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5分で分かるVulfpeck。

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。私は、noteで「どこよりも詳しいvulfpeckまとめ」を連載している。

今回は、これからVulfpeckを聴く方、知ろうという方向けに・・・まずこれを読めばいい、という短くミニマルな紹介を書こうと思う。



Vulfpeck(ヴォルフペック)とは

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画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=Nq5LMGtBmis

Vulfpeck(ヴォルフペック)は、2011年に結成された、ミシガン州出身のミニマルファンクバンドだ。

その高い演奏スキルと、レコード会社に属さない新しいバンドの運営スタイル、そして彼らの「ミニマルファンク」が、いま世界的に注目を集めている。

2000年代には、ファンクの演奏時間は長ければ長いほどいいとされていた。しかし、2010年代のVulfpeckはそれに逆行し、YouTubeで再生されやすい短時間のファンク「ミニマルファンク」で人気となったのである!


音楽的には、1960~1970年代のソウル&ファンクを、より現代的にアレンジしたものになっている。(バンドサウンドについての詳細はこちら👇)


メンバーがアメリカ国内でバラバラに生活している(リハをするためにも飛行機が必要である!)ため、ほとんどリハを行っていないのに、発表される音源や、ライブのクオリティは非常に高い。

それは、メンバーが実は、音大の中の有名人ばかりであり、そもそも若い頃から飛びぬけた才能を持った人物が集まっているためである。

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画像出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Vulfpeck#/media/File:Vulfpeck-at-crystal-ballroom-may-26-2017.jpg


2014年、「Sleepify」と呼ばれる無音のアルバムによって脚光を浴び、その後、AppleのCMに「Back Pocket」が起用され、知名度が一気に上がった。


多くのプロミュージシャンに愛され、またソウル&ファンクのレジェンド(David T. WalkerBootsy CollinsBernard Purdieなど)が多数アルバムにゲスト参加している。


Vulfpeckがスゴイ理由

彼らは、非常に、非常に画期的なバンドである。その理由は大きく3つ。


①レーベルに属さない

彼らはすべてを自分たちでコントロールするために、あえて大手レーベルに属さずに今日の成功を手にした。所属レーベルは、自己レーベルの「Vulf Records」だ。

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レーベルのロゴ。ヴァーヴ・レコードのオマージュ?画像出典:https://www.discogs.com/ja/label/696987-Vulf-Records


企画・宣伝・販売・デザイン・録画・録音・ミックス…すべて、自分たちと友人たちだけで行ってきたのだ。

収益はほぼ、SpotifyとYouTubeからだと言われている。

しかし彼らはそのやり方で、2019年、NYのマディソン・スクエア・ガーデンに14000人を動員。チケットは完売した。

大手レーベルに属さずにマディソン・スクエア・ガーデンを満員にしたファンクバンドは史上初である。


②YouTubeやネットの使い方がケタ違いに上手い

ひとめで彼らの作品だとわかる特徴的なサムネイルを用い、また、あえてiphoneで録画したローファイなビデオを、一見テキトーな感じに編集。

彼らのPVに、高画質な映像はほとんど存在しない。時代に逆行しているようだが、これがとても面白かった。

しかも彼らはレコーディングとPV撮影を同時に行うことで、余計な出費を抑えることに成功。

この低予算的な、チープな雰囲気と、1960~70年代っぽい動画の加工が相まって、独特の「Vulfpeckらしさ」が生まれ・・・ユーモアのある動画と、高度な演奏テクニックのギャップにやられるファンが続出したのである。

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画像出典:https://youtu.be/qTUnDV3MgVQhttps://youtu.be/Azgm7q4O1Nchttps://youtu.be/b2_CJ_nx-l4


「持続可能性(sustainability)」を意識した

通常、ここまで人気になったバンドはアルバム制作とツアーに追われ、生活のすべてがバンドに支配されていくものだ。

しかし皆、もともとの生活があり、自分名義のリーダーバンドがある。それも重視するために、Vulfpeckは集まりすぎないようにした。それが、リーダーであるJackの考える、バンドの「持続可能性(sustainability)」なのである。

