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#2-1 大人になれなかった俺へ①

「こんな人生で幸せだったのか」

 ーーー上暦105年5月、ここウエストパレスの地では激しい惨禍が繰り広げられていた。静かな湖畔に突然響き渡る銃声。空からはミサイルの雨が降り注ぐ。飛び交う血肉、怒号、叫び声。ここはもう、かつてのリゾート地の面影などとうに失せて、立派な戦場へと成り下がってしまった。
 俺はそんな俗に言う「パレス防衛作戦」の真っ只中、防衛軍へと駆り出されたいち学生だ。
 今、戦況は本島へと上陸してくる侵攻軍とその侵攻を阻止する防衛軍に分かれて争っている。
 戦争の理由?そんなの俺が知るものか。おろか、ここにいる9割の兵は知らないんじゃなかろうか。こんな何のために戦ってるか分からない戦争なんて止めちまえば良いのに。

『じゃあ、なぜ止めない?』

 心の中であの人の言葉が反芻される。そうだ、俺だってここで戦ってる一般兵と同じだ。
「誰かが止めないから」なんて他人任せで自分から変えようとなんて一切しない。そうやって誰かが押し付けあい、積み重なったものが今の俺たちに降りかかってきてる。それでも、俺たちは頑なに自分から動こうとしなかった。
 そんな時にただ一人、この世界を根底から叩き返そうとしたヤマザキ隊長ーーー俺らの団の隊長はいつだって全力だった。

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