あなたしかいない
あなたしかいないなんて簡単に言わない方がいい。あなたしか居ないなんてことはほぼほぼ無いし、そういうことを言う人ほどその「あなた」を簡単に手放して傷つける。現に私が傷ついているでは無いか。
「あなたしかいない」という言葉ほど依存を簡単に表す言葉はないのでは無かろうか。
私がつい最近まで付き合っていた女の子は、人より身体も心も弱く、それに加えて今までの人生で辛いことが多かった。
彼女は私に言った。
「あなたに出会えて本当に良かった。だってあなたといると今まで知らなかった幸せを知れる。こんな気持ちになるのはあなただけ。こんなに頼れるのは初めて。」
「私にはあなたしかいない。どこにも行かないで」と。
私は多分とても優しい男だ。怒らないし、頼られると力になろうとしてしまう。依存されても何も思わないし、束縛だって気にしない。好きになった人は嫌いになれないし、多分ずっと好きだろう。
彼女は私に依存していた。彼女の言葉は私に、「この子を離しちゃいけない。そばにいてあげなきゃいけない。絶対幸せにしてやる。」と思わせた。
しかし現実はそんなに甘くなかった。彼女は嫌なことをはっきりと嫌だと言えなかったし、不満や不安を溜め込むタイプだった。
私は何度も、ずっと一緒にいるためにお互い遠慮なく嫌なとこは言い合おうと言った。彼女自身も、「最近言えるの!私成長したの!」と笑いながら言っていた。全くそんなことは無かったでは無いか。
最後の1ヶ月私は彼女の笑顔をほとんど見ていない。彼女はそれほどまでに沈んでいたのだ。溜め込んだ不満や不安に押し潰されそうになり、私のせいで辛かったそうだ。
終わりというのはだいたいあっけない。夜中の電話、泣きながら彼女は私に言った。
「別れたい。あなたのことは好きだけど、これ以上は私が潰れる。」
当然私は食い下がったが彼女は続けた。
「いつも自分のことばっかり。たまには私のことも優先してよ。」
どう返せばいいのか分からなかった。
散々優先してきたでは無いか。
いつもそうやって被害者面をする。私が謝る。その繰り返しだった。それでも幸せな日々だった。
覚悟もないくせにあなたしかいないなんて言わないで欲しかった。簡単に手放してしまうくらいなら、ずっと一緒なんて言わないで欲しかった。
終わりはあっけなかった。
私を手放した彼女はよく笑うようになった。私の言葉はもう彼女には届かない。私なんていらなかったのだ。そういえばきっと彼女は否定するだろうが、私にはどうしてもそうにしか思えない。
私との思い出や経験が糧となり彼女がこの先幸せであればいいと思う。彼女はいつか私を忘れるだろう。忘れられるのは癪だがそんなことを言っても仕方がない。
私は過去を引きずる。引きずったまま歩んでいく人間だ。きっと彼女のことを思い出して泣くだろう。彼女が笑えるのであればそれでいい気もする。
どこかの誰かさん、彼女を幸せにしてやってはくれないだろうか。本当にいい子だからよろしく頼んだ。
私は私で新しい未来に向かわなければならない。
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