どうすれば、メンバーみんなが幸せになれるか?バンドがすべてなのか?個人の生活と成功も大事じゃないのか?Jackはバンドの長期的な活動を考え、あえて、メンバーの人生を拘束しない選択をしたのだ。ファンクもサステナビリティの時代に突入したのである。

このストーリーが非常に魅力的であり、同じ時代に生きるファンの心を捉えていると言える。


メンバー紹介

Vulfpeckの正式メンバーは4名である。全員、ミシガン大学音楽学部出身だ。(バンド結成のストーリーについてはこちら

では、メンバー紹介といこう。

まず、リーダーのJack Stratton(ジャック・ストラットン)。本業はドラムだが、ギターとキーボードもプロ級。ライブではAlternative Apparelの赤いラガーシャツを着ている。

作曲を含む、バンドのほぼ全ての業務を担当している。Vulfpeckは実質、彼のプロジェクトである。

類まれな能力・ユーモアと、恐れを知らないメンタルを持ち、メンバーから「Steve Jobsのようだ」と評される。(出典:http://www.third-story.com/listen/woodygoss

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Theo Katzman(ティオ・カッツマン)。Vulfpeckではドラム、ギター、ヴォーカル、作曲を担当。

テオと表記されていることが多いが、ティオ、またはセオが正しい発音に近い。彼が作曲し、歌った曲はVulfpeckの中でヒット作となることが多く、バンドに大きな貢献をしていると言える。

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Joe Dart(ジョー・ダート)。世界的に注目されるベーシスト。2019年時点でまだ29歳。黒いサングラスが特徴。レッチリのフリーに強い影響を受けている。バンドのグルーヴを牽引するスター・プレイヤーだ。

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Woody Goss(ウッディ・ゴス)。キーボード、作曲を担当。Vulfpeckの人気インスト曲を多数書き、作曲面でとても大きな貢献をしている。

趣味はバードウォッチングで、鳥が描かれた服をいつも着ている。演奏面ではサイドマンとして、皆をサポートする役割を得意とする。

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この4人以外はサポートメンバーだ。(詳細はこちらにて


とりあえずこれを聴こう!

今回はファンの間でも人気の高い有名曲をいくつか紹介して、この記事の締めくくりとしたい。


・Animal Spirits なぜか日本語の歌詞が載っているが、翻訳が雑で面白い。こういうセンスがいかにもVulfpeck的だ。Theoが歌った、万人受けする名曲。


・Christmas in L.A. ライブ定番曲。David T. Walkerがゲスト参加。これもPVが笑わせに来ている。これもTheoが歌っている名曲。


・Dean Town めちゃくちゃ難しいメロディの曲なのに、ファンがメロディを全部覚えて大合唱。ファンク好きには外せない1曲。作曲はキーボードのWoody。


・Cory Wong サポートギター、Cory Wongの名前をそのまま曲名に採用。圧倒的なグルーヴ感がたまらない!


おわりに

Vulfpeckは、来日のためのプロモーターと接触したという情報も上がってきている(出典:ギターマガジン2020年5月号)。

昨今の状況では難しいかもしれないが・・・Vulfpeckは日本人向けのPVを作ったり、あえて日本語のツイートをしているところなどから、来日への期待は非常に高まっている。


彼らの来日を楽しみにして、ぜひともそれまでに、彼らについて詳しくなっておこうではないか。

私は、これからもVulfpeckについて調べ、noteで情報をまとめていく。そして、ゆくゆくは日本語のファンブックを作るつもりだ。


Vulfpeckのことが知りたくなったぜひ、いまは私のnoteをご覧いただきたい。それでは、またお会いしよう。

トップ画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=qTUnDV3MgVQ メンバー画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=rv4wf7bzfFE&t=4616s

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―――――著者情報――――――

Dr.ファンクシッテルー

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宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。

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「KINZTO」の活動と並行して、音楽ライターとしても活動。

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さらにソウルやディスコ、ハウス、テクノ、ヒップホップとの関連性についても詳細に記しました。

本書では、Apple Music、Spotifyのプレイリスト「ファンクの歴史」にアクセスすることで、文中で紹介されている参考音源を探すことなく、音源を聴きながら読みすすめることができます。


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