球団ヒストリー33.エロ男爵監督の苦言
「ちょっと考えたほうがいいよ」
2008年、2009年と欽ちゃん球団とのイベントで監督を引き受けてくださった俳優の沢村一樹さん。
その沢村さんが、試合後にこう言ったという。
「クニ、ちょっと考えたほうがいいよ」
学生時代の先輩でもある沢村さんの言葉は、鹿児島ホワイトウェーブ代表の國本さんにとって耳の痛いものだった。
”魅せるプロ”の意見
「考えたほうがいい」とはどういうことか?
沢村さんが言うには、「お金をいただいて見せるレベルの野球じゃない」。その日はエラーやフォアボールの多い、ダラダラ感ある試合だったという。
沢村さんは野球経験者ではなく、つまりはイベントを盛り上げるための監督”役”。だからこそ、野球論ではなくエンターテインメントとしての話をされたんだろうと思う。
モデル、俳優と長年にわたって見られる仕事をしてきた魅せるプロの意見。それは確かに野球の技術や戦術の話ではないかもしれない。
でも、試合は2年連続で敗戦。
2008年は0-5、2009年は4-6で、連敗を喫している。
監督としてその試合を目の当たりにした、野球は知らないが”魅せる”ことはずっと考えている、という人の言葉。
鹿児島ホワイトウェーブが伸びていくためには、ファンを増やし応援していただくことってぜったいに必要だ。だとするならば、この第三者的な意見は、とても貴重なものなんじゃないか。
集まる喜び
ところで当時は週末だけの練習なのになかなか人が集まらず、開始時間にキャプテンだけなんてこともあった。
それでも、欽ちゃん球団とのイベントのときはふだん参加しないメンバーも出席率が高かったらしい。当時チームを率いていた末廣昭博さんは「それでもいいと思うんですよ」と、心なしか嬉しそうなお声だったのは、やはりチーム全員での野球は楽しいんだろう。
その想いは、きっと選手たちも同じだったはずだ。
球団立ち上げの目的は
とはいえ、一夜限りのイベント球団から正式に立ち上げたのは、「都市対抗野球に出よう!」という想いがあったから。
夢を追うための下準備を一手に引き受けた球団代表としては、「おいおい、目指すは欽ちゃん球団とのイベントじゃねーぞ」という想いも強かっただろう。
ふだんから本気で夢を追っているからこそ、その想いがプレーに乗り、年に一度のイベントでは魅せる野球ができるのかもしれない。
甲子園だって、ふだんどおりの高校生たちの野球をするから、見ている私たちは感動するんだ。”甲子園用の野球””感動させるための野球”なんて求めていない。それと同じだ。
野球選手としての在り方
野球が好き。
それは当たり前こととして。
それだけじゃなく、もっと野球選手としてやることがあるんじゃないか?
「もっと考えたほうがいいよ」という言葉に、そんな問いかけを感じた。
もしも私がその言葉を聞いていたら、その後の選手たちにどう働きかけただろう?ちょっと、そんなふうに考えてしまった。
ちなみに沢村さんはこのころ『エロ男爵』と呼ばれていた。のちに「せごどん」で赤山先生役を演じ、全鹿児島県民(?)からの尊敬を集めるとは思ってもみなかったころだ。
”魅せる”プロの言葉。
野球界をご存じないからこその、忖度ない言葉。
ずいぶん以前にお話を伺っていたのだけれど、ずっと私の胸から離れない言葉だった。
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