【医師解説】がんの転移は睡眠中に加速する
総合学術雑誌のNatureに掲載された研究ですが、がんの転移は睡眠中に加速することが報告されました。
がんが転移するためにはまず血管に侵入する必要があります。
そして、これまではがんが血管に侵入するタイミングは時間による偏りはないと考えられており、循環腫瘍細胞(CTC)は成長中の腫瘍から脱落するか、機械的傷害の結果として脱落すると想定されていました。
この研究では、乳がん患者とマウスモデルの両方で血管内のCTCを観察し、CTC血管内イベントが睡眠中に発生することが分かりました。
乳がん患者さんから午前4時と、午前10時に採血をしてCTCを調べたところ、検出したCTCの78%が午前4時に取られた採血から検出されました。つまり、睡眠中に血液中のがん細胞が増えていることになります。
一方マウスは夜間に活動的になり、昼間に休息をします。そのマウスに乳がんモデルを作ってCTCを測定したところ、昼間の休息期に最もCTCが増加していました。
さらに、休止期のCTCが転移しやすいのに対し、活動期の間に生成されたCTCは転移しにくいとの結果が出ています。
原因としてはメラトニン、テストステロン、糖質コルチコイドなどの主要な概日リズムホルモンがCTCの性質を変化させていると考えられています。
ただし、睡眠不足や睡眠障害はがんの進行を促進して生存率が低下することが報告されており、睡眠しない方がいいわけではありません。
ただ、夜間睡眠中に抗がん剤などの治療などを行うとさらに効果的なのかもしれません。今後新しい治療法が生まれることが期待されます。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献
The metastatic spread of breast cancer accelerates during sleep
Zoi Diamantopoulou 1, Francesc Castro-Giner 1, Fabienne Dominique Schwab 2 3, Christiane Foerster 4 5, Massimo Saini 1, Selina Budinjas 1, Karin Strittmatter 1, Ilona Krol 1, Bettina Seifert 6, Viola Heinzelmann-Schwarz 3, Christian Kurzeder 3 4, Christoph Rochlitz 7, Marcus Vetter 6, Walter Paul Weber 4 5, Nicola Aceto 8
・院長プロフィール
総合内科、形成外科、美容皮膚科、美容外科。
がん診療に関しては10代の頃に母親を末期癌で亡くした経験と形成外科で癌術後の再建で患者様と日々関わることで、早期発見、予防医療の重要性を痛感し、がん検査や治療も行っている。
疾患の種類を問わず、アンチエイジングまで幅広い患者様に対応し、体の内側・外側ともに健康に綺麗にをモットーにしている。
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