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#2 水素社会推進法~これから生活はどう変わるか~

こんにちは。GTです。
今回は近く成立するであろう「水素社会推進法」についての記事です。

執筆時点では参議院で審議が行われている段階なので法律としては未成立ですが、そもそも水素とは何なのか、水素社会推進法はどんな法律なのか、この法律によって生活がどう変わるのかを書いていきたいと思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA119DN0R10C24A3000000/


水素は次世代のエネルギー

まず法律の名前にもある水素について簡単に説明します。
一言で言えば、水素は「次世代のエネルギー」です。

産業革命以降、人類は様々なエネルギーを利用してきました。
石炭に始まり、その後に石油が登場し、さらには天然ガスも普及して、これらは全て様々な用途で今も利用されています。
例えば、石炭は発電に使われ、石油からはガソリンや軽油が作られ、天然ガスは都市ガスとして多くの家庭で使われています。

これらのエネルギーが不自由なく今も使われているのに、なぜあえて次世代のエネルギーを使おうとしているのかというと、地球温暖化対策のためです。

上で挙げた3つのエネルギーはどれも使うことでCO2(二酸化炭素)が出てしまい、このCO2が地球温暖化の主要因とされています。
その点で水素は使うときにCO2を出さないので、地球温暖化対策の手段として日本だけでなく世界の主要国で社会実装に向けた様々な取組が進められています。
(水素を作るときに方法によってはCO2が出てしまうのですが、作るときにもCO2を出さない水素を普及させることが前提になっています)

水素社会推進法のねらい

「水素社会推進法」は文字通り水素の社会実装を推進するための法律なのですが、この法律に基づいて主に2つの措置が行われてる予定となっています。
それは、「価格差に着目した支援」と「拠点整備支援」です。

「価格差に着目した支援」

まずそもそもとして水素(作るときにCO2を出さない水素)は価格が現在とても高いです。
作り方などにもよりますが、天然ガスの数倍はします。
いくらCO2を出さないエネルギーだと言っても、こんなに高いものを好き好んで使おうとはなかなかならないですよね。
普及させるためには経済合理性が欠かせないので、天然ガスと同じくらいの価格になるように補助金を入れましょう、というのがこの支援制度のざっくりとした内容です。

「拠点整備支援」

天然ガスと同じくらいの価格になって経済合理性が成り立つようになったとして、実際に使うためにはまだ越えなければいけない課題があります。
それは実際に使うところまで水素を供給するインフラの整備です。
他のエネルギーと同じように、水素は主に海外から輸入することを想定されています。
輸入するときの港での受け入れや使うところに水素を送るための設備は現在ないので、そういうインフラを整備しようとすると大きな初期投資が必要になってきます。
その初期投資の一部を補填する補助金を入れましょう、というのがこの支援制度のざっくりとした内容です。

この2つの支援によって、経済合理性を確保した上で水素を使うのに必要なインフラを整備して、水素の社会実装を進めていこうというものです。
ちなみに、この支援制度の対象は水素を日本に輸入して供給する企業とその水素を使う企業で、エネルギーを大量に使用している火力発電所や化学工場など、いわゆるコンビナートと呼ばれる場所が主に想定されています。

「水素社会推進法」で生活はどう変わるか

ではこの法律が成立して上で述べた支援が行われていったとき、私たちの生活はどう変わるのでしょうか。

結論としては、当面の間はほぼ何も変わりません。
当面の間として、少なくとも今後10年間くらいは変わらないと考えています。

支援を受けたコンビナートでは水素のインフラ整備だったり水素を使える設備への更新だったり、大きな変化が起こっていきますが、その変化はすぐに起きるわけではなく、2030年前後にかけて徐々に進んでいきます。

一方で、コンビナートでそういう変化が起こっていったとしても私たちの生活に目に見える形では表れません。
私たちが普段使っている電気が天然ガスではなく水素から作られるようになったり、プラスチックの原料を作るときのエネルギーとして水素が使われたりするようになったりすると思いますが、電気やプラスチック自体が変わるわけではないからです。

ただし、そのさらに先の将来、10年から20年くらい経つと私たちの生活にも見える形で変化が起きていくと見ています。
水素を普及させるためのファーストステップとして個々の需要が大きい発電や産業での利用が進んでいきますが、その後は家庭にも広がっていく流れになるでしょう。
実際に今でも水素を使うエネファームや給湯器が市場に出てきているので、家庭で水素を使うのが当たり前という世界がやってきてもおかしくありません。

それを見据えてマインドセットとして私たちが持っておくべきなのは、「変化をネガティブに捉えない」ということです。
どうせそういう未来が来るのであれば、それを否定するのではなく上手く付き合っていく方がいいんじゃないでしょうか。

家庭に普及する前段階で、水素で動く公共交通機関や水素を使っている施設が出てくると思いますが、そういうのを見かけたら「試しに利用してみるか」というマインドで一歩踏み出してもらえたらいいんじゃないかなと思います。
実際に水素を使う燃料電池鉄道の実用化を2030年に目指す取組が進んでいたりするので、近くにお住まいの方は走行開始されたら一度乗ってみてはいかがでしょうか。

ではでは、また次回お会いしましょう。

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