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安い時に買えない投資家心理

 こんばんは、Dr FJです。
ここ数日アメリカの株式市場が軟調となっていますが、それに関連して今日は、投資をやっている人なら経験上誰でも知っているけど、やらない人は気づいていない投資家心理についてお話したいと思います。あ、やってる人にとっては誰でも感じている当たり前の話なので、そんな人達は読み飛ばしてもらっていいですからね。

 まずですが、投資の基本は『安く買って高く売る』です。これはシンプルで当たり前の話ですね。グラフを見せて過去を振り返り、『これだけ下がっていた時に購入すれば、今頃こんなに大金持ちになっているんですよ』みたいなことを言う場面にはよく出会いますし、他方『かつてこの値段だったこの株も、今では…』というような文脈で、大損しているという話もありますね。後から見れば誰の目から見ても明らかという話なのですが、実際には我々は未来を見通す鏡を持っているわけではないので、リアルタイムでチャートを見ていると、『まだ落ちるかもしれない』『ここが天井かもしれない』という風に思ってしまいます。短期で上がった下がったという取引をデイトレードやスイングトレードと言いますが、基本的には、特に株式や債券などの相場にはすべての情報は織り込まれているとされていますので、こういった相場である人だけが他の人より良い情報を持っているから勝てるという話は成立しにくいとされています。期待値は、取引手数料分だけマイナスになる世界ですね。

 他方、同じ投資家でもういった期待値がマイナスになる短期のトレードは避け、資本主義は拡大していくから大局的に長いスパンで見れば株価は上昇するということを信じ、期待値がプラスになるという長期投資をする人たちもいます。最初に買ってそのまま買い持ちするという人たちもいれば、毎月少しずつ買い足していくドルコスト平均法という手法を使って買い続ける人もいます。こういった投資では倒産して株価がゼロになるというリスクが怖いため、ダウやS&P500, 日経225などといった指数に連動するETFや投資信託を対象にしている人が多い印象です。かくいう私もリーマンショック後からこの投資を最近まで続けた結果、割と美味しい思いをすることが出来ました。

 これらの投資ですが、実は実際にやってみるとそれぞれ簡単ではありません。短期トレードはそもそも上がるのか下がるのかがわからないものなので勝ち続けることは非常に困難です。世界中の自分よりも賢い人たちが人生を賭けて一攫千金を求めて全力で戦っているのが相場というものなので、そんな中では勝ち抜ける気がしません。また、だからといって長期投資が良いのかというと、これがまた大変なのです。『長い目で見たら期待値がプラス』というのは頭ではわかっていても、実はそのプラスは株式だと年率7%程度とごくわずかです。100万円を1年間運用しても7万円…1000万円を運用しても70万円…。しかも、それにはさらに20%の税金がかかる上に、その利益自体も毎年確実に得られるものではなく、上振れも下振れもし得るものなのです。簡単に倍になったりするようなものではなく、実際にリスクを取って参加していることを考えると『意外に少ない』というのが実感されます。単純な長期投資は退屈でつまらなく、思うほどの収益が得られるわけではないのです。

 これを経験すると、多くの人は次に『下がった時には少し多めに買ってそれを長期で保有する』というようなことを考え始めます。配当やゆっくりとした値上がりを期待するのではなく、もう少しドラスティックに値上がり益を取りに行くのです。指数連動型の商品だけでなく、個別株にも目を向けます。そして、最初は期待値プラスの原理から逸脱することにある程度の恐怖を覚えるので『余裕資金で少しだけ…』という感じで始めます。ただ、これで少し利益が出始めると『もう少ししっかり買っておけば…』と気持ちが大きくなっていき、どんどんこの部分にかける資金の額が増えていきます。

 実は、この状態になった時が一番つらいんです。というのは、その状況から買っていた株が下がった時には買い場になるはずなのですが、この時の心理としては自分が既に購入している株式には損失が出ていて、株のことなんて見たくもないような状態なんです。もちろん総資産額も減っています。その悪い空気で満ち満ちている状況の中で更にその悪い部分に資金を投入するのは、外から見ている以上にストレスで誰にでも簡単にできることではないのです。そして、逆に保有している株の株価が上がった場合にはこれはこれでストレスです。追加で投資をしようと思うと、自分が前に現在よりもかなり安い値段で購入出来ていたものを高値でもう一度購入しなければいけません。『あぁ、あの時もうちょっと多く買っておけばよかった』なんて思ってしまい、なかなか動き出すことが出来ないのです。

 このように、常に相場を張っている人には独特の相場の上下動による心理状況の変化というものがあり、構造的に気持ちよく売買できないようになっているのです。おまけに、このような心理を意識的に無視して『利確をすればいい、損切をすればいい』と機動的に動こうとすると、今度は20%の課税と手数料が頭をもたげてきます。つまりは機械的に利確や損切をしようとしても、期待値がマイナスになるくらいの摩擦を感じるのです。

 同様のことは、株式などの証券取引だけでなく、不動産や事業投資、現物投資など様々な投資においても言えるでしょう。最大の買い時には買いづらく、利益が出たら出たで買いづらい。そういう時にストレスなく買えるのは、そこまで相場に参加せず、現金を貯めて買い場を待っている人たちということなのですが…その人たちにはその人たちなりにつらいストレス、『これまで手を出してこなかったことに手を出すリスク』にさらされることになります。最大の買い場というのはこれ以上さらに下がることもありうるという状況でもあり、『落ちてくるナイフは掴むな』という格言もあるくらいですから。まぁ、どれも言うは易しで簡単ではないですね。投資に手を出した人の9割は損をすると言いますが、その理由はこの辺にあるんでしょうかね。

まとめ

  • 投資の基本は『安く買って高く売る』だが、これは簡単なことではない。

  • 相場を張っている人は最大の買い時にはダメージを負っているので買いに向かいにくく、自分の保有株が上昇した際には追加投資が出来なくなる。

  • 最大の買い時に一番良い心理状態なのは『それまで相場に参加していない人』だが、その人たちはこれまで手を出してこなかった場所で下がっている相場の中で落ちてくるナイフを掴む必要があり、やはりこれも簡単ではない。

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