあるからそれに付き合う必要があありそうだけど、とても簡単方法でそれは解決できる。単純に返事を一日遅らせたら良いだけの話なのだ。今日やることは昨日決めたことであって、今日今差し込まれたことであってはならないと思っている(まぁそうも言ってられないことがあるけど、それでもなるべくそうしてる。もちろんお願いレベルでは順番を変更したり対応したりはしたり/してもらったりはしてる)。

個人の活動については、Slackにtimesというチャンネルを各自が持つことで今何やってるかどんなこと考えているかを好きなように書けるようにしている。

これがあると個々人の趣味や趣向で会話ができたり、ちょっとした悩みが解決されていく。要するにコミュニケーションというのは人間をhubにして行われるのだからそのhubに個々人がなれればいいだけのことだということに気づいた。もちろんこれに馴染まない、もしくはやりたくない人はやらないでいい。そういう人でも仕事で結果を出せばいいし、うちみたいに会社の中の人だけなく、パートナーの寄り合い/コミュニティーである場合は必ずしも仕事だけで役に立つだけがその人の価値ではないからだ。

時間の使い方は、個々人の完全な最良だけど、朝だけは一度オンラインで集まってもくもく会を毎日やっている。これは基本的に「自分たちの能力を高めたり」「他の人が絡んでいる仕事を効率よく消し込む為」にやっている。そのうちやめたい、と思っていることの一つだけど今はまだスタートしたばかりなのでこういうコミュニケーションが必要になっている。とはいえ、朝型で仕事をするのは良いことなので生活リズムを作るためにもこのようなルーチンワークを仕事の頭に組み込むのは悪くないと思っている。ちなみに僕はslackのtimesに「今日のやまとさん」という「今日やることを箇条書きにしたもの」を貼っておいて周りが読めば何やらないとならないのかがわかるようにしてるし、漏れてたら指摘できるしずっとやらないでいることがあればそれもわかるようにしてる。

あと、昼休みは最低2時間とるように推奨してる。「なんか疲れるなぁ、、、」と思っていた時にTakramの田川さんがこんな風に書いていたのを読んだ。

「あ、そっか。働きすぎちゃうんだ」と気づいたので、1日を二部制にして昼をしっかり休むことにした。僕は場合によっては3時くらいまで昼は休む。というのも僕は今(朝の5時半)こうやって記事を書いているように基本的にスタートの時間が早い。昼の12時くらいにはすでに6時間以上仕事をしてることもざらなので、昼に一旦仕事から離れないとオーバーワークになってしまうからだ。

なので、昼はなるべくインターネットの情報から離れてNetflixやAmazon Primeを見たり、読書したり楽器の練習をしたり、と自分がやりたいこと(もちろん昼寝も)をするようにしてる。あとうちには年老いた両親がいるので、買い物に付き合ったりも出来る(今は老人を公共交通機関に載せたくないしね)。15時から仕事を再開しても19時の夕飯(僕はきっかり19時には夕飯を食べるので)まで4時間は仕事ができる。15時までに来てる問い合わせで返す方が自分が有利になるものはさっと返答するし次の日でもいいものは次の日の午前中に返答することにしている。なのでメールの返信は朝と15時の二回を基本にしてる。夕飯後は大体眠くて仕事にならないので、これを繰り返してると自然と朝方になっていくというのも最高にいい。

で、もう旧来の働き方をするつもりはこれっぽっちもないので、これらのルールで問題があるとしたら、その相手は会社として仕事を受けられる相手ではない、ということで良いと考えてる。

僕の考えた最強のオンラインミーティング

リモートワーク に関しては(少なくとも自分が)決めていることがある。

1)ビデオ会議で自分の顔を出すの基本無しにしてる。どうしても顔が見たくなったら(そういうこともある。にんげんだもの)「見せて」って頼む(断られたりするけど)し、頼まれらたら見せる(頼まれないので必要ないんだと思う)。ビデオ会議はオンライン飲み会とかじゃないので、顔が見えている必要性が木っ端微塵もわからない(なんならオンライン飲み会でも別に見えてなくてもいい気が最近はしてる。酔ったらベッドで寝たいしなんならそのまま寝落ちしたいし)。確かに週一で会話する外部の会社さんとかだと顔を見せ合うことで「久しぶり感」でるし一緒に働いている気もするのでそういう時には顔を見せるけど、社内では「お互いの動きは常にtimesで把握してるし、動いてるプロジェクトのことは知ってるし、一緒に働いてる感とか演出しないでも常にある」のだから顔出しすることに付随することのめんどくささと「なるべく音声を良くすることに帯域を振る」方が重要(英語のミーティングとかまじ音質重要、、、なので本当はマイクを良くしてもらうとすごく聞こえやすくなるのでそこは今後考えたい)。手軽で便利なのは、MacならAirPods Proが最強なんですけどね、、、。

