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ユーザーがいちばんのUXデザイナー

サービスのUXって本当にデザインできるものなのでしょうか。どうしたらUXデザインができたといえるのでしょうか。今回は「ユーザーが経験を構築する」という考え方をしてみました。

UXはデザインできるか

UX(User Experience)はサービスを利用したユーザーの経験であり、デザインの段階で完全に予測できるものではありません。しかしデザインを「計画する」という意味で考えると、計画さえすれば望ましい結果であってもなくても「デザインした」といえてしまいます。

もちろん、期待した結果を得られなければ多くのデザイナーは「デザインしたとはいえない」ということでしょう。ここがポイントです。もしも期待するUXを提供できたなら、私たちは「UXデザインができた」といえるのではないでしょうか。

経験はいかに経験されるか

私たちは、世界中の誰もが同じ感情を持つだろうと考えることがあります。感情の粒度をもう少し細かく区別した「情動」と呼んで説明しましょう。幸福、怖れ、驚き、悲しみ…のように、どの国に住む人でも「怒り」の情動があるだろう…という感じです。

それに対して、生まれつきみんな同じ情動が備わっているのではなく、文化によって情動の概念を共有していると構成主義的情動理論は主張します。つねに脳が情動概念に基づいて情動インスタンスを生成しているのです。

例えば、あなたは Forselsket を感じたことがあるでしょうか? Forselsket はこんな気持ちです…。

“語れないほど幸福な恋におちている”
『翻訳できない世界のことば』 p. 86

Razlubit はどうでしょう? Naz は? 侘び寂びは…? 侘び寂びを説明するのは少し難しいですね。こんな風に、簡単には翻訳できない複雑な情動概念が文化ごとに共有されているのです。さらにいえば、新たな概念を学ぶとその情動を感じ取れるようになるのです。

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“また、人は行動をコントロールしようとして勝手に生じてくる情動のなすがままになっているわけではないことも教えてくれる。そうではなく、あなた自身が、情動経験の建築家なのだ。”
『情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情動理論』 p. 105

ユーザーは経験を構築している

日々新しいサービスが爆誕していますが、そこでは今までにない経験が生じているはずです。ユーザーは「楽しい」とか「イラつく」だけでは言い表せない新しい情動概念を形作っているのではないでしょうか。

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つまりサービスを利用しながらユーザーがUXを構築しているといえます。新たな概念を学ぶと脳はその情動を生成するようになるので、ユーザーは自分のUXをデザインしているかのようです。ここで構築されるUXはユーザー自身にも簡単には翻訳できない新しい概念でしょう。

ユーザーと概念を共有しよう

“しかし、すでに書いたように、UXデザインのためのデザインで、まず重視しなければならないのはUXを調査し測定することだ。”
『UX原論 -ユーザビリティからUXへ-』 p. 229

同じ情動概念が共有されて初めて、人はその情動を感じ取れるようになります。デザイナーは、自分でサービスを利用したりUX調査をしたりしてユーザーの情動概念を学びましょう。なるべく細かな言葉で表現しながら、ユーザーやチームで同じ概念を共有していきましょう。

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最後に、一番大事なことです。ユーザーはユーザー自身のUXデザイナーですがサービスをデザインすることはできません。サービスのデザイナーがUXを再構築しなければなりません。

ユーザーの経験によってサービスをデザインしていく——。これができれば「UXデザインができた」といえるのではないでしょうか。なぜなら期待するUXをユーザーと共同で計画していくのですから。

“未来を予測する最善の方法は、それを発明してしまうことだ。”
アラン・ケイ

まずは、デザイナー自身がいろいろな情動を知ることからはじめましょう。

・新しい言葉や情動をたくさん知ろう
・情動をなるべく細かく表現しよう
・自分と他人の情動が一致しないことを楽しもう

以上、UX調査を経て主観的利用品質を主観的設計品質にリバースする方法の考案でした。でもすでに世のUXデザイナーたちは同じようなことをやっているように思います。


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