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BON-BON-BLANCO 『バカンスの恋』~「ここにいたこと」を輝き続けさせるアイドル~

みなさん覚えていますか? アイドル氷河期を

かつて、1990年代から2000年代後半ごろまで、アイドル氷河期と言われる時代がありました。今でこそ、メジャーからインディーズ、地下までアイドルは大きなコンテンツとして、マーケットを確保していますが、氷河期の頃は、もうオワコン(終わったコンテンツ)とみなされていました。

その時代背景において、マイナー路線のアイドルなんて、日が当たることも難しく、活動を休止していったグループも星の数ほどいました。

その一つがBON-BON-BLANCOです。「ラテンパーカッションができるアイドル」として、当時、ミュージカル「アニー」で主役を務めたアンナをボーカルに迎え入れた5人グループでした。

そもそも、アイドルとはなんぞや

アイドルという言葉ほど、多くの人々が使っているにもかかわらず定義があいまいで人によって左右されるものも珍しいと思われます。

私自身の定義は下記のようになります。

アイドルの価値は「ここにいたこと」を体現することである。
その時代、その場所でしか発揮できなかった輝きを最大限に表現する。ある意味では、最上級の刹那的な魅力を提供する人やグループがアイドルの定義である。

今回紹介する、BON-BON-BLANCOの「バカンスの恋」は楽曲としては当然ながら、このアイドルという文脈を用いることによって、最上級の輝きを放ち続ける楽曲なのです。

僕たちは知っている。彼女たちが「ここにいたこと」を

「バカンスの恋」の歌詞は、皆が開放的になる夏にじれったい恋愛をしている女の子のことを歌っている。しかし、その内容から、夏特有の「モラトリアム感」が感じ取られ、誰しもが持つ、ひと夏の思い出とリンクするようになっています。

ボーカルのアンナの魅力はなんと言っても、伸びのあるハスキーな高音でした。過去形にしたことには意味があります。
「バカンスの恋」の発表後、彼女は喉に変調をきたしてしまい、グループの活動にも若干の空白期間ができてしまいます。

次作の「BonVoyage」では、少し抑え気味な歌い方になり、その後もライブなどで「バカンスの恋」をパフォーマンスする際は、音程を下げています。

何が言いたいかというと、あの「バカンスの恋」はアンナ自身が、あの頃にしか歌えなかった歌を等身大で歌いきっていり、文字どおり「ここにいたこと」を記録に残しているわけです。

特に、曲終盤のアンナの高音部分は、2003年の夏のアンナにしか出せなかった声で、
「バカンスの恋は 永遠にプロローグ」
と歌っています。その声こそが、永遠にプロローグなのです。

セールスとしても、彼女たちのキャリアの中でも大きく取り上げられることがなかった作品ではありますが、BON-BON-BLANCOは2003年の「バカンスの恋」という作品で一つの世界観を示しているのです。

これぞ、「アイドルにしかできない仕事」といわずして、何がアイドルでしょうか。

タマフルでの再評価とは別で輝く「アイドル」BON-BON-BLANCO

2008年で、楽曲のリリースから5年後、ライムスター宇多丸さんのウィークエンドシャッフルにおいて、「バカンスの恋」は高い再評価を受けていました。しかし、時代の波に乗れず、2009年に活動を休止してしまいます。

もちろん、活動を継続していて、今の彼女たちを見てみたかった気持ちもありますが、それはもうかなわない今だからこそ、「バカンスの恋」を歌っていた「2003年の夏にいた」BON-BON-BLANCOが燦然と輝き続けるわけです。

僕たちのBON-BON-BLANCOは、まだパケット定額制がないガラケーの時代に、Youtubeもなく、深夜見ていたスペースシャワーTVから流れる、「バカンスの恋」のPVで見た彼女たちなのです。

そう、まさに2003年の夏の時点で、「ここにいたこと」を体現し、その後のキャリアやセールスで評価が左右されない作品を残した彼女たちは、私の定義する中で真の意味で「アイドル」だったのです。

2018年には、ライムスター宇多丸さんが、アフター6ジャンクションにおいて、「サマーソング」として取り上げてくださったようです。10年前と同じように座右にされる曲も多くはないと思います。それだけで、この楽曲の価値がわかるというものです。

それでは、聞いていただきましょう。BON-BON-BLANCOで「バカンスの恋」!

※ 全ストリーミングサービスで提供されていない楽曲なので、お聞きになりたい方は、中古買うか、TSUTAYAでCDレンタルしてください笑

#いまから推しのアーティスト語らせて

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