バスで移動-theme;移動

バスは、1番前の高い座席が空いていたらそこに必ず座る。そうすると大抵前がクリアのアクリルになっていて、前方がよく見える。それに、ほとんどの通行者より視線が高い。

左側に乗っていると、停留所に停まった時ちょっと下がる。昔はこれが、タイヤの空気を抜いたり入れたりすることによって行われていると思っていた。今しくみを知っているわけではないが、タイヤの空気を使っているわけではないことくらいは分かる。

川のへりを走る道をバスは進む。今日は台風が過ぎて穏やかに晴れている。昨日は隆々たる積乱雲が何本も立っていたがそれもなく、ほどほどの高さのもりもりした雲がぽつぽついるくらいである。
もっとも「穏やかだ」などと言えているのは私がバスの中にいるからであって、バスの外はうだるような暑さだ。外を歩く人々は穏やかさよりも暴力性を感じているだろう。が、そんなこと、バスに乗っている私からしたら知ったこっちゃないのである。

停留所に停まったバスの右隣を電動スクーターがするりと抜けていく。ここのところ問題児扱いされている電動スクーターのことを、私も良く思っていないが、場所を変えてもらえれば少々の興味はある。今の地元ではあまり歓迎されないが。

バスの窓は明るい外から見ると濃い緑色をしていて、よほどのことがない限り外から中の様子は見えない。だから、窓のすぐ下で信号を待っているおばさんたちの喋る様子を、驚くほどの近さで観察することができる。むろん会話の内容は聞こえてこないが、こういうときこそ想像するのである。近所の話か、遠くの話か、下世話なのか、文化的なのか。もしくはコンビニから暑そうに眩しそうに出てくるおじさんの様子を観察する。横断歩道を渡る人の歩幅を、パチ屋の前で溜まる中年男性の重心を観察する。

くだらないことを考えていたら目的地についた。では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?