花火
燃え盛るは花火の様に。私達は心に宿したその信念を元に白波先輩を探す。
案外あっさり見つかった。そして、先輩は軽音の皆と一緒にいた。
先輩と合流後。夢が突然こんなことを言った。
「じゃあここからはペアになって遊びましょ!」
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さっきから胸が鳴って落ち着かない。隣には浴衣姿の白波先輩がいる。
夢はペア行動を宣言したすぐ後に私達をペアにした。何してくれちゃってるんだ(歓喜)。
とはいえ、先輩の前だと緊張していつもの調子が出ないのが私。うーむ、何話そうか、なんて考えていると、
「俺さ、射的得意なんだよね」
「は?」
「いや、だから……」
「2回も言わなくて大丈夫です」
先輩が突然自分の特技を暴露してきた。しかもめっちゃベタ。あまりの唐突さに戸惑う私。
「ま、まあ、そういうことなら行きましょうか、的当て屋……」
「おー!」
先輩は無駄に陽気だ。
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的当て屋。この目で見たのは初めてな気がする。
景品は人気アニメのぬいぐるみ、戦隊モノのロボット、そこら辺の均一ストアで売ってそうなアロマキャンドル、見たこともないキャラが描かれた扇子など多種多様だ。
「どれがいい?」
返答に困る。何故なら私にはこれといった趣味がないから。けどまあ、強いて言うなら……。
「あれ、ですかね」
「え、本当にいいの?」
「はい、あれでお願いします」
「よっしゃ!任せといて!」
そういって先輩はおもちゃの銃にコルクを詰める。これを見ると夏祭りっぽいな。
ポンッ
ポト
おいおいまだ一発目だぞ、と言わんばかりにサクッと景品を取ってしまった。
「はい、どうぞ!」
「ありがとうございます……」
私は自身の手に握られたスティックライトを見る。
「ところで、なんでコレを選んだの?」
「あの中で一番実用性がありそうだったからです」
「なるほど……」
とはいえ、これも使うかわかんないけどね。
ヒュ- ドカン
「お、そろそろか」
二人、空を見上げる。今日のメインディッシュ、花火が空に打ち上がる。
さあさて、いよいよ私の頑張りどころ。ここで言えなきゃ恋する乙女失格だ。
花火が連続で打ち上がり、辺りは爆発音が鳴り響く中。いや、こんなタイミングだから良いのかもしれない。
「せんぱーい!好きです!」
「ん、なに?」
「……なんでもないでーす!」
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帰り道。皆と合流し、駅に向かう道中。
先輩が私にだけ聞こえる小さな声で、
「これから、花崎って呼んでも良い?」
なんだ、聞こえてるじゃん。
苗字のままだけど嬉しいよね、こういうの。
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7月28日
皆で夏祭りに行った。花火が綺麗だった。
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