なんにしても繰り返し強調するが、会議で相手の顔を見る必要はない。

2)なので、ビデオ会議というよりも上記は所謂テレカンなんだけど、そこで重要なのはScrapboxなりGoogle Documentなりの「ライブテキスト編集ツール」を使って一つのドキュメントを同時に編集していくこと。これがすごい効率がいい。めちゃくちゃいい。ほんとやってなかった時代にはどうやって仕事してたのだろう、と思うくらいに効率がいい。オフラインのミーティングなんかだと良くある「誰々さん議事録取っておいて」みたいなことがなくなる。ミーティングが終わったら大体議事録はその時点で出来上がっているのだ。Google DocumentだとURLをシェアして編集権限を渡しておけばアカウントを持っていない人でも参加できる(Scrapboxはできない)から外の人とミーティングする時にも使える。でも、ミーティング終わりには権限を戻すことは忘れずにね。

この「音声+ライブ編集(時々画面シェア)」という組み合わせは本当にミーティングの効率を上げるのでめっちゃオススメする。あなたがパジャマでも、場合によっては風呂上がりで裸でも別にミーティングすることに問題なんか一つもないのだ(風邪をひくかもしれないけど)。そして相手が上司だろうと部下だろうと関係なく議事録を書いていけば全員が同じように発言し、おかしなところをその場でチェックしながらミーティングが進められるのだ。こんな素晴らしいことがあるだろうか??

まとめ

何もこれは「IT系の会社だから」とか「若い人たちの会社だから」とか「人数が少ないから」とかではない。これはもう社会全体のルールが変わったというだけで、そのおかげで「社屋」という無駄なコスト(会社維持するためのほとんどは人件費と設備費)を削減し、従業員や社員の時間を有効に使い(出勤のためだけに1日の何分の一使っていたのか考えてみてほしい)、短い昼休みに安い弁当を食べるような生活をすることもなく、好きな場所で好きな格好で好きな時間に仕事に取り組めるようにすべての人がなれるチャンスなのだ。もちろん飲食や対人関係で仕事してる店舗等の人はそういうわけにはいかないという話もあるだろう。でも考えてみてほしい。確実にそういう職業に対してもお客さんは減っていくだろう。多分常連さんが多いとか、本当に評判がいいお店、プレミアムな価値があるところでさえ、コロナが収束した(完全にコロナ前に戻ることはもうないと思う。あるのはオペレーションの上の工夫としての収束のみだ)としても「衛生面に気をつけ」「人の物理距離を開けるような営業を行う」ことになるわけで確実に利益は落ちる。

正直これからは人がごった返す居酒屋やライブなどにいくのは「リスクを秤にかけて」いくことになるんだと思う。そのリスクを取ってもで行きたくなるような魅力で引き寄せられるものも残っていくだろうけど、対人関係で成り立っている職種が全てそんなことできるわけではないのだから、コロナ後の社会のルール、そしてこれはそれも地球上すべての場所での共通のルール、に合わせて営業や社会生活を考えないとならない。今回、上で挙げた方法はまぁいち零細企業のちょっとした工夫でしかない。けど、もしこれを大企業がやったらどれくらいのインパクトがあるだろうかと思うし、本当にやる会社は出てくるだろう。そうなればどんどんこういう会社が増えると思う。

もうみんな「リモートワークで仕事できる」ってことに気付いてしまった。リモートだと困る点にも気付いたと思う。例えば小さいお子さんがいる家庭とか仕事にならない、とかよく見る。でもそこは今までより社会的要請の度合いが高まるはずだし、そういう価値ある仕事に生まれ変わるチャンスだと思う。そんな風に今まで当たり前だったことがひっくり返った「異世界転生モノ」の物語の幕開けなんだと僕は思うことにしてる。

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