許容(詩)

午前三時の閉じ切った部屋、暖房は一昨年から使わないまま、
寝息が私から離れた隅で聞こえている。
毎週木曜日に私の家で夕食を食べる友人と、彼女のために
用意された透明な箱。私はこの箱に、いつかほかの誰かを
入れて、彼女のことはそのまま忘れるだろう。
新しい言葉を舌になじませ、忘れるように。

引き入れたものは決して容認されず、容認されたものは
決して愛にならない。引き起こしたものはいつしか
手に負えない怪物になり、見つからない死体は恋になる。
血と汗を流さないその指先は、新聞紙をめくり
明日の天気と夕食のことだけを考える。
まるでそれを見つめる者さえいないように。

あたたかく引きあがった口元と、ふたつのカップ。
彼女は今朝この部屋を発ち、誰かに用意された居場所に向かい
迎え入れられ、もう二度と戻ることはない。
残されたパンを捨て、カップの中を空にする。
救いのない場所には愛があり、愛のない場所には逃避があり
幾度も消された白紙のキャンバスを描く人はいない。

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