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学びが凝縮されていた中華料理店での体験 その21 最終回

最終回として、楽しかった思い出を記しておきたいと思う。

ランチバイキングは戦場のようで、いつも余裕がなく追われていた、お客様の食器を片付け厨房のカウンターまで運ぶ、初めの頃は慣れなくて、洗い場の主任や副主任にダメ出しされていた、ある日大量の食器を運んだ時、見事に洗い場と私は連携して、流れ作業がバッチリ決まった瞬間があったのだ、その時初めて厳しい主任が私に笑顔を向けてくれた、認めてくれたんだと嬉しくなった。

機械の部品として、自分の役割りをきっちり果たせた時、私は最高に幸せな気持ちになる、あの時確かに私はあのお店の一部として役割りを果たせていたのだ、あの感覚が忘れられず、食器のカチャカチャ音が私の癒しの音になっている。

夜8時くらいに従業員の夕食が用意される、ある日のメニューは中華風のカレーライスだった、これがとても美味しくてビックリした、あまりの美味しさにお客様から見える位置でバクバク食べてしまい、会長や主任に注意された、でも夢中で食べる私に苦笑いしながらの注意だったので、優しさが含まれていて、みんなで一緒のカレーライスを食べていることが妙に嬉しくて、数少ない良い思い出になっている。

副主任は無口で愛想が無くて最初は苦手な人だった、それが悔しくて何とかして笑顔になってもらおうと私は日々笑顔で質問して答えてもらうと ありがとうございます と言い続けた、やっと副主任は笑顔で話してくれるようになり、それからは冗談も言えるようになってきた、副主任はマネージャーを特に嫌っていた、だからマネージャーのことを辛辣にディスるのが彼のストレス解消法で、私は不謹慎ながらも、その内容に吹き出すくらい笑わせてもらった。

お店を辞めて引っ越し先も決まり、荷造りしている時、通用口から副主任が出てきて窓越しに目が合った、私は今までの感謝を込めて頭をペコリと下げた、副主任もペコリと頭を下げてくれたことで報われたような気持ちになった。

中華料理店には、沢山の私に関わる方々が登場してくれた、父親の妹である叔母夫婦もオープン間もない頃お客様として来てくれた、叔母は私の手を取り「○○ちゃん(私のこと)がここでお店をして、あの弟(叔父のこと)の家に住んでくれることを嬉しく思っているんやで、ご先祖様も喜んでくれてると思うわ」と涙ながらに言ってくれた。

長男が中学校でバスケ部のキャプテンをしていて、副キャプテンは異例の2人優秀な生徒が任命されて、長男を助けてくれていた、その生徒のお母さん2人が連れ立ってお店を訪れてくださったのだ、さすが親子でとても優秀な方々で、私は恐縮していた。

娘の幼稚園時代からのママ友がみんなで開店祝いのお花を届けに来てくださった時はとても嬉しかった、私のこれからの苦労を心配して涙を浮かべながら応援してくれるママ友の優しさを私は一生忘れない。

その他にも、家族みんなで来てくださるママ友もいて、とても有り難かった、娘の小学校の担任の先生もランチバイキングのピークが終わった時間に可愛らしいお子さんを連れて来てくださった、マネージャーと主任が気を利かせて、特別に杏仁豆腐を用意してくれて、先生とお子さんに差し出すと、先生は戸惑いながらも喜んでくださった。

たった2ヶ月の中華料理店の体験、そこには沢山の学びが凝縮されていた、自分を犠牲にして労働しても、必ずしもお金はいただけないことも知った、当時は不幸な部分ばかりにフォーカスして嘆いていた。

でも真実は愛を学んでいた、お店をすることで私に関係のある人々が集まり、色々な一面を見せてくださり、私の複雑なネガティブな思い込みを炙り出してくれていたのだ。

私は疑い深く人を信用出来なかった、今の私だからわかる、本当は信用したかった、人間は素晴らしいのだと思いたかった、みんな愛があることを確信したかったのだと。

引っ越しして半年が経ち、元夫から中華料理店の結末を知らされた、私達が去ってから間もなくして、会長とマネージャーは姿を見せず、実質借金を払えず逃亡してしまい、お金を取り戻す為に、被害者の清掃業の人達と主任がお店を継続させて頑張っていたが、やはり経営は難しく、結局潰れるかたちになったらしい。

それから数年して、あの中華料理店の建物は完全に壊され、パンケーキ専門のカフェと和風パスタのお店にリニューアルされ、現在も人気店として続いている。

これで良かったと今は思える、今寂しい空き地よりは、お店が繁盛して賑わっている方が土地の神様は喜んでくださっているはずだ。

私の人生にあの2ヶ月間の中華料理店での体験は意味があったのかをずっと疑問に思っていた、やっと忠実に振り返り、深い学びがあったのだと感謝することができた。

長男と娘から私が本当にやりたいことに気づかせてもらえた、両親から本当は大事にされていたとわからせてもらった、弟夫婦から自分の気持ちに正直に生きることを教えてもらった、そして中華料理店の従業員の人達から人を信用する大切さを学ばせてもらった、様々なお客様から人間の愚かさや素晴らしさを見せていただけた。

こんなに沢山の学びがあったあの場所に結びつけてくれた、元夫や叔父にも感謝しようと思う。

人間の恐ろしさを見せつけてくれた清掃業の夫婦にも敢えて悪役に徹してくれたと敬意を表したい。

自作自演の物語、私らしい面白いシナリオだった、今は自分が愚かで惨めだとは全く思わない、一生懸命に学んでいた自分がいじらしく健気で愛おしい。

長い物語を読んでくださったことに心から感謝いたします。
こうして自分の人生を振り返ってみると、新たな気づきがあるものです。noteのおかげで書きたいことを全部盛り込み表現することができました。
みんな素晴らしい、みんなそれぞれ自分の人生を精一杯生きている、自分の人生が改めて大好きになりました。

幸せをありがとう♡

最後まで読んでくださって感謝します。



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