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霊界喫茶店II

 僕が直接体験したその喫茶店でのお話はもう一つあります。
 夏休みのことでした。夕方、僕はその喫茶店から帰ろうとしたら夕立が降ってきたのでもう少しまとうと思いカウンターの一番出口に近い席に座りなおしました。店のピンク電話が鳴りました。マスターがいなくてママが忙しそうだったので窓際にある電話にでました。電話からは中年の男の人の声で「手塚さんのお宅ですか?」と言いました。「僕が手塚ですけれどもここは僕の家ではありませんよ」男の声は少し戸惑ったようですが「でもあなたが手塚さんなのですね」「そうですけれど」「私はK(大学のクラブの後輩)の叔父です。実はKが昨日から行方不明になっていたところ、今日溺死体で見つかりました」「え」「甥は宮崎に帰省していたのです。どなたか大学の知り合いに知らせようと思っていたのですが甥はずぼらで手帳に電話帳など書いていなくて困っていたのですがあなたの電話番号がメモ覧に書いてあったのでもしやと思い電話をしました。あなたは甥の大学での知り合いですよね」「クラブの先輩です」「そうですか。良かった。お手数ですがKを知っている人たちに知らせてくれませんか」「大学には知らせたのですか?」「ええでも大学は掲示板に訃報を出すだけでそこまではしないそうです」
 Kの叔父さんの声は冷静でむしろ事務的な感じがしましたが、とにかく僕はえらいことだと思い冷や汗をびっしょりとかいていました。そして僕は知っている限りの知人に連絡することを約束し通夜と告別式の日時を聞きとうりいっぺんのお悔やみを言い電話を切りました。
 偶然とは言え、たまたま夕立で雨宿りしていた喫茶に電話が掛かり偶然にも本人がでる。しかも偶然に見つかったメモを追ってかけてきた電話だった。確かに何人かにこの喫茶店の電話番号を教えたことがある。しかしKとは3学年離れておりそんなに話したことも無かった。本当に不思議なことだとママと話していたときです。店のステレオは音楽を鳴らしていましたが突然音楽は止み、人のすすり泣く声がしてきたのです。泣き声は男女入り交じっていました。そしてそれが数十秒も続くとまた音楽に変わりました。前の読経の件があっただけにまた店にいた人たちと顔を見合わせてしまいました。ただこの時は恐ろしいという感じでは無く本当に悲しい気持ちで一杯だったことを覚えています。
 この喫茶店のステレオは霊界につながっていたのでしょうか。
 

終わり

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