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球団ヒストリー71.第一工大からの入団が新時代を作った理由

昨年12月に書いた『球団ヒストリー60.新時代~入団ルートの確立』について、さらにお話を聞くことができたので補足しておきたい。

詳細はリンクから飛んでいただくとして、この記事をざっくりまとめると2013年に大学から新卒での入団が急増し、大幅な戦力アップにつながったということ。

ではなぜ、これが『新時代』なのか。
前出の記事と重複する部分もあるが、ここは大きな分岐点でもあるので今しばらくのおつきあいを。

第一工業大学(現・第一工科大学)との関わり

2013年の大きな変化といえば、大学から新卒での入団がぐっと増えたこと。

その中でも「いちばん大きかったのは、第一工業大学(現・第一工科大学)から新卒で初めての入団があったこと」だと、國本正樹球団代表は語る。

当時の第一工業大学といえば、鹿児島県内4大学(第一工大、鹿屋体育大、鹿児島大、鹿児島国際大)では圧倒的に強かった。ドラフト指名や企業チームへの入団が毎年のことだったそうだから、その選手層の厚さがうかがえる。 國本代表いわく「第一工大の補欠選手を9人集めたら、その当時のドリームウェーブより強いチームができたかも」。

2011年までの鹿児島ホワイトウェーブ時代、ほとんど選手の勧誘などをすることはなかった國本代表だが、こと第一工大に関しては仕事を調整して平日に大学を訪れることもあったという。
第一工大は霧島市国分。國本代表の会社がある鹿児島市からは高速を使っても往復2時間は取られるにも関わらず、だ。

第一工大の岡留監督(当時)とは、大学に足を運ぶことはもちろん、食事を共にするなどして公私に関わりを深め、鹿児島ドリームウェーブ(当時はホワイトウェーブ)への協力を取りつけていた。

監督ご自身も、鹿児島の野球選手の受け皿でありたいというチームの意向は理解してくださっていた。
しかし「応援します」という言葉と裏腹に、数年は全くもって入団がなく、球団としては思うような成果に繋がっていなかった。

その理由はいろいろあっただろう。
卒業を控え「野球を続けたい」という学生に対し、監督の脳裏に鹿児島ドリームウェーブが浮かばなかったかもしれない。
また監督がドリームウェーブの名前を出しても、学生の耳に入らなかったかもしれない。

つまり、2011年までの鹿児島ドリームウェーブ(ホワイトウェーブ)は結果もあまり出ていないし、希望にあふれた大学4年生にとって決して魅力的なチームではなかったということではないか。

大学と球団の連携

球団は2012年に就職斡旋を開始。

当初は新卒での斡旋ではなかったが、勤務先の協力が得られたこともあって練習に参加する環境が整い、その年は全国大会に初出場。新聞やテレビなどメディアで取り上げられることが増え、知名度も上がっただろう。

就職の道と本気で野球を続ける道、両方得られるチームが鹿児島に誕生した瞬間だ。

硬式野球を続けるなら県外に出る、県内での就職なら硬式野球は諦める。
このふたつの道しかなかった大学生たちの、にわかに選択肢の上位に躍り出たと思われる。

こうして2013年には、第一工大から一挙に3人も入団することになった。
植村剛内野手、脇園和人内野手、戸柱光亮投手。

実はこの3人よりも先に、第一工大から新田祥悟内野手が在籍していた。しかし彼の場合は、第一工大の岡留監督や國本代表をを介して入ってきたわけではなく、選手たちの口コミで加入した選手。いや、クラブチームというのはそうやって入団する選手が多いのが現実だが。

つまりこの年に画期的だったのは、初めて第一工大という大学と鹿児島ドリームウェーブという球団の連携での入団があった、ということ。
それがいきなり3人も。
さらに3人とも主力級であり大型新人と言える人材であったこと。

この年を境に、第一工大から新卒で入団する流れができた。
また、岡留監督の紹介で他大学とのつながりができ、さらに東海大学九州キャンパスなど県外の大学から相談が入るようになった。

分岐点となった理由

この年が、後年に大きく影響を及ぼす分岐点になった理由は三つ。

1.就職斡旋による高校大学の新卒入団がスタンダードに
2.長年勧誘活動をしていた第一工大から初めての入団、しかも3人
3.第一工大からの紹介により県外の大学からも相談が入り始める

さて、第一工業大学に話を戻そう。
翌2014年に第一工大から新卒で入団することになる有川真平内野手は、のちの約10年に渡る物語の、もしかしたら最大のキーマン。
球団の最高成績と大激震を経験し、また彼自身が球団の大きな変革期を担うことになる。
彼の入団もまた、第一工大からの入団ルートが確立したことによるもの。

その話はいずれ丁寧に描く予定だ。